島根県の民藝めぐり(1)
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島根県の民藝めぐり(1)
- 出雲民藝館 -
鳥取県の民藝めぐりに続いて、
お隣、島根県の民藝も見てみたい。
今日も参考図書は
私の好きな民藝
鞍田崇 他著
NHK出版
(以下水色部は本からの引用)
【出雲民藝館】

(写真はすべてiPadで撮影)
なんとも立派な門が出迎えてくれる。
昭和49年(1974年)に開館した
出雲民藝館の建物は、
出雲地方きっての豪農だった
山本家の寄付によるものだという。
民芸運動に賛同したのは
職人たちだけではなかったのだ。
民芸の趣旨に感銘を受けて、
さまざまな形で協力した人々がいた。
民藝館入り口の長屋門は
まさに堂々たる構え。
江戸時代、延享3年(1746年)の建造で、
出雲大社造営の棟梁が手がけたという。
入場料を払うと、
「正面の母屋には
今も人が住んでいますので
公開されている
本館と西館だけを
見学するようにして下さい」
と注意された。
まずは本館を見学。
本館は、3千俵もの米俵を収蔵していた
米蔵を改修したもの。
入ると最初にこんな額が。
「民芸の性質」とある。
民芸の性質
* 庶民的なもの
* 実用的なもの
* 数多く作られるもの
* 安価を旨とするもの
* 健康なもの
* 簡素なもの
* 協力的なもの
* 伝統に立つもの
もちろん「民芸」に
かっちりとした定義があるわけではないが、
個人的にはこれに
* 自分の暮しにフィットするもの
* その土地の素材を大事にしたもの
などを勝手に足しながら
楽しんでいるかもしれない。
壁にかかっているのは、
出雲地方で婚礼の際に使われた
嫁入り風呂敷。
筒描染という伝統技法で、
家紋や吉祥文を染め抜いている。
風呂敷の下に並んでいる大きな壺は、
石見焼の大野壺。
廃棄されそうになっていたものを
協力者が見つけて、わざわざここに
運んできてくれたそうです。
その情熱に頭が下がります」
と事務局の方。
江戸末期から昭和初期にかけての
ものを中心に、布志名焼、石見焼を
はじめとする陶磁器や、
かつてこの地方で盛んだった藍染、
木綿絣(もめんかすり)、
木工品などが展示されている。
「展示品は、
出雲民藝協会の会員や、
県内外の協力者が寄付してくれた
コレクションがもとになっています。
すべて暮らしの中で
使われてきたもので、
その健康的な美しさとともに、
そのような品を使う
暮らしの美しさをも
伝えたいというのが、
この民藝館の趣旨です」。
西館は材木蔵を展示館として改修。
山陰の作り手による民芸品のほか、
農耕具なども並ぶ。
藍染の絵柄のデザインがすばらしい。
昔の農工具なども
そのまま保存・展示されている。
私自身、農家が多い地域で育ったせいか、
子どものころに、近所の農家で
見た記憶のあるものもある。
入り口となっていた長屋門の一角に
小さな売店もある。
靴を脱いで上がる畳敷きの部屋で、
大きくはないが、
出西窯、湯町窯、森山窯、
袖師(そでし)窯、白磁工房
といった地元の陶磁器や、
木工品、和紙、染織など、
島根の手仕事を幅広く集めている。
訪問日は2019年5月5日。
連休中の一日にもかかわらず
我々夫婦が訪問したとき、
他の訪問者はゼロ。
館内をゆっくり静かに見られたし、
売店では
他のお客様に気兼ねすることなく
事務局の方と
自由に話をすることができたが、
完全な貸し切り状態というのは
それはそれで寂しいものだ。
多くの民芸品を見た中では、
藍染の様々な絵柄が
妙に強く印象に残った民藝館だった。
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