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2019年5月26日 (日)

世界遺産「石見銀山」大森地区

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世界遺産「石見銀山」大森地区

- 「おだやかな暮らしを守る」という合意 -

 

改元に合わせた連休を利用して、
夫婦で国内旅行を楽しんできた。

選んだのは島根と鳥取。
ふたりとも行ったことがない
初訪問の地だ。

旅行記として、
訪問地をいくつか紹介したい。

最初は、
世界遺産「石見(いわみ)銀山」。

江戸時代の町並みの雰囲気を残す
大森地区と呼ばれるエリアと、
坑道跡を残す銀山エリアとが
主な見学地となっているが、
環境保全のため
どちらも一般車の乗り入れが
制限されている。

なので、車で向かった観光客は
両エリアから少し離れた
「世界遺産センター」の駐車場に
車を停めて、そこからバスで
目的地に向かうことになる。

我々夫婦が「世界遺産センター」に
到着したのは11時半ごろ。
ところが、連休中のせいか
大きな駐車場はすでに「満車」。
入り口に車の列ができていた。

山の中で、他に駐車場の選択肢が
あるわけではないため
しかたなく並んで待つことにした。

道路左側に寄って並んでいると
その横を、
観光地との間を往復しているバスが
通り抜けていく。

当然ながら
バスは帰る客も運んでくるので、
バスが通過するたびに
待機している車の列が動く。

思ったよりも回転がはやく、
長く待たずに駐車することができた。

まずは「世界遺産センター」で
地区全体の説明を聞き、地図をもらって
バスで大森地区に向かった。

【大森地区】
江戸時代の武家屋敷や代官所跡、
銀山で栄えた豪商の住宅などが並ぶ通りを
ゆっくりと散策。

【石見銀山資料館(大森代官所跡)】

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この通りの雰囲気だけでも十分楽しめる。

P5013039s

 

【西性寺】

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町並みも緑も美しい。

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観世音寺はちょっと高くなっているので、
登ると町を見下ろすことができる。

P5013053s

石州瓦と呼ばれる赤瓦が印象的だ。

P5013054s

 

【町並み交流センター(旧大森区裁判所)】

P5013057s

 

「ベッカライ コンディトライ ヒダカ」
という美味しいパン屋さんがある、
と聞いていたので、
そこのパンを楽しみにしていたのだが、
お店の前まで行ってみると運悪くお休み。

「残念だったね」と
夫婦で言い合っていたころ
かなり怪しかった雲から
ポツポツと雨が舞い始めた。

「ヒダカさんのパンも食べられないし、
 雨宿りを兼ねてお昼でも食べようか」と
近くのイタリアン「ぎんざん」に入った。

P5013064s

メニューを見ると
ランチセットにはなんと
「ヒダカさんのバゲット」
が含まれているではないか。
まさに地元のお店の連携だ。

P5013063s

単なる偶然とはいえ、こちらの気持ちを
汲みとってもらえたようで、
妙に嬉しい。

チャンスは意外なところに
ころがっているものだ。
一切れだけではあったものの、
希望を叶えることができた。

ランチのパスタも、
ヒダカさんのバゲットも、
どちらも美味しく◎。

お店に入る前の気分は「江戸」だったのに
舌はイタリアンやバゲットを
楽しんでいるという
組合せのギャップもまた楽しい。

 

昼食をすませて外に出ても
残念ながら雨は上がっていなかった。
でも、ウィンドブレーカのフードで
しのげる程度なので散策続行。

【菓子屋:有馬光栄堂】

P5013066s

雰囲気のある町並みが続く。

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取ってつけたような
ケバケバしい看板の土産物屋も
一軒もない。

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小雨が舞う天気だったとはいえ
「世界遺産センター」の駐車場が満車でも
通りの人出はこの程度。

P5013076s

雰囲気をのんびり楽しむことを
邪魔しない「静かさ」がいい。

P5013082s

飲み物の自動販売機にも
街の景観を意識した工夫が。

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懐かしいポストも現役だ。

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なんとも味のある看板に引き寄せられた。

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築170年の古民家を最大限に活かし、
およそ300坪の敷地を舞台に、
衣・食・住にまつわるライフスタイルを
おしゃれに提案している
「群言堂 石見銀山本店」だ。

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中庭を眺めるカフェのほか、

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魅力ある雑貨、衣類を並べた店舗は

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かなりゆっくり回っても飽きることはない。

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古いチーク材を大胆に使った
写真立てが妙に気に入ったので、
思わず購入。

 

二階は読書スペースとして開放されている。

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読書向けの空間ながら、
椅子にすわったり、寝転んだり、
自由なスタイルで本を読める
なんともゆるい空間だ。

P5013110s

 

この群言堂を展開しているのが、
「石見銀山生活文化研究所」という会社。

人口わずか400人の島根県大田市大森町に
根を張りながら、
アパレルの企画・製造・販売、
飲食店経営、古民家再生などを手掛け、
全国に30店舗を展開、
という規模にまでなっているという。

人口400人の町に日本の未来をみた。
「群言堂」で知られる
「石見銀山生活文化研究所」
との新連載がキックオフ!


という記事がグリーンズにあった。

この記事の中で、
石見銀山生活文化研究所の
広報担当・三浦類さんが、
たいへん興味深いことを言っている。
(以下水色部は上記記事からの引用)

ピークのときは、
年間80万人以上が訪れたんです。
何十台も観光バスが来て。

世界遺産登録直後、
自治会協議会が中心になって
住民憲章をつくりました。

その一文には
「私たちはこのまちでおだやかさと
 賑わいを両立していきます」
とありますが、

世界遺産になったからといって
これまでの暮らしを変えるのではなく、
おだやかな暮らしがある
ということこそをこの町の魅力として
お客様に発信していこうと
宣言
しています。

いま観光客数は半分以下になって
40万人を切っていますが、
暮らしている身としては
落ち着いていて、
休みの日も適度な賑わいで
暮らしやすい、いいまちです。

極端に観光地化されなかったのは、
このまちにとってよかった

思っています。

派手派手しい看板や
土産物屋さんもつくらず
有料駐車場もない


田畑や古民家をつぶして
駐車場にするのは簡単ですが、
誰もそうはしないというモラルが
共有されています


景観を守り、
暮らしが息づいているまち、
観光地としては珍しい形で
存続していると思います。

住民の合意で、派手派手しい看板や
土産物屋がつくられていないのならば
すばらしいではないか。

その合意には「まちのサイズ」も
意味があるようだ。

「400人というまちのサイズは
 どうですか?」

の質問に対して、三浦さんは、

人の顔が覚えられる、
お互いの顔が見える安心感が
ありますね。

意識の共有や合意形成が
しやすいとも言えます


(中略)

世界遺産登録されたタイミングのときに、
もし人口が1000人なら
合意形成できずに観光地化してしまう
可能性はあったのかもしれませんね

小さな町ゆえ、
景観と暮らしが守られている。

ほんとうに
キーホルダや饅頭を売っているような
土産物屋には一軒も出会わなかった。

世界遺産に認定された町ではあるけれど
ひとりでも多くの観光客が来ればいい、
土産物がたくさん売れればいい、
そんなことを目指してはいない
別の価値観が流れている、
静かな観光地だ。

 

 

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