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2019年4月 7日 (日)

恒温動物とは恒時間動物

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恒温動物とは恒時間動物

- 右と左の同期、人間と社会の同期 -

 

東京地方は、桜が咲いたあと
肌寒い気温が続いたせいか
満開をいつもよりながく楽しめる
4月第一週となった。

4月、新社会人の皆さんはどんな思いで
スタートをきったことだろう。

「ビジネスにはスピードが求められる」的な
新社会人へのメッセージを
耳にする機会が多い年度始め、
「スピード」で思い出した話があるので
今日はそれを紹介したい。

 

参考図書はコレ。

本川達雄 (著)
生物学的文明論

新潮新書

(書名または表紙画像をクリックすると
 別タブでAmazon該当ページに。
 以下、水色部は本からの引用)

 車とコンピュータ。
20世紀前半の
技術を代表するのが車で、
後半から今を代表しているのが
コンピュータでしょう。

そのどちらもが、エネルギーを使って
時間を速めるものなのです。

 これらだけではありません。
身のまわりのほとんどの機械が、
エネルギーを使って
時間を速めるものばかりです。

飛行機、携帯、工場の生産ライン、
家庭内では全自動洗濯機や電子レンジ。
これら文明の利器と言われるものは、
便利なものです。

「便利」とは速くできること
言い替えられますから、
結局、エネルギーを使って
時間を速めるのが
文明の利器なのですね。

一見、速度には影響がないような
クーラーやコンビニエンスストアも
言うまでもなく
間接的には速度向上に役立っている。

 

あらゆる面で高速化が進む我々の社会。

ここで、ちょっと我々自身の体のことを
生物の視点で考えてみよう。

動物には、外部の温度に応じて
体温が変化する変温動物
外部の温度の影響を受けず
自らの体温を維持できる恒温動物がいる。

 変温動物は体温が下がっている時には
動けません。
動くためには、まず体を温めて、
それから、やおら動く。

車にたとえれば、
普段はエンジンを切っておいて、
走るときにスイッチを入れ、
エンジンを暖めて、
そうしてはじめて走り出せるのです。

一方、恒温動物は...

それに対し恒温動物は、
エンジンをかけっぱなしにしておき、
いつでもダッシュできるよう
準備しています。

「いつでもどこでもすぐに」
を目指しているのが恒温動物なのです。

言うまでもなく、人間は恒温動物。
体温が一定になると、
どんな良い点があるだろう?

筋肉の収縮も、
もちろん化学反応が
基礎になっていますから、
温度が高ければ速く縮むし
遅ければゆっくりと縮みます。

つまり体温が下がっていれば、
さっきと同じタイミングで
餌を捕まえようとしても
体の動きはゆっくりになり、
餌を逃してしまうおそれも
出てくるのです。

それに対して体温が一定ならば、
すべての事象が
いつも同じ速度で繰り返せるので、
予測もたてやすくなりますし、
体内の統制もとりやすくなるでしょう。

(中略)

結局、恒温動物とは
恒時間動物
なのですね。

体温を一定にして、
時間の速度を
常に一定に保っているのが
恒温動物です。

しかも人間の場合、
体温は約37度もあるので、
外気温との比較で考えると
高温動物であるとも言える。

高温は「体内の反応が速い」
ことにも繋がるが、
この「速い」を活かすためには
もうひとつ重要な要素がある。

高い体温にして、
体の中のさまざまな反応が
速くなればなるほど、
各反応間のタイミングを合わせるには、
時間がぴったりそろう必要があります。

つまり、各反応がぴったり揃って初めて
「速い」動きが実現されることになる。
単純な例だが、速く走れることだって
左右の足の動きの同期があってこそだ。

足をいくら速く動かせても
左右がバラバラでは、
速く走ることはできない。

各反応が速いだけでは速くならない

この同期の問題は、
体内だけでなく、社会においても同じ。

現代人は社会の時間を
超高速度にしています。

超高速だからこそ、
少しでも遅い部分があると、
たちどころに渋滞が起こる

だから皆、時間をキッチリと守る
必要があるのですね。

社会も恒環境にして、
高速化とその同期が進んでいる、と
本川さんは言う。

気温という環境は、
クーラーと暖房で、
いつも快適な温度に一定。

冬でも
ハウス栽培の果物が食べられる。

 いつも働けるように
夜も明々とライトで照らす。
明るさという環境も一定。

このように環境そのものを一定にして
何でも即座にできるようにして、
時間の速度を速めています。

さて、こうなると
人間と社会の同期が問題になってくる。

「少しでも遅い部分があると、
 たちどころに渋滞が起こ」って
しまうからだ。

ところが、
社会の高速性が先行してしまい、
その同期のために、
「人間の速度」が
無理を強いられるようになってしまった。

結局、夜もおちおち寝ていられない
社会になってしまったのです。

安眠できない世界など、
地獄以外の何ものでもないと
私は思うのですけれど。

社会・環境のスピードと
人間(つまり体)のスピード。

「体」が幸せと感じられる環境
自ら破壊して、
いったい何を目指そうというのだろう。

 

 

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