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2019年3月31日 (日)

仕事のほうがリクエストしてくる

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仕事のほうがリクエストしてくる

- 与えられた条件のもとで -

 

今日は3月31日。明日から、新学年、
新社会人という方も多いことだろう。

新しい環境での活躍を考えたとき、
いつも思い出すエピソードがあるので、
今日はそれを紹介したい。

参照する本はコレ。

内田樹(著)
街場のメディア論
光文社新書

(以下水色部、本からの引用)

 

内田さんはこんな
「入れ歯」の話から始めている。

これは歯科医の人に
聞いた話ですけれど、
世の中には
「入れ歯が合う人」と
「合わない人」がいる。

合う人は作った入れ歯が一発で合う。

合わない人は
いくら作り直しても合わない。
別に口蓋(こうがい)の形状に
違いがあるからではないんです。

マインドセットの問題なんです。

入れ歯が合う・合わないが
「マインドセットの問題」とは
いったいどういうことだろう。

 

自分のもともとの歯が
あったときの感覚が「自然」で、
それと違うのは全部「不自然」だから
厭だと思っている人と、

歯が抜けちゃった以上、
歯があったときのことは忘れて、
とりあえずご飯を食べられれば、
多少の違和感は許容範囲内、
という人の違いです。

自分の口に合うように
入れ歯を作り替えようとする人間は
たぶん永遠に
「ジャストフィットする入れ歯」に
会うことができないで、
歯科医を転々とする。

それに対して、
「与えられた入れ歯」を
とりあえずの与件として受け容れ、
与えられた条件のもとで
最高のパフォーマンスを発揮するように

自分の口腔中の筋肉や
関節の使い方を工夫する人は、
そこそこの入れ歯を入れてもらったら、
「ああ、これでいいです。
 あとは自分でなんとかしますから」
ということになる。

そして、ほんとうにそれで
なんとかなっちゃうんです。

示唆に富む話だが、
内田さんは、このことは
結婚でも、就職でも、
どんな場合でも同じだと言う。

 このマインドセットは
結婚でも、就職でも、どんな場合でも
同じだと僕は思います。

最高のパートナーを求めて
終わりなき「愛の狩人」になる人と、

天職を求めて
「自分探しの旅人」になる人と、

装着感ゼロの理想の入れ歯を求めて
歯科医をさまよう人は、
実は同類なんです。

能力を発揮するための
「100点の条件を探す」に走ったら
能力を開発するチャンス自体を
自ら失っていることになるのだ。

与えられた条件のもとで
最高のパフォーマンスを
発揮するように、
自分自身の潜在能力を
選択的に開花させる
こと。

それがキャリア教育のめざす目標だと
僕は考えています。

この「選択的」というところが
味噌なんです。

「あなたの中に眠っている
 これこれの能力を掘り起こして、
 開発してください」

というふうに仕事のほうが
リクエストしてくる
んです。

自分のほうから
「私にはこれこれができます」
とアピールするんじゃない。

今しなければならない仕事に合わせて、
自分の能力を選択的に開発するんです。

「仕事のほうがリクエストしてくる」とは
まさに傾聴に値する指摘だ。

与えられた環境、条件からのリクエストに
自分がどう応えながら前に進んでいくのか。
条件と自分自身との共同作業。

「仕事のほうがリクエストしてくる」ことを
聞き逃さない感性と対応力、
そこにこそ、
自分でも意識したことがなかったような
能力開花のチャンスが潜んでいる。

 

 

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