オーストリア旅行記 (52) マリア・テレジア(1)
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オーストリア旅行記 (52) マリア・テレジア(1)
- スペイン乗馬学校 -
本記事で52回目となる
オーストリア旅行記。
ここ数回は、
ハプスブルク家の人々から、
* ルドルフ1世
(生没:1218年-1291年)
* マクシミリアン1世
(生没:1459年-1519年)
* カール5世
(生没:1500年-1558年)
* フェリペ2世(スペイン王)
(生没:1527年-1598年)
らを採りあげ、
大きく歴史を振り返ってきたが、
旅行中に撮った写真を挿絵代わりに
使ってきたものの、
本文が写真の説明にはなっておらず、
「旅行記」というタイトルからは
少し離れた記事が続いてしまっていた。
今日からは
* マリア・テレジア
(生没:1717年-1780年)
について書きたいと思っているのだが、
彼女については、うれしいことに
訪問先と直接関連している
トピックスが多い。
関連する訪問先の写真を
積極的に使いながら、
「女帝」と呼ばれた君主の
足跡を追ってみたい。
まず、彼女が生きた時代、18世紀。
日本では江戸時代中期。
享保の大飢饉があり、
8代将軍吉宗、田沼意次らが
活躍したころ、ということになる。
エピソードには事欠かない人物ゆえ、
これまで参照してきた参考図書をはじめ、
多くの本に様々なエピソードが
紹介されているが、
いろいろ調べた中では、
2007年放送 NHKハイビジョン特集
シリーズ ハプスブルク帝国
第2回「女帝マリア・テレジア」
がたいへんよくまとまっていた。
この番組を参考に、
訪問先の写真を交えながら、
話を進めていきたいと思う。
「今日からは」と書いた通り、
とても一回では終わらないボリュームだが、
興味のある部分だけでも、
のんびりお付き合いいただければと
思っている。
さて、マリア・テレジアに関して
最初に採りあげたいのは、
この乗馬学校。
【スペイン乗馬学校】
乗馬学校だが、
場所はなんと王宮の中!
厩舎もすぐお隣。
なにも知らないと
馬がそこまで丁寧に、というか
大事にされていること自体に
ちょっと驚いてしまうが、
もちろんそれには
それなりの背景がある。
この乗馬学校は、1572年の創設。
世界で最も古い乗馬学校だ。
当時、スペイン種の強靭な馬を
導入したことから
「スペイン」の名があるが、
その後、
スペイン、イタリアの名馬を
トリエステ近郊のリピッツァで交配、
古典馬術に最も適した気高い白馬
「リピッツァナー(Lipizzaner)種」
を誕生させた。
この馬を使った古典馬術は、
伝統と共に今もしっかり引継がれており、
ユネスコ無形文化遺産にも
登録されている。
調教された馬の高度なテクニックは、
本公演や調教見学として公開されており、
だれでも見ることができるようなのだが、
今回は残念ながら公開プログラムと
我々の旅程が合わなかったため、
乗馬学校の見学ツアーにのみ
参加することにした。
「学校」を見学するだけで、
馬の演技が見られるわけでもないのに、
観光客には大人気で
チケット売り場はかなり混んでいた。
(チケットを買う際、
「今日のこのコースでは馬の演技は
見られないけれどOKですか」
と何度も何度も確認された。
演技を期待して、のトラブルが
きっとあるのだろう)
チケットを買うと、
15人程度がひとグループとなり、
ガイドさんに付いて
学校内を歩くことになる。
日本語のガイドさんはいなかったので、
英語のガイドさんのグループに合流した。
「学校内の写真は基本的にOKだが、
厩舎内(馬のそば)は撮影禁止」
との注意事項の説明からスタート。
最初に見たのは、
王宮内にある周回コース。
何頭かが、
ゆっくり周回コースを歩いている。
古典馬術に適した馬が誕生した由来、
馬術における、
馬と騎手との信頼関係の重要性、
毎年開かれる馬術コンテストで競われる
高度な演技のポイント、
コンテストにかける騎手たちの思い、
などなど、
ひとつひとつ丁寧に説明してくれる。
後ろ足立ちなど、
コンテスト上位入賞者の
写真が並ぶエリアもある。
ひととおりの説明が終わると
歩いて厩舎のほうに向かった。
幅の狭い道を渡るものの
まさに王宮に隣接した位置にある。
外から見るとこんな感じの厩舎だ。
ずらりと並ぶ白い煙突にご注目あれ。
冬は寒いウィーン。
馬用の暖をとるための煙突だ。
厩舎内での馬の撮影は禁止されていたので
写真を撮ることはできなかったが、
一頭一頭大事にされていることは、
厩舎内をちょっと歩いてみただけでも
よくわかる。
馬具が管理されている部屋もある。
馬具だけなのに妙に美しい。
そういえば、
「エルメス」だって「グッチ」だって
もともとは馬具メーカだ。
外から撮った厩舎の馬。
白い背中が
少し見えるだろうか?
その後再度、
王宮内の乗馬学校部分に移動。
最初に書いた通り、
今回の内部ツアーでは
馬の演技を見ることはできなかったのだが、
この乗馬学校の見どころは
なんと言ってもこの「室内馬場」。
王宮の中にあり、
本公演ではシャンデリアの明かりのもと、
ワルツにのった
名馬の優雅なステップが披露される。
話を最初に戻そう。
このスペイン乗馬学校と
マリア・テレジアには
いったいどんな関係があるのか?
優雅な室内馬場は、
マリア・テレジアの父
カール6世の時代に
建てられたものだが、
単なる時代的な重なりを
言いたいわけではない。
乗馬学校の騎手は
男性に限られている。
ところが、実は女性でただひとり、
馬を乗りこなした人がいる。
その人こそ
ハプスブルク家唯一の女性君主
女帝と呼ばれたマリア・テレジアなのだ。
ここで練習を重ね
馬を乗りこなしたことで、
彼女は大きな力を得ることになる。
それは誰のどんな力か?
この話、次回に続けたい。
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