オーストリア旅行記 (36) シュテファン大聖堂
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オーストリア旅行記 (36) シュテファン大聖堂
- 聖堂内での夜のコンサート -
【シュテファン大聖堂】
市壁に守られていた旧市街にある
ゴシック様式の大聖堂。
旧市街の
まさにど真ん中にあるこの聖堂は、
自然史博物館や歌劇場のような
リンク通り建設に伴った
都市拡張開発によって
建てられたものではない。
完成は古く、1356年。
136メートルにおよぶ塔の建設には
65年もかかったという。
ハプスブルク家歴代君主の墓所でもある。
特徴あるモザイク屋根。
北側に回って見上げると
ちょっと見えにくいものの、
こんなところにも鷲の紋章が。
モーツァルトの結婚式、
そして葬儀が行われた場所としても
知られている。
旧市街の中心地ということもあって
ひっきりなしに観光客が訪れるせいか、
聖堂前には
「観光客向けコンサート」の客引きが
妙に多い。
皆、
モーツァルトを思わせる衣装を身に纏い、
次々と観光客に声をかけている。
何人かの客引きの話を
興味本位で聞いてみた。
私が聞いた範囲ではこんな特徴がある。
【曲目】
夜のコンサートのプログラムは、
モーツァルトやヨハン・シュトラウスを
中心に超有名曲ばかり。
クラシックファンでなくとも
気軽に楽しめる選曲になっている。
【パフォーマンス】
楽器による演奏だけでなく、バレエや
オペラのアリアを一部組合せたりして
エンターテイメント性に
めいっぱい傾いた
プログラムになっている。
【会場】
どこも100-200名程度の
小規模な公演ながら、
会場はかなり魅力的。
王宮の中の一部屋であったり、
シェーンブルン宮殿の一室であったり、
楽友協会内の小ホールであったり、
ウィーン市内の魅力ある場所を
フル活用している感じ。
【ドレスコード】
会場は宮殿の一室であったりしても、
ドレスコードはゆるゆる。
ジーパン、スニーカでもOKと言っている。
【料金】
定価(?)はあってないようなもの。
「通常はコレだが、夫婦2枚なら」とか
「同じ値段でワンランク上の席に」とか
「お得感」を強調した提案を
次々としてくる。
本気で買う気ならかなり交渉できそう。
というわけで、
これはこれでエンターテイメントとして
十分楽しめそうではあった。
実際に行ったわけではないので、
肝心な演奏の質まではわからないが。
我々夫婦はと言えば、
こういった客引きとは全く関係のない
別な演奏会を聴きに行くことにした。
目の前、
シュテファン大聖堂内で開催される
室内楽。
【夜の演奏会前の大聖堂内】
ちょうどこちらの都合にハマった
一晩だけの演奏会だったとは言え、
メインの曲が
ヴィバルディの「四季」となっていたので
これもまた観光客向けのプログラムの
ひとつだったのだろう。
それでも、気分としては
「いい演奏を」というよりも、
大聖堂内で音楽がどう響くのか、
その響きの中に身を置いてみることを
最優先にしてみたかった。
音響的に言えば
残響がありすぎであろうことは
容易に想像できたが、
そういったことも承知のうえで、
現地ならではの空気感に
浸ってみたかったのだ。
【リラックスした気分で集まる聴衆】
実際の演奏を聴いてみて、
その思いは充分満たされた。
残響が多いとはいえ、
頭のずーっと高いところに
響きが浮遊するように残る感じは、
天井の高い大聖堂ならでは、だ。
モーツァルトの結婚式の時は
どんな響きで満ちていたのだろう、
と考えるだけでも楽しい。
ちなみに演奏のほうは、
ビオラの方がほんとうにうまかった。
小さな合いの手的旋律を
実に丁寧に演奏していて、
彼が弾くと、音楽がそこで
キュッと引き締まると同時に
グッと深まる感じもして
なんともいえず心地よかった。
やはりプロはすごい。
そしてどんな環境であれ、
生の演奏はいい。
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