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2018年4月 8日 (日)

オーストリア旅行記 (33) 古楽器博物館(2)

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オーストリア旅行記 (33) 古楽器博物館(2)

- 立ち上がった日本のあの楽器メーカ -

 

前回に引き続き
新王宮の中の古楽器博物館での
写真を挟みながら

ウィーン国立歌劇場管弦楽団と
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の
楽器のエピソードを続けたい。

今回も引用の文章は
挿入している写真の説明
というわけではない

その部分は承知のうえ
お付き合いいただければと思う。

参考図書は、

広瀬佳一、今井顕 編著
 ウィーン・オーストリアを
 知るための57章【第2版】
明石書店

(以下水色部、本からの引用)

 

前回は、
ウィーンフィルの弦楽器の特徴について
紹介したが、管楽器のほうも見てみよう。

【ウィーン仕様の管楽器】

ここでは昔ながらの
ウィーン仕様の楽器が
いまだに現役の楽器として
使用されている


現在も健在な
ウィーン方式の楽器は、
オーボエ
ホルンである。

トランペットトロンボーン
2010年現在まだわずかながら
使われているものの、
近い将来これら2楽器の生の音は
聞けなくなってしまいそうだ。

どれも昔からドイツ語圏の
オーケストラで愛用されていた
古いタイプのもので
演奏時のコントロールが難しいが、
捨てがたい独特の音色を持っている

P7159054s

 

【存亡の危機に直面する管楽器】

管楽器には寿命があり、
金管楽器などは30年程度使用すると
金属疲労のためステージでの使用に
耐えなくなる。

音そのものは出ても、
大ホールをすみずみまで満たせる
艶とパワーがなくなってしまう
のだ。

 戦後数十年を経て、
ウィーンのプレイヤーのみならず、
オーストリアの音楽文化の
存亡にも関わりかねない問題が
生じたのである。

もちろん誰もが手をこまねいて
傍観していたわけではなく、
ヨーロッパのめぼしい楽器メーカーに
打診が行われた。

しかし開発費がかさみ、
それを回収できる数は
どう見積もっても
売れるはずがない楽器を作ろう、
という会社は皆無だった


P7159082s

 ウィーンにも優秀な職人はいたが、
売れないものを作る気にもなれず、
楽器の品質は低下した。

そして時の流れとともに
職人の数も減り、
修理さえも思うにまかせないような
状況になってしまう

存亡の危機に瀕するウィーンの楽器たち。
劣化は誰にも止められない。

台数が期待できないというその採算性から
ヨーロッパの楽器メーカが躊躇するなか、
立ち上がったのは
日本のあの楽器メーカだった

 

【立ちあがるヤマハ】

最後に白羽の矢が立ったのが
ヤマハである。

ヤマハではこのために
新しい研究室を設置し、
1973年頃から
ウィーンフィル首席奏者の
アドバイスのもと、
トランペットホルンの開発を
スタートさせた。

その後1977年からは
オーボエの開発も追加される。

こうして完成された
ヴィーナーオーボエは
モデルとなったオリジナル楽器を
しのぐ優れた性能をもったもの
で、
愛用者も数多い。

P7159077s

ウィーン式の楽器を作ったことのない
日本のメーカが、繊細な楽器の世界に
いったいどうやって
アプローチしていったのだろう。

【既存楽器の徹底調査】

 楽器の開発は、
まず既存楽器の複製からはじまった。
だが数少ない貴重なオリジナル楽器を
分解するわけにはいかない


レントゲンを撮ったり、
その他さまざまな方法で
楽器の外径や内径を計測し、
それをもとに楽器の設計が行われる。

その数値をもとに製作した試作品を
プレイヤーの手にゆだね、
彼らの感想や助言を参考にしながら
細部の設計をミクロン単位で
変更した試作品を作り、
さらにその改良型を…という作業が
辛抱強く続けられた。

P7159070s

そしてついに、
日本製ウィーンモデルの完成を
迎えることになる。

 

【誕生!日本製ウィーンモデル】

金管楽器の場合は
素材となる金属の成分が長らく不明で、
先の見えない状況が続いていた


そんなある日ヨーロッパの工房で
修理の際に切り取られた
わずか数センチ角の破片が
ヤマハの研究室に届けられ、
ようやくその秘密を
解明することができた。

そこで明らかになったのは
想像していたよりも
 ずっと不純物が多い

という意外な結果であり、
この不純物こそが
楽器の豊かな音色にとって
必要な成分だったのだ。

不屈の努力のかいあって、
今日では
ヨーロッパ製オリジナル楽器の
短所までをもクリアした
日本製ウィーンモデルを
入手できるようになった

P7159081s

いったいどれほどの試作が
繰り返されたことだろう。

その後、
日本製の楽器は確固たる評価を
築いていくことになる。

 

 

 

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