オーストリア旅行記 (31) 新王宮
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オーストリア旅行記 (31) 新王宮
- 新王宮は未完成 -
ここで書いた
リンク通りの整備と共に建てられた
代表的建築物から
「ウィーン自然史博物館」
「ウィーン国立歌劇場」
「ウィーン楽友協会」
を紹介してきたが、通常であれば
まずはコレから
紹介すべきだったのかもしれない。
【新王宮】
英雄広場と呼ばれる
正面の広場から見ると
円弧を描く曲線が美しい。
完成は1913年。
自然史博物館が1889年、
国立歌劇場が1869年、の完成なので
それらに比べるとずいぶん遅い。
ただ、その完成からわずか5年後、
1918年には
「ハプスブルグ君主国消滅」
という歴史が待っていた。
というわけで、
写真の建物は完成したものの
このエリアの開発は
未完成で終わってしまっている。
のちに訪問した美術史博物館に
当初の古い計画図が展示してあった。
美術史博物館は写真が撮れたので
その計画図を示そう。
この計画図に対して、
実際に完成したのはここだけ。
(Google mapの航空写真から)
右側円弧部分しか完成しておらず、
左側円弧部分は広場のまま。
それでも、迫力十分だ。
前の騎馬像は、
オスマントルコ帝国による
ウィーン包囲時の救国の英雄
オイゲン公。
さすがに王宮においては
ハプスブルク家の紋章
「双頭の鷲」も存在感が大きい。
オーストリア帝国の帝冠を持っている。
「新」王宮は「旧」王宮に
隣接して建っているが
言うまでもなく、どちらもかつての
ハプスブルク家の居城だ。
今はその内部の一部が、
「博物館」として使われている。
つまり、コレクションだけでなく、
王宮の「建物」も一緒に楽しめる
贅沢な博物館というわけだ。
ただ、王宮という
大きな建物の内部を区切って、
複数の博物館として利用しているため、
初めて訪問するビジターには、
目的地というか
入り口がどこになっているのかが、
かなりわかりにくい。
自然史博物館や美術史博物館と違って、
博物館と建物が一対一と
なっていないからだ。
ちなみにこの新王宮の中には、
(a)「エフェソス博物館」
(b)「古楽器博物館」
(c)「狩猟・武器博物館」
(d)「民俗学博物館」
の4つのコレクション、博物館がある。
広場を包み込むような雄大な建物だが、
この建物の中央バルコニー、
そこで
1938年5月15日、アドルフ・ヒトラーが
「オーストリア併合」を宣言している。
そう言えば、
以前訪問したイタリア・ローマ、
その中心部にある
ヴェネツィア宮殿のバルコニーも、
1936年5月9日のイタリア帝国宣言をはじめ、
ムッソリーニが
広場に集まった大群衆に対して
数々の名演説を行った舞台となっていた。
どちらも今から約80年前。
バルコニーを見上げると
群衆へのダイレクトな肉声が持つ
強烈なパワーの片鱗が、
いまでもどこかに
残っているような気さえする。
建物自体は、
19世紀後半を象徴するような
「様式混在の建築」となっているが、
2階部分の柱も、
1階部分の石積みも、
見応え充分。
彫刻も一体一体、力作揃いだ。
新王宮の正面、英雄広場から、
隣接する旧王宮の一部
レオポルト宮を抜けた中庭には、
像を囲んだ小さな広場がある。
【フランツ二世像】
広場中央にある像。
同一人物が
「神聖ローマ帝国
最後の皇帝フランツ2世」
であり、
「最初のオーストリア皇帝
フランツ1世」
でもあるから混乱しやすい。
さらにさらに同じ人物が
「ハンガリー国王フェレンツ1世」
でもあり
「ベーメン国王フランティシェク2世」
でもあったというのだから、
いったいどう呼べばよかったのだか。
像の奥にはアマリエ宮がある。
【アマリエ宮】(写真右奥)
完成は1611年。
皇帝ヨーゼフ1世の皇后アマリエが
1742年までここに住んでいたことから
アマリエ宮と呼ばれている。
その後、皇帝レオポルド2世、
フェルディナント1世、
エリザベート皇后や
最後の皇帝カール1世なども
住んでいた。
中央の初期バロック様式の塔の下には
月球儀と日時計を見ることができる。
【帝国宰相官房棟】(写真右側)
フランツ2世像に向かって、
もう少し右に眼を遣ると、
この建物が大きく迫っている。
旧王宮の一角となる
アマリエ宮と帝国宰相官房棟の
内部も一部
「シシィ博物館」と「皇帝の住居」として
一般公開されている。
「シシィ博物館」と
「皇帝の住居」については
回を改めて紹介したい。
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