オーストリア旅行記 (29) ウィーン国立歌劇場(4)
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オーストリア旅行記 (29) ウィーン国立歌劇場(4)
- 国が支え続けているオペラ -
国立歌劇場のガイドツアー報告の4回目。
【ロイヤルボックスと応接間】
皇帝も使っていた
ロイヤルボックスの応接間。
「今は記者会見の会場として
使われたりもしています」
とガイドさん。
「この部屋は豪華ですが、
時間貸しもしているんです」
「夜の二時間で約15万円」
「今度のお誕生会を
ここでやってはいかがでしょう?」
部屋はドアの取手も象牙。
ロイヤルボックスのほうに移ってみよう。
さすがに眺めはいい。
【マーラーの間】
グスタフ・マーラーは
1897年から1907年まで
歌劇場の総監督を務めた作曲家。
個人的には作曲家としてしか知らないが、
指揮者としても活躍していたようだ。
この広間は、音響もいいので、
演奏会やリハーサルに使われることも
あるとのこと。
ここで、こんな写真を目にした。
年に一度開催されるという大舞踏会の様子。
舞台裏を案内された時、
舞台裏が50mもあるということに
驚いたが、この舞踏会では、
この50mをフル活用。
舞台と客席側を同じ高さにして
一体化。
舞台裏、舞台、客席を繋げて
縦長の大きな一枚の床にし、
これだけの床面積を確保している。
夜10時からオープンニングセレモニー。
5500人が参加、朝5時まで続く
大イベントらしい。
【歌劇場正面2階のロビー】
ここには、
ヘルベルト・フォン・カラヤン
カール・ベーム
といった、
歴代総監督の像も置かれている。
日本語でのガイドさんは、
小澤征爾さんが2002年から2010年まで
音楽監督を務めていたことも
忘れずにちゃんと添えてくれていた。
ここで、歌劇場の総監督と
音楽監督の代表的な方々と
劇場の大イベントを並べて
棒年表を作ってみよう。
(数字は生年と享年。
色は60歳までは20年区切り)
空襲で大破した歌劇場の
修復完成記念演奏会の指揮をしたのは
カール・ベーム。
この表を見ると、その時彼は
60歳くらいだったことがわかる。
マーラー、ワルター、
ベーム、カラヤン、マゼールと
10数年から20数年程度の差で並んでおり、
世代間の引継ぎが
順調に続いていることもわかる。
マゼール、アバド、小澤征爾は
ほぼ同世代で、
カラヤンと約20歳違いの
グループだということも。
それにしても、読者の皆様は
これをご覧になって
なにを思うだろう。
私が一番眼を奪われたのは
年齢差よりもなによりも
よく言われる
「指揮者は長生き」はほんとうだ、
ということ。
棒を振る、というのは
よっぽど体にいいのだろう。
公演にはアーティストの他、
いわゆる裏方が約380人いて、
合計約1000人の人が関わっている。
ちなみに、年300回の公演をこなす
この歌劇場の年間予算は130億円。
チケットの売上でカバーできるのは
その約半分。
約半分は国家の税金から補助されている。
なお、現在
ジェネラルスポンサーは、
トヨタのレクサス。
こんなりっぱなスポンサー表示が
劇場内通路にあった。
国家からの補助については、
広瀬佳一、今井顕 編著
ウィーン・オーストリアを
知るための57章【第2版】
明石書店
(書名または表紙画像をクリックすると
別タブでAmazon該当ページに。
以下、水色部は本からの引用)
国庫が潤渇し、
帝国の周囲は敵ばかり、
という状態にあった
マリア・テレジア女帝の時代でさえ
「オペラなしでは
このような街に住めはしない」と、
年間15万グールデンという
多額な補助金が
国庫より支給されていた。
音楽芸術を手厚く庇護する伝統は
今日に至るまで続き、
1930年代の世界大恐慌の際でさえ、
オペラに対する
国庫補助金がとだえることはなかった。
日本企業がスポンサーとして
一部を支えていることは嬉しい事実だが、
「伝統的に国家がオペラを
しっかりと支えているんです」
という話には感嘆の声があがっていた。
以上で
ウィーン国立歌劇場ガイドツアーは終了。
実際のツアーは
トータルで40分ほどのものだったが
盛りだくさんで
おおいに楽しむことができた。
「次に来る時は、
オペラを観に来なければ」
との強い思いと共に
ガイドさんに礼を言い、
劇場をあとにした。
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