オーストリア旅行記 (6) サウンド・オブ・ミュージック(その2)
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オーストリア旅行記 (6) サウンド・オブ・ミュージック(その2)
- バスの中の大合唱 -
オーストリアのザルツブルク発、
映画「サウンド・オブ・ミュージック」の
ロケ地ツアーの二回目。
前回同様、
『サウンド・オブ・ミュージック』の秘密
瀬川裕司 (著)
平凡社新書
(以降水色部は本からの引用)
と 映画のDVD/Blu-ray
で補足・確認しながら、
振り返ってみたい。
(以降、映画からのシーンは黄色枠で)
【ヘルブルン宮殿-ガラスの部屋】
ヘルブルン宮殿の美しい庭の片隅にある
「ガラスの部屋」。
長女リーズルと恋人ロルフが踊り、
マリアと大佐が愛を語り合った
ガラスの部屋。
撮影のロケ地だ、と思ってみると
ヘンなところがいろいろある。
まず場所。
周辺は緑豊かで美しいが、
実際に建っている場所が
庭の片隅という感じで、
塀がすぐそばに迫っている。
なので
映画で観た「広い庭の中」
という感じがしない。
そもそも全体的に小さくないか?
実は、実際の撮影は
ハリウッドのセットで行われており、
ここにあるのは、
湖畔での撮影時に
背景に映るものとして制作されたものを
観光用に移築しただけのもの。
つまりは
ロケ地でもロケ・セットでもない、
ということのようだ。
それでも、外は雨の中、若い二人が
「もうすぐ17歳」を歌いながら踊る
印象的なシーンに登場する
ガラスの部屋ゆえ、
前で記念撮影する人は多い。
ちなみに、ヘルブルン宮殿の庭は
ほんとうに美しい。
映画のことを一切忘れても、
庭だけを楽しむことができる。

【ヘルブルン宮殿 裏-小道】
この直線の小道のずーっと先、
距離で言うと約1.5km先で、
マリアがトラップ家を
初めて訪問するところが撮影された。

トラップ家の屋敷の外観として
ロケに使われた「フローンブルク宮殿」が
そこにある。
ちなみに、屋敷内部の撮影には、
ハリウッドのセットを使ったらしい。
いずれにせよ、
撮影地は「ずーっと先」なので、
これまたここがロケ地というわけではない。
なのに、皆、妙に盛り上がっている。
映画ではどんな道だったか、
ちょっと覗いてみよう。
この先にありそう、が
十分感じられる程度には
同一の道の雰囲気が伝わってくる。
その後、トラップ家の屋敷の外観
「フローンブルク宮殿」をバスから眺め、
ホーエンザルツブルク城塞(左)と
マリアがいたノンベルク尼僧院(右)の
両方が見える場所
に寄ったりしながら、
バスはザルツブルクを離れ、
ザルツカンマーグート(「塩の宝庫」の意)
と呼ばれる、山と湖のきれいな
山岳方面に入っていった。
とにかく山の景色が美しい。
途中寄ったのは・・・
【ザンクト・ギルゲン】
モーツァルトのお母さんの出身地だという。
さすが、あのレベルになると
母親の出身地すら
観光資源の一部になってしまうンだ。
映画のほうでは、一番最初、
空撮の映像のひとつとして出てくる。
見比べてみよう。
カメラの高度は違うものの、
もちろん山並みはそのままだ。
ちなみに広がる湖はヴォルフガング湖。
母親の出身地なら
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(Wolfgang Amadeus Mozart)の
Wolfgangと関係があるに違いないと思い
少し調べてみたのだが、
関係性についてはよくわからなかった。
関連があるのかないのかも含めて、
なにかご存知の方、
いらっしゃいましたら教えて下さい。
【バスの中の大合唱】
この後バスは、マリアと大佐が
結婚式を挙げた教会を目指したのだが、
少しまとまった移動時間の間、
ガイドさんは、
「みんなで歌おう!
sing-alongだ!」
と言って、映画のサントラ盤を
車内で流し始めた。
もちろん最初は皆
戸惑っている感じだったが、
ガイドさんの盛り上げ方もうまく、
だんだん歌声が大きくなってくる。
バスの中で、皆で歌を歌うなんて、
小学校の遠足以来かも?
ひとりひとりの声が出始めると
まさに相乗効果、
どんどんノリノリになってくる。
歌詞カードを配ったわけでもないのに、
まったく問題ない。
このツアーに来る以上、
歌えるくらいは常識ってこと?
しかも皆、歌がうまい!
最初は歌いやすいように、
サントラ盤の音を
わりと大きめにかけてくれていたのだが、
歌がのってくると
途中でサントラ盤の音をキュッと絞って、
車内の大合唱だけが聞こえるようにする。
その瞬間の、ゾクッと感が
伝わるかどうかわからないが、
その時の録音の一部を
貼っておきたい。
少しでもバスの雰囲気に近づけるべく、
可能なら、大きめのボリュームで再生を。
まずはこの歌。
These are a few of my favorite things.
の部分をバスの中の声だけにしている。
【私のお気に入り(My Favorite Things)】
繰り返しながらどんどんノってくる。
3回目のあと、ここは大合唱。
When the dog bites
When the bee stings
When I'm feeling sad
I simply remember my favorite things
And then I don't feel so bad
車窓を楽しみながら、
映画の中の名曲を
もう待ちきれない、という感じで
まさに次から次へと歌っていった。
そんな中、最も盛り上がったのは
やっぱりこの歌だった。
「レ」から「ラ」までは
バスの中の合唱のみ。
【ドレミの歌】
Doe-a deer, a female deer
Ray-a drop of golden sun
Me-a name I call myself
Far-a long, long way to run
Sew-a needle pulling thread
La-a note to follow sew
Tea-a drink with jam and bread
隣には妻が小さくリズムをとりながら
にこやかな笑顔で座っている。
車窓には
ザルツカンマーグートの美しい山々が
次々と流れていく。
耳からは
サウンド・オブ・ミュージックの
名曲の数々が、
その歌を愛する人たちの生の声、
大合唱で流れこんでくる。
まさに夢のような時間だった。
あのとき、歌声と共に
身体(からだ)の芯からこみ上げてきた
ほんのりと温かい、おだやかな幸福感は、
ふたりの旅の一シーンを
特別なものにしてくれた気がする。
ところで、
この有名な「ドレミの歌」は、
ドレミと歌っていながら、
実際は「♭シドレの歌」に
なってしまっていることをご存知だろうか。
つまり、ハ長調ではなく変ロ長調。
えっ、ホント?
という方、両方の調で
ワンフレーズ貼っておくので
ぜひ聴き比べてみてほしい。
上のサントラ盤【ドレミの歌】に
自然に繋がるのはほら。
【変ロ長調】
【ハ長調】
「よくわからん」という方のために
テンポが合ってはいないのだが、
強引に両者を繋げて聞いてみよう。
音の高さだけにご注目あれ。
【「サントラ」 から 変ロ長調のドレミ】
変ロ長調だと自然に繋がるが、
強引にハ長調で始めてしまうと・・・
【「サントラ」 から ハ長調のドレミ】
ハ長調で書いた楽譜が残っており、
舞台版の録音でもメアリー・マーティンは
ハ長調で歌っている。
映画の子役俳優に配られた楽譜も、
ハ長調で書かれている。
ところが映画で聞かれる同曲は、
変口長調になっているのだ。
主演のジュリー・アンドリュースが
一音高いハ長調で歌えなかったはずはなく、
もし理由があるとすれば、
一緒に歌う子どもたちの
音域の問題だったのだろう。
ちなみに、車内が大合唱となった
ツアーバスはこんな大型のものだ。
ロケ地巡りの話、もう少し続けたい。
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コメント
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hamaさん、こんばんは。
私の大好きなサウンド・オブ・ミュージックの世界を堪能されたのですね。子供の頃に外国の映画で楽しいと思ったのがこの映画で、母・姉と一緒に出かけました。レコードも買って来て、意味はわからなくても唄えるようになっていました。
車の中での大合唱、一緒に唄いたかったです
「Wolfgang Amadeus Mozart」の名前のWolfgang はドイツの男性によくつけられる名前ですので、地名と一致するのか分かりません。ちなみに文豪のゲーテも「Johann Wolfgang von Goete」とWolfgangがはいります。だだし前置詞vonがはいりますのでちょっとニアンスが違いますね(von は英語のfrom,ofに近い前置詞です)。
投稿: omoromachi | 2017年10月 1日 (日) 20時09分
omoromachiさん、
コメントをありがとうございます。
>車の中での大合唱、一緒に唄いたかったです
omoromachiさんの歌声は、
omoromachiさんのブログのほうで
ときどき楽しませていただいております。
自らの弾き語り。
omoromachiさんがあの席にいらっしゃったら、
それはそれは素敵な歌声で、
あの大合唱に参加されていたことでしょうね。
一緒に歌を歌うって、
不思議な一体感に包まれます。
いつの日にか、
ぜひツアーに参加してみて下さい。
あの調子なら、まだまだ何年も続きそうです。
ブログにも書いた通り、
50年以上も前の映画なのに、
あの大型専用バスが
毎日活躍しているわけですから。
って、こうやって参加した人が、
口コミでその魅力を
世界中で広めていることも
続いていることのひとつの理由に
なっているのかもしれませんが。
投稿: はま | 2017年10月 8日 (日) 12時08分