オーストリア旅行記 (3) ザルツブルクでの最初の夜
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オーストリア旅行記 (3) ザルツブルクでの最初の夜
- 問題は傘がない -
インフォメーションセンタで
必要な情報を得て歩き出した我々夫婦は、
ザルツブルク中央駅から
こんな街並みを楽しみながら、
ザンクト・アンドレー教会の前まで来た。
2両連結のトロリーバスが走っている。
ここからミラベル宮殿の
庭園を抜けることにした。
美しい庭園の向こうに
ホーエンザルツブルク城塞が見える
ミラベル庭園を抜けて、
と、この写真にピンと来た方は
かなりの
「サウンド・オブ・ミュージック」通だ。
50年以上も前の映画
「サウンド・オブ・ミュージック」
については、前回書いた通り
翌日4時間のツアーに
参加することにしたので、
その報告の時に、
まとめて書きたいと思う。
旧市街と新市街を分ける
ザルツァッハ川まで来た。
橋の向こうが旧市街。
旧市街に向かいながら、
ミュルナー小橋から左側を見ると
この景色。
ホーエンザルツブルク城塞と旧市街は、
ほんとうに絵になる。
川を越えて、
お目当てのレストランを目指す。
レストランに行く前に、
そのすぐ近くにある
「アウグスティーナ・ブロイ」
を覗いてみることにした。
ガイドブックに
「オーストリアで最大規模のビアホール」
と書いてあったからだ。
ドイツのビアホールは
何箇所かで経験があるが、
オーストリアはどんな感じなのだろう?
ちょっと雰囲気に触れてみたかった。
「アウグスティーナ・ブロイ」は
1621年、アウグスティーナ派の
修道院の僧侶たちが創設した醸造所、
とのことで、
入り口はきわめてわかりにくいというか、
地味。
看板はあるものの、この扉がほんとうに
「オーストリアで最大規模のビアホール」
の入り口なのだろうか?
半信半疑で階段を下りていく、
が、ここまで来ても、
下が大きなビアホールに
なっているとは思えない。
階段を下りるにしたがって
賑やかな声が一歩一歩近づいてくる。
下まで下りると、
大きなホールが広がっていた。
屋内のテーブル席はこんな感じ。
200人収容のホールが4つもある。
しかも建物は斜面に立っていたのか、
階段をずーっと下りてきたのに、
そのまま屋外にでることができる。
その屋外になんと1500席!
季節がいいせいか、月曜日の夜に
こんなに混み合っている。
料理は、並んだ店に好きなものを
各自で買いに行くセルフサービス形式。
肉屋に人気があるようだ。
肝心のビールは
サイズを指定してまずチケットを買う。
その後、
ビアマグを自分で棚から手に取り、
なぜか各自、水で洗ってから、
チケットと一緒に
ビールカウンタに差し出す。
すると目の前で、
そのジョッキに注いでくれる、という
こちらも料理同様セルフサービス。
サイズは500mlと1リットルの2種類のみ。
見て回るだけでも楽しい。
もちろんここで飲んでもよかったのだが、
目的のお店がすぐ近くにあったので
雰囲気だけを味わってから、
そちらの店を目指した。
ビアホールから出ると、
空は黒い雲に覆われていた。
ポツポツと大粒の雨が落ち始めている。
目的のレストランは
そこから歩いて3分程度。
「雨が降ってきたから急ごう」
1663年開業の老舗レストラン
熊のサインが目印の
「ベーレンヴィルト」を目指した。
店に到着すると
「予約はありますか?」
「いいえ」
月曜日の夜でもあり、
特に高級店というわけでもないので、
予約のことは全く気にしていなかった。
でも、席はありそうじゃないか。
ところが、タイミング悪く、
降り出した雨を避けて、
テラス席の客が
店内に移ってきている。
そのために席がないという。
しかたがない。
周りにいろいろな店が
並んでいるわけでもないので、
先程のビアホールに戻ることにした。
すでに夕立の雨脚は
強くなり始めており、
雷鳴も響いている。
濡れながら駆け足でビアホールに戻ると
事情は当然のことながらこちらも同じ。
屋外にいた客が
次々に中のホールに移ってきているので、
さきほどまでは空いていた広い室内も
大混雑。
なんとか席を確保し、
ここで夕食をとりながら、
夕立が止むのを待つことにした。
定番のソーセージや
ラタトゥイユや塩パン
人気店の肉
などなど、
典型的なビアホールめし。
特徴あるちょっと甘口のビールも、
名前がよくわからないので
エィヤで思い切って買ってみた食べ物も、
どれもすごくおいしくて、
味になんの不満もなかったのだが、
食べ終わっても
雨音、雷鳴ともにまだまだ元気で、
雨のやむ気配が全くないので
どうも落ち着かない。
レストランならタクシーを
呼んでもらうことも頼めそうだが、
セルフサービスのこのホールでは
そんなことを頼めそうな人もいない。
傘も小バッグがすっぽり入るビニール袋も
日本から持ってきているのに、
ふたりともホテルに置いてきてしまっていて
肝心なときに手元にない。
コンビニや売店もないので傘も買えない。
さて、雨の中、どうやってホテルに戻ろう。
歩けば30分ほどだろうか?
ずぶ濡れになって歩いて帰るか。
とにかく初日。
できれば早く帰って
ホテルのベッドで休みたい。
最短ルートを探そうと
インフォメーションセンタでもらった
観光地図を広げてみたが、
極端に短いルートがあるわけでもない。
「困ったねぇ」
妻も地図を眺めている。
しばらくすると、
やおら顔をあげてこう言った。
「この21番のバスに乗れば
帰れるンじゃない?」
「ほんと?」
ふたりで小さな文字と細い線を追った。
路線別のルートが
わかりにくい地図であったが、
確かに店の近くを通り、
ホテルのそばまで行っている。
「よし、これにトライしよう!」
バス停の位置も、運転間隔も
もちろんぜんぜんわからなかったが、
もう夜も9時を過ぎているので、
少しでも早いほうがいいだろう。
雨は上がっていなかったが、
まずはバス停を探そうと
店を飛び出し、
ルート沿いに歩き始めた。
バス停はすぐに見つかった。
時刻表を見ると9時台に2本。
時間通りならあと十数分で来る。
やった!
なんとか雨を避けるために
近くの建物に寄ったが、
石造りの建造物には
いわゆる軒下というものがない。
扉部分の「へこみ」に
ふたり寄り添うように隠れて
なんとか時間が来るのを待った。
ほぼ定刻、21番のバスが来た。
念のため乗る時に地図を見せて
「ここに行くか?」
とドライバーに確認。
ドライバーの返事が
うれしかったこと、うれしかったこと。
運転席横の
妙に大きなタッチパネルのついた
発券機でチケットを発行してくれた。
二人で5.2ユーロ。
日本円で700円くらいになるので、
日本のバスと比べると高いが、
今回のように、
困っているときに助けてもらえると
こんな安いものはない、という気がする。
チケットを見ると
夜9時38分のことだったようだ。
バスはホテルのすぐそばにまで行ったため、
結果的にほとんど濡れずに
帰ってくることができた。
ホテル到着が夜10時過ぎ。
日本を出発してから
もう29時間くらいは経過している。
羽田発の深夜便だったので、
ベッドで寝られるのは45時間ぶりくらいか。
ようやくベッドに潜り込んだ。
時差ボケを微塵も感じることなく
翌朝まで爆睡の第一泊目。
本格的な観光は明日からだ。
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