「怒(おこ)りんぼう」と「互い」
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「怒(おこ)りんぼう」と「互い」
- 同じところがあるからこそ -
前々回、
前回
に引続き
高橋こうじ 著
「日本の言葉の由来を愛おしむ」
東邦出版
から、もういくつか
言葉ネタを紹介したい。
(以下、水色部は本からの引用)
「怒(おこ)りんぼう」
キティちゃんが人気だそうです。
このような
「子どもっぽいかわいさ」
に注目し称賛する文化は、
いまやわが国が
世界に売り込む目玉商品ですが、
私は一群の日本語に
そうした文化の源流を感じます。
それは、
「甘えんぼう」「裸んぼ」のように、
語尾に「ぼう」や「ぼ」をつけることで
「かわいさ」を表現する言葉です。
本文では、もちろん
語源についても説明している。
* 僧侶が住む建物「坊」
* 僧侶も「お坊さん」に
* 男の子の刈り上げ頭が僧侶のよう
例:「〇〇坊」
* 「ぼう」の語感が「子どものかわいさ」に
そして、
「赤んぼう」 「裸んぼ」
「聞かんぼう」「食いしんぼう」
大人にも使うことがある
「怒りんぼう」「甘えんぼう」
さらには、
猪の子の「瓜ぼう」
果物の 「桜んぼ」
まで挙げてある。
この「子どもっぽさ」を添える、は
最近よく見る他の言葉にも
生きている気がする。
私が気になっているのは
たとえばこれら。
「女子力」「女子会」「弁当男子」
などの「子」
「山ガール」「肉ガール」
などの「ガール」
女子とは言わんだろう、
ガールとは言わんだろう、の年齢の女性に
女子会も、山ガールも
あまり抵抗なく使われている。
子どもっぱいからイヤだ、
の声があってもいいと思うのだが。
「互い」
動詞「たがう」の名詞形とあります。
「たがう」は「順序をたがえる」
「約束をたがえる」などと言うときの
「たがえる」の古い形で、その意味は
「不一致の状態になる」こと。
いまでも不和を
「仲たがい」と言いますね。
本来は「不一致」という意味の言葉を、
私たちはこんな時にも使っている。
「お互いさま」
「互いに頑張ろう」
どう考えても「不一致」ではない。
むしろそこには
「同じようなふたり」が浮かぶ。
いったいどういうことなのだろう?
並んで腕立て伏せをしながら、
その回数を「1、2、3……」と
読み上げている様子を
思ってみてください。
はじめは声がそろっていたのに、
途中から少しずれる、
というのはよくあること。
こうした状態を私たちは
「互い違い」と言います。
「違い」も「不一致」を意味しますから、
これは不一致であることを
強調する言葉です。
実は、二人は同じことをやっていて、
不一致なのはタイミングだけなのですが、
だからこそ、そこが気になる。
「違っている」とは
「同じところがある」に支えられている。
まず不一致の要素に目をとめます。
自分と他者を見比べるときは特にそう。
でも、そもそも「不一致」が
目にとまるというのは、
そのほとんどが「同じ」だから、なのです。
「不一致」を表す言葉が、
「同じように」も使われるようになる。
「違い」が気になったときは、
「そのほとんどが『同じ』だから」
を思い出してみたい。
不思議な鎮静効果があるような気がする。
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