ブルーバックス 通巻2000番記念
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ブルーバックス 通巻2000番記念
- 10年後を知りたければ -
講談社のブルーバックスが
2000タイトルを突破したことを機に
この2月、
記念の小冊子を書店で配布していた。
無料なるも
新書サイズでしっかり160ページ。
表紙の名前を見ているだけで、
これらの方々が
どんな文章を寄せているのか、
期待が高まる。
個人的に、まさに数々の
思い出のあるブルーバックス。
寄稿されたエッセイだけでなく、
全体を楽しく読ませていただいた。
(以下水色部は小冊子からの引用)
「ブルーバックス」は
「科学をあなたのポケットに」
を発刊のことばとして
創刊された。54年前だ。
人類で初めて宇宙空間に飛んだ
ソ連の宇宙飛行士ガガーリンが
「地球は青かった」と言ったのが1961年。
その言葉が人々の記憶にまだ新しく、
ブルーは科学を表す
象徴的な色ということで、
シリーズ名称が決まった。
現在も刊行している
新書レーベルとしては、
岩波新書(1938年創刊)、
中公新書(1962年創刊)
についで日本で3番目に長い歴史を持つ。
2000点のタイトルに対して、
歴代発行部数のベスト10が出ている。
特にベストセラーを選んで
読んでいたわけでもないのに、
見てみるとこのうち6冊は読んだことがある。
都築卓司さんの本によく描かれていた
永美ハルオさんの挿絵も、
何点かピックアップされていて
「マックスウェルの悪魔」の
この絵なんて今でも覚えている。
水の分子と酒の分子を
見分けられる悪魔の図。
ほんとうに懐かしい。
ベスト10で興味深いのは、
2001年以降に発行された
つまり21世紀の発行部数ベスト10も
発表されているところ。
こちらを見ると読んだことがあるのは、
わずか一冊だけ。
科学に対する
私自身の関心が薄れてしまったのか、
単に歳をとっただけなのか。
それにしても部数を最初の表と比べると
ざっくり言って1/3。
しかも、一位の、
「記憶力を強くする」は、
2001年1月に刊行された5冊のうちの一冊。
本文でも
今世紀最初の書目であることは、
編集部にとって越えるべき
「宿題」といえるのかもしれないが-。
と書いている。
やはり、本は売れなくなっているのだろうか。
新書ではあるが、
のちのノーベル賞受賞者が
書いているものもある。
名著のひとつといえる「クォーク」
(B480)が刊行される。
著者は、2008年に「自発的対称性の破れ」
の理論などで、小林誠、益川敏英とともに
ノーベル物理学賞を受賞することになる
南部陽一郎。
「10年後の物理を知りたければ
南部の論文を読め」
と言われるほど多くの素粒子理論の
おおもとになる業績を上げてきた著者が、
素粒子物理学の発展をたどりながら
そのエッセンスを解説している。
ノーベル賞受賞の27年前のこと。
それにしても
「10年後を知りたければ」
と言われるなんて、
なんともカッコいい。
「陽子や中間子はもはや素粒子ではなく、
その代わりにクオークが登場しました。
そればかりでなく、
今まで関係のないものと見なされていた
各種の力も統一される可能性が生まれました。
さらにおどろくべきことは、
極大の世界である宇宙全体の歴史が
極小の世界の問題と
切りはなせなくなったことです」
カの統一、宇宙の根源と素粒子。
このテーマは、その後ブルーバックスの
物理分野の大きな柱となっていく。
最初に書いた通り、多くの方が
ブルーバックスの思い出や
ブルーバックスへの思いを語っている。
「こんな本もあるンだ」
「この本読んでみたいな」と
新しい本発見のきっかけにもなる。
私も「読みたい本リスト」が
かなり膨らんでしまった。
ブルーバックスの案内本としてもお薦め。
書店になければ、
電子書籍でもどうぞ。
こちらも無料で配布されている。
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