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2017年1月 1日 (日)

「おいしいもののまわり」

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「おいしいもののまわり」

- 子どもの頃きちんと教えられたこと -

 

あけましておめでとうございます。

「はまのおと」
本年もどうぞよろしくお願いします。

 

さて、新年
「新たな気持で」を思った時、
最初に浮かんだのはこの本だった。

土井善晴著
「おいしいもののまわり」
グラフィック社

(以下水色部、本からの引用)


レシピ集ではない。
テレビ朝日「おかずのクッキング」に
2007年から2012年まで連載されていた
土井さんのエッセイを
加筆・修正のうえ再編集したもの。

印象的な表紙のデザインは、
柿木原政広さん。

 「大気の青」
 「植物の緑」
 「黒い土」
 「命の水色」
 「火の赤」

による縞文。

 

料理そのもの、というよりも、
料理のまわり、まさに
「おいしいもののまわり」
に関するエッセイが並んでいる。

調理道具や調理方法など
取り上げている題材はさまざまだが、
土井さんの料理に対する姿勢、
(乱暴にひとことで言ってしまえば)
「丁寧に美しく」
がピシッと貫かれていて、
読んでいてなぜか背筋が伸びるというか、
姿勢を正したくなる


それは、家庭料理であっても
プロの料理人のしごとであっても同じ。

丁寧な、丁寧な仕事の中に、
楽しみを見出し、
美しさを見出している。

 

「はじめに」から
土井さんの思いがあふれている。

料理とは命をつくる仕事である

・・・

料理することはすでに愛している。
食べる人はすでに愛されている


・・・

おいしいものは、はかないものである。
音楽にたとえれば、
ロックコンサートのように
刺激の強い音ではない。

耳を澄ませなければ聞こえない、
鳥のさえずりや川のせせらぎのような
穏やかなるもの。

真のおいしさとは、
舌先で味わうのではない、
肉体が感じる心地良さ、
ひとつ一つの細胞が喜ぶものなのだ

 

「箸で盛ること」
の節では、和食の盛り付けに関して、
こんな話を披露している。

 和食では、料理を盛るときは、
箸を決して右手から離すことはない


和え物、酢の物なら、まず、
複数の食材をひとつのポールに入れて、
和え衣や合わせ酢を加え、
箸に左手を添えて和える。

左手で直接材料に触れて箸を添えて、
形を整えて、そのまま器に盛り込む。

料理する人の手は
清潔であることが前提であるが、
この左手は
「五本箸」と言われて直接料理に触れる。

このとき、和食のルールとして、
右手は箸から決して離してはいけない。

なるほど。
和食の料理人が盛り付けるときの
ある種の動きの美しさは、
こんなところから来ていたのかもしれない。

そして左手は料理以外に触れることはない。
もし両手で料理に触れてしまえば、
器にも、箸にも
触れられなくなってしまうからだ。

 汚れた手で、器や道具を触れれば、
器を汚し、道具を汚してしまうことになる。

両方の手でサラダを合えたり、
和え物をつくったりしているのを見ると、
あの手はいったいどうするのだろうか
と思ってしまう。

手を洗うにも、
水道のハンドルを汚してしまう。
手は洗ってきれいになっても、
再びハンドルに触れれば
また汚れると考えるのが
衛生管理である。

箸が清潔な和食をつくっている

こんな簡単なことでも、
ちょっと説明してもらえるだけで、
和食の盛り付けへの関心はグッと深まる。

しかもシンプルにしてreasonable。

 

そんな中、
妙に気に入ってしまった一節がある。
「おひつ」についての
土井さんの子どものころの思い出。

親子の会話の一場面だが、
なぜか言葉のトーンに愛があふれていて、
情景が優しい。

 おひつを見ていたら、
幼い頃に初めてご飯をよそった記憶が
甦ってきた。

それはちょうど
物心のつき始めた時期と重なる。

「ご飯は一度でよそったらあかんよ。
 二回に分けてよそいなさい」。

「よそった後、おひつの中に
 穴があいているようではあかんよ。
 ちょっとならしときなさい」。

子どもの頃きちんと教えられたことは、
いつまでも忘れないものだ。

「子どもの頃、きちんと教えられたこと」が
大人になってもごく自然にできる人は、
それだけで美しい。

 

 

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コメント

hamaさん 明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
お正月は家族全員なんとかのんびりと過ごすことができました。
そしてお正月は、祝い箸にそれぞれの名前を書いて、普段の箸とは違って、やはり華やかな感がありました。
ふだん何気なく使っている箸も、やはり料理人はしっかりと心を込めて使っているのですね。

今年も一年どうぞよろしくお願いいたします。

Khaawさん、
新年早々のコメントをありがとうございました。
私も家族と共に穏やかなお正月を迎えることができました。

気持ちが改まる、そういう節目は
新たな活力のためにも必要な気がします。
「祝箸」やおせち料理は、
そこに独特な美しさを添えてくれていますね。

今年も気の向くまま、
ぼちぼち書いていこうと思っています。
本年もどうぞよろしくお願いします。

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