読書の3R
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読書の3R
- きよはる、あきみ、きんのすけ -
本屋の立ち読みでの記憶なので、
雑誌名もコメントした方の名前も
思い出せないのだが、
雑誌の「読書」特集の記事の中で、
「読む本はどうやって選ぶのですか?」
の質問に、
「読書は3Rです」
と答えていた方がいた。
3Rとは、
Recommend (推薦)
Respect (敬意)
Risk (リスク)
自分にとって信頼できる、ウマが合う、
そういう方の「推薦」図書を素直に聞く。
どんな本であれ、著者には
本を書きたいほどの
衝動、熱意があったはず。
その思いに対しては
常に「敬意」を払って読む。
どんなに人がおもしろい、すばらしい、
と言っても
自分にとっては全く響かない本もある。
ハズレはあってあたりまえ。
「当たり」とは限らない「リスク」を
いちいち気にしない。
うまいことを言うなぁ、と感心したので、
3Rだけは今でも忘れずにいる。
なぜ、こんなことを急に書いているのか。
ここと
ここに
井上陽水さん自身の言葉を続けて書いたが、
陽水さんで、もうひとつ思い出したのが、
この本だったからだ。
小林聡美 (著)
読まされ図書室
宝島社
(書名または表紙画像をクリックすると
別タブでAmazon該当ページに。
以下、水色部は本からの引用)
すごい題名。「読まされ」って。
著名人の推薦図書を
小林さんに無理やり読ませ、
感想を聞いちゃおう、
というちょっと変わった本。
3RのRecommendだけで突っ走っている。
まぁ、でも、
確かに小林さんなら何を読んでも、
ちょっとおもしろい感想を
言ってくれそうではある。
不得意な分野であっても
Respectを忘れていないし。
で、この本に、推薦者として
井上陽水さんが登場する。
陽水さんは
松本清張の短編時代小説「白梅の香」を推薦。
さて、小林さんはどう読むか?
不得意領域への
警戒感いっぱいに感想は始まる。
私のこれまでの人生において、
松本清張は
あまりにもなじみのない世界だ。
そもそも、
ごくごく一般的なイメージの
松本清張の世界は、
私が一番苦手とする領域である。
推理小説。サスペンス。
ただでさえ心配事や不安の多い
日常の生活の中で、
なぜにわざわざまた違った
不安や緊張感を味わいたいのか、
まずその心理が理解できない。
なるべく頭を悩まさずに、ぼーっと、
ひたすらぼーっと暮らしたい私には、
そういう趣味は
まったく理解できないのである。
「なぜにわざわざまた・・」
なんとも小林さんらしいコメントだ。
『白梅の香』は
推理小説やサスペンスではなく
時代小説なのだが、
そちらも苦手だったようだ。
それでも、ある方法により
楽しんでしまうあたり、さすが小林さん。
脳の部分をフル活動させて、
初めて読んだ松本清張。
偉そうなことは何ひとつ言えないが、
時代小説を楽しめたのは
大いなる進歩である。
どんな方法をとったのかは本に譲るが、
最後、こんな小ネタが披露される。
二人に共通することは、
作品におけるそのクールなテンションと
本名が訓読み
(きよはる・あきみ)であることも
興味深い発見であった。
松本清張の本も、
井上陽水の音楽も、どちらも好きで
かなり読んだり聴いたりして来たが、
本名のことはどちらも知らなかった。
ただ、「きよはる」「あきみ」では、
あの小説も、あの音楽も、
書けなかったような気がしてしまうのは
なぜなのだろう?
そういえば、夏目漱石の本名
夏目金之助(きんのすけ)を知った時も
同じような感覚に襲われた。
「せいちょう」「ようすい」「そうせき」
これらの音は、それくらい強く、
彼らの作品の
テイストの一部になっている気がする。
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はまさん、こんばんは。
本を読まない私も3Rには「なるほど」と思ってしまいました。
私も小林さんと同じ状況で本を読んでいる気がします。「なぜわざわざ」とても分かります。本を読んでいて、読み終えて心が沈んだり、重くなったりした時にリカバリーできる余裕がまだ私には備わっていないようです。そんな時「なぜわざわざ読んでしまったのかと」後悔します。まさにRiskyな状況となってしまいます。
しばらくは、本も映画も音楽もriskを負わないものを選んでしまっています。
最後の本名のところの要点も何となく分かる気が致しました。
投稿: omoromachi | 2016年12月11日 (日) 19時25分
omoromachiさん、
コメントをありがとうございます。
私は一時期、松本清張もミステリーもよく読んでいたので、
まさに「わざわざ」不安になっていたクチです。
また、読書のリスクについて言うと、
つまらなくても途中でやめられないのが、
貧乏臭くて自分でもィヤになります。
「せっかく買ったのだから」とか、
「もしかしたらこのあと面白くなるかもしれないから」とか、
結局は時間の無駄になることがわかっているのに、
スキッとやめられない。
まぁ、でもやっぱり本はおもしろいので、
ボチボチと自分ペースで楽しんで行きます。
投稿: はま | 2016年12月17日 (土) 11時54分