文字の博覧会 (4)
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文字の博覧会 (4)
- 布教のために文字考案 -
「文字の博覧会」
からの報告の4回目。
(1):ビルマ文字が丸くなったのは
(2):上下左右なし、鏡文字もOK
(3):現役の象形文字
と書いてきたが、文字の話は
今日で一旦一区切りとしたい。
前回に引き続き、
ちょっと形の変わった文字を見てみよう。
参照するのは、これまで同様、
当日のメモと
パンフレットとして売られていた
西尾哲夫 他 (著)
文字の博覧会
-旅して集めた"みんぱく"中西コレクション
(LIXIL BOOKLET) LIXIL出版
(書名または表紙画像をクリックすると
別タブでAmazon該当ページに。
以下、水色部と文字の写真は
本からの引用)
(4-1) 中国:規範彝(い)文字
奇怪な文字を用いていることは、
18世紀、フランス人ドローヌの
報告書によって明らかになった。
象形文字を音節文字にした文字で、
7~8世紀頃に作られた。
四川のみならず、
貴州省、雲南省でも
同様の文字を用いており、
さん文、ロロ文字とも呼ばれる。
時を経て、1980年、
四川省は旧来の文字をまとめ、
規範彝(イ)文として公布した。
文字は819字あり、
字形は相互に関連性を持たない。
写真は、
1991年の凉山日報という新聞の一部。
この文字で、
ちゃんと日刊の新聞が発行されている。
(4-2) エスキモー文字
この写真は、中西コレクションデータベースから
ジェームズ・エヴァンスが1840年頃、
布教のためにカナダ先住民の言語を
表記するために考案した。
クリー語、
イヌクティトゥット語、
チペワイヤン語、
などでも使用されていた。
一瞬、数式の一部かと
思ってしまうような文字列。
それにしても「布教のために」
文字まで作ってしまうなんて。
展示会では、ほかにも
モルモン教布教のために考案された
デザレットアルファベットなども
展示されていた。
(4-3) アフリカ:マンドンベ文字
この写真は、アフリカ固有の文字から
ブログを書くために
いろいろ調べているうちに出遭った文字。
文字の博覧会で
見かけたわけではないのだが、
どうしても紹介しておきたかったので
お許しあれ。
詳しい説明は引用した
アフリカ固有の文字を
ご覧いただきたいが、
この形、インパクトが強すぎる。
4回にわたって
主に「文字の博覧会」から
特徴ある世界の文字を
紹介させていただいた。
第一回目に書いた通り、
これらの文字を集めたのは中西亮さん。
実は、中西さんの、まさに唯一無二の
文字収集活動については、
ずいぶん前から知っていた。
なのでいくつか関連記事も
スクラップしてある。
そんな中から、亡くなった後の
新聞記事を添えておきたい。
今から22年も前の古い記事だが。
朝日新聞 1994年6月4日の記事
以下 緑色部はこの記事からの引用。
京都市の元印刷会社社長が
120カ国を歩き回り、
400種類といわれる世界の文字の
ほぼすべてを収集した。
朝日新聞 1994年6月11日の天声人語
以下 茶色部はこの記事からの引用。
字体をみだりに変える者は
斬首(ざんしゅ)せよ
と厳命した王のおかげかどうか、
と中西さんは書いているが、
とにかく漢字は
二千年間その姿を変えず、
私たちは漢代の文書を
そのまま読むことができる
6月4日の記事にはこんな記述もある。
アフリカのサハラ砂漠へ旅立った。
トゥアレグ族の人たちが
守り続けたという
ティフナグ文字を探した。
腰や背中の痛みに耐えて、
ついに念願を果たした。
最後に辿り着いた「ティフナグ文字」とは
どんな文字なのだろう。
ちょっと見てみよう。
この写真は、中西印刷株式会社「世界の文字」から
梅棹忠夫さんの話
中西さんの研究は
極めて有意義なものです。
これほどの研究は
外国にもないのではないか。
言語学的にきちんと調べて
資料を集められている。
この資料が
散逸するのを心配しています。
ご遺族のご了解があれば、
整理したうえで永久保存し、
研究に役立てられるような方法
を探したい。
その後、資料は梅棹さんの希望通り、
国立民族学博物館に寄贈され、
中西コレクションとして
保管、公開されている。
まさに、
何とすばらしい文化的財産を
残したことか。
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普段、何気なく接している文字。世界中には言語と同じく、たくさんの文字があるのだろうとなんとなく思っていたら、本当に使われている文字は少なく、また一人の日本人によって貴重なデータベースが残されていることを知り大変面白かったです。
これから、外国にいったら、紙幣と新聞にもう少し興味を持って見てみたいです。
投稿: Khaaw | 2016年10月 2日 (日) 11時36分
Khaawさん、
コメントをありがとうございます。
>貴重なデータベースが残されていることを知り
ほんとうに貴重なものだと思います。
特に文字博を見て思ったことは、
媒体と共にあるということの価値。
通常の紙だけでなく、
羊皮紙や竹や布やレンガなど、
さまざまなものが使われています。
そういったモノと共に残っていることが、
単に文字の「形」だけでなく、
文字の「生命力」のようなものを
感じさせてくれる気がしました。
投稿: はま | 2016年10月 9日 (日) 12時04分