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2016年9月11日 (日)

文字の博覧会 (1)

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文字の博覧会 (1)

- ビルマ文字が丸くなったのは -

 

文字の博覧会
- 旅して集めた
 “みんぱく”
 中西コレクション - 展

P8275602s

を8月下旬、
東京京橋のLIXILギャラリーで観てきた。
(ちなみに、"みんぱく"とは
 国立民族学博物館のこと)

まさに世界の文字だけを並べた博覧会。
「中西コレクション」とあるように
文字を集めたのは
中西亮(あきら)<1928-94>さん。

中西さんは、
25年の間に100を超える国々を自らの足で回って
95種類の文字を集めた
世界でも稀有な文字ハンター。

その収集資料は、現在
「中西コレクション」として、
国立民族学博物館に収められている。

今回の博覧会は、
3,000点近くのコレクションから
約80点が選ばれて展示されていた。
規模は小さかったが、見応えは十分!

見る方も、集中力が持続できるので、
このくらいの規模のほうがかえって見やすい。

 

世界中には数千の言語があると言われているが、
使われている文字の種類は驚くほど少ない。

パンフレットとして売られていたこの本

によると、わずか「約40種」

中西さんが社長をつとめていた
中西印刷のページでは、

ひとくちに現用といっても、
「実際に使われている」かどうかを判別するのは
なかなか困難です。

文字というのは案外簡単に創作できてしまいますし、
民族的な理由や宗教的な理由から
特殊な文字がわざと使われる場合もあります。

ここでいう現用とは
「日刊の新聞が発行されている」

という基準をとりました。

と述べて、現用文字は28種と言っている。

現用文字だけでなく、
歴史的に滅びてしまった、
使われなくなってしまった文字を入れても
300種程度しかないと言う。

そのうち95種を集めたというのだから、
中西さんのコレクションがいかにすごいものかは
それだけでもよくわかる。

今日は、この博覧会から、
目に留まったものを幾つか紹介したい。

(以下水色部と文字の写真は上記の本
 「文字の博覧会」からの引用。
 展示の説明書きにも同じ文章が
 使われたりもしていた)

現在、地球上で使われている
ほぼ全ての文字が
アジアに集まっている。

と書かれているほど、アジアの文字は多彩だ。
まずは、これをご覧あれ。

 

(1-1) ビルマ文字

Birumaa

特徴的なのは文字の形。
どうしてこんなに丸いのだろう。

ビルマ文字に限らず、
文字は、書く媒体や筆記具に
かなり依存する。

つまり、何に何で書くか、にヒントがある。

多羅樹(たらじゅ)という
ヤシの葉に文字を書くため、
直線的な文字では葉が裂けやすいことから
変形していき、独特の丸い文字になったと
考えられる。

 

一文字一文字については、
こんなおもしろいエピソードもある。

ビルマ文字は
○の上下左右の切れ目で発音が変わる。

(〇の上空き)∪が「パ」、
(〇の下空き)∩が「ガ」、
(〇の右空き)Cが「ンガ」、
(〇の左空き)が数字の1。

ミャンマーからの留学生が
日本で目の検査を受けた時、
ついこれを読んでしまったという話がある。

 

ところでこのほんとうによく似た文字の列、
すらすらと読めるなんてちょっと不思議だ。

その文字を使わない外国人には、
「同じ字に見えてしまう」ことについて、
日本語でのたいへんわかりやすい例

挙げてあったので、それを添えておきたい。

ビルマ文字は活字をもってしても見極めが難しく、
日本人の目には全て同じ字に見えてしまう。

外国の人に
街頭の「ガソリン」という看板を見て、
あれがどうして読めるのだと聞かれたことがある。
彼らにしたらソリンは同じ文字に見える
というのだから、それと一緒なのだろう。

 

この文字は、仏教経典でよく使われる
パーリ語という専用言語にも使われているらしい。

 

(1-2) ラオ文字

Raoa

ラオスで使われているラオ文字。

この文字の前で思わずメモってしまったのは、

文字はすべて子音字
母音、声調は付加記号で示す。

という説明書き。

「すべて子音字ってどう読むの?」
と思ってしまうが、
ヘブライ文字のところにも、
アラム系文字は子音字のみなので、
 読むときは文脈に応じて母音を補う」
とあった。

 

(1-3) クメール文字

Kumerub

中西さんが、世界の文字の魅力にとりつかれる
きっかけとなったカンボジアの文字。

アンコール時代より
文字の上に波型の飾りを付けて
荘厳味を持たせるようになり

これが現代のクメール文字の鉤形として残り、
外見上の特徴となっている。

 

まだまだおもしろい文字はいっぱいある。
世界の文字の話、もう少し続けたい。

 

最後に、
文字の博覧会とは全く関係ない話をひとつ。

先日、こんな写真がtwitterで回ってきた。
「ニューヨークで見かけたツ」と紹介されていた。

Newyorktsu

日本人が見ると
どうしても「ツ」が先行してしまうが、
「ツ」を忘れるようにして見ると、
なるほど、コメディアンのドヤ顔というか、
顔文字の笑顔が見えてくる。

アメリカ人には「ツ」が見えない分、
笑顔が見えているのだろう。

上に書いた「ガソリン」の話で思い出した
おまけの一枚。

 

 

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コメント

以前、タイに住んでいた時に、ラオ、ミャンマー、カンボジアに行った際に、国が変わると、これほど言葉や文字も変わるのかと思ったことがありましたが(ちなみに、タイ語はラオ語とは親戚のようなもので、会話はほとんど問題なくできるようです、タイ人はラオ語をタイ語の方言くらいに思っているようです)、この多様な言語・文字は世界的にはむしろ珍しいということを知り、目からうろこです。そういえば、ベトナム語やマレー語は文字はアルファベットを借用しているので、意味はわからなくても発音だけは想像でき、旅行者にとっては有難いなあと思ったことがあります。恥ずかしながらタイに3年近く住んでいましたが、タイ文字は結局ほとんど読めずじまいでした。
言葉・文字は、文化の根本で、その文字を失うことは自分たちのルーツを失うようなものだとは思いますが、それが使われなくなっていく過程にはいろいろな背景があるんでしょうね。

Khaawさん、
コメントをありがとうございます。

各文字の説明を読みながら「へぇー」と思ったものを
メモっていただけの私の記録と違って、
実際にタイに住んでいた方からのコメントには、
まさに実感が伴っていて、ある種の迫力を感じます。

>それが使われなくなっていく過程には
ほんとうにそうですね。
形自体のおもしろさもありますが、
そういった過程を想像することが、
さらに見る楽しさを増してくれます。

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