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2016年9月 4日 (日)

箱根関所

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箱根関所

- 大工の棟梁が原文を読んだ理由 -

 

今年の夏休みは「箱根」を楽しんできた。

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小田急の箱根フリーパスを使ったので、
3日間、エリア内の乗り物が乗り放題。
車の運転ゼロでの箱根は初めてだ。

登山鉄道、バス、ケーブルカー、

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ロープーウェイ、芦ノ湖海賊船、

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行ったり来たり自由自在。
乗り放題なのは気軽でうれしい。

今回は中年夫婦ふたりでの小旅行だったが、
小学生くらいの男の子を連れて行ったら、
それはそれは喜ぶことだろう。
(ロープーウェイにはしゃぐ私に、
 「ここに大きな小学生がいる」
 と妻は笑っていたが)

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火山活動により
一時運休していたロープーウェイも全線再開。

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ただ、火山活動はまだまだ活発で
ロープーウェイから見下ろす大涌谷は、
硫黄(というか正確には硫化物)の臭いが
ものすごく、
乗客には厚手の濡れおしぼりが
「マスク代わりに使って」と配られていた。

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さて、今回訪問した中で、
予想外に(?)たのしめたのは、
「箱根関所」と「資料館」。

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思わずメモってしまったネタを
パンフレットや公式ホームページの情報で
補強しながら、
整理を兼ねて記しておきたい。

 

【入鉄砲はどこ?】
関所と言うと、
学校で習ったこの言葉が最初に浮かぶ。
「入り鉄砲と出女」

「入り鉄砲と出女」は、
どんな風に監視されていたのだろう。

正徳元年(1711)に幕府道中奉行が
箱根関所に出した5項目の取調べ内容を
見てみよう。
「御制札場」に掲げられている。

1. 関所を通る旅人は、
  笠・頭巾を取り、顔かたちを確認する。

2. 乗物に乗った旅人は、乗物の扉を開き、
  中を確認する。

3. 関より外へ出る女(江戸方面から
  関西方面へ向かう女性:出女)は
  詳細に証文と照合する検査を行う。
 
4. 傷ついた人、死人、不審者は、
  証文を持っていなければ通さない。

5. 公家の通行や、大名行列に際しては、
  事前に関所に通達があった場合は、
  通関の検査は行わない。ただし、
  一行の中に不審な者がまぎれていた場合は、
  検査を行う。

あれ? 何度読んでも
「鉄砲」についての記述が
どこにもないじゃないか


資料館の解説によると
全国にあった53の関所のすべてが
入鉄砲と出女に
目を光らせていたわけではなく、
関所によって取締まり項目が違っていたらしい。

そうだったンだ。
そんなことすらここで初めて知った次第。

 

【関所の復元】
今、関所跡に行くと、
江戸時代の関所が見事に復元されている。

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柿渋と松木を焼いた煤(すす)を混ぜた
「渋墨(しぶずみ)」で黒く塗られた建物群は、
一見の価値がある。

この復元は、
江戸時代末期に行われた
箱根関所の解体修理の詳細な報告書である

  相州御関所 御修復出来形帳
  (慶応元年:1865) 

が、静岡県韮山町(現伊豆の国市)の江川文庫から、
1983年に発見されたことが、きっかけだったらしい。

この「出来形帳」、
とにかく記述が詳細だった。

 たとえば、材料の寸法については
「六尺三寸弐分」などと
細かく「分」の単位(1分=3mm)まで
記されているだけでなく、
金物の寸法、使用される釘の本数、
石垣の高さや長さ・位置などが
広範囲にかつ、こと細かに記されていた。

 それを、大工の棟梁は、
古文書解読に長けた研究者によって
現代の漢字に直された
「読み下し文」で読むのではなく、
常に、原文の複写を
直接読むようにしていたと言う


なぜなら、こうすると

「出来形帳」を記した
人の気持ちや時代背景が
古文書を通してよく伝わってきて、
復元工事にも力が入った


からだという。
いい話だなぁ。

こんな話を聞くと、
復元された建物を見る方も
おもわず力が入ってしまう。

 

【土台の光付け(ひかりつけ)】
礎石の上に、木材の土台や柱がのるのが、
日本の建造物の基本形だが、
礎石は石ゆえ、表面はデコボコしている。
このデコボコの石に
木材をピッタリと取付ける加工技術が
光付け(ひかりつけ)


厩(うまや)の土台は、こんな感じになっていた。
礎石の凸凹具合と、土台の木材の凸凹具合が
ピッタリと一致していることにご注目あれ。

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石の上部に石灰を撒き、
木材と石との密着具合を確認しながら
石にピッタリと合う面を削りだしていく。

型を取っての加工ではなく、
石灰の付着を見ながらの加工は
3,4日かかるとのことだが、
それだけでここまでピッタリ密着できるなんて。

資料館では、柱の例がビデオで流されていた。
ちゃんと加工が終わると、
長い柱も一切の支えなしで
デコボコの礎石の上にまっすぐに立つと言う。

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【栩葺(とちぶき)屋根】
土台部分の光付け(ひかりつけ)と同様、
ぜひ見ておきたいのは
屋根の栩葺(とちぶき)。

一枚一枚、職人が丸太から
木材の繊維の方向に沿って割った板は、
杉の赤身で、
幅が4~5寸(12cm~15cm)、
長さが1尺4寸(42cm)。

2寸4分(7.3cm)ずつずらしながら
腐食に強い竹釘で打ち付けていく。

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一坪(1.8m×1.8m)で使用される
屋根板は370枚ほどにもなるらしいが、
重ねにより生成される段々の形状は
ほんとうに美しい。

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小さな資料館だが、
教科書的説明や復元話のほかにも、
関所破りの話やら、
享保13年(1728)に、
将軍に献上された象が通った話やら
(あんな重いものを
 どうして陸路で運んだのだろう?)
小ネタもいろいろ楽しめる。

光付け(ひかりつけ)や栩葺(とちぶき)などなど、
予備知識ありで見ると
復元建物をより細かく見られるので、
訪問時には、

「資料館」⇒「関所」の順

で見ることをお薦めする。

 

 

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