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2016年9月18日 (日)

文字の博覧会 (2)

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文字の博覧会 (2)

- 上下左右なし、鏡文字もOK -

 

「文字の博覧会」
からの報告の2回目。

前回、多彩な文字を持つ
東南アジアの文字から紹介を始めたら、
実際にタイに住んでいた方から、
近隣諸国訪問時の印象も含めて、
丁寧なコメントをいただいた。

実感を伴ったコメントは、
ほんとうにうれしい。

というわけで、
もう少し東南アジアの文字を見てみたい。

参照するのは、当日のメモと前回に引き続き
パンフレットとして売られていた

(以下、水色部と文字の写真は
 上記の本からの引用)

今日は、タイ文字から見てみよう。

 

(2-1) タイ文字

Tai

タイ語はシナ・チベット語族に属し、
一語が一音節から成り、
声調(中国の四声のような上下アクセント)を
持っている。

古いクメール文字を基にした
インドのブラーフミー系の文字。

声調記号なども導入して工夫されている。

「これは読みません」
「この後は余りに長いので略します」

といった記号もある

なんという記号だろう。
「読みません」をわざわざ書くなんて。

文字のページではなく、
タイ語のページで調べてみると、
これは、タイ語にインド系の語が多いことと
深く関係があるようだ。

インド由来の単語が
 「発音」はタイ語っぽく変化、
 とろこが「綴り」はもとのまま。
その結果、音と綴りに乖離が生じ、
英語knife(ナイフ)のkのようなサイレント文字や
「読みません」をわざわざ書く「黙示符号」が
登場してきたらしい。

他にも、Wikipediaで「タイ文字」を見ると、
「詩の節のはじまり」を表す文字、
「詩の節や章の終わり」を表す文字、
「文書や物語の終わり」を表す文字、
なども「文字」として存在している。

「音」以外の視点の違いは新鮮だ。

 

(2-2) マンヤン文字

Manyan

フィリピンの公用語であるタガログ語は
ラテン文字で記すが、
ミンドロ島のハヌノオ・マンヤンは、
独自の言葉と文字を守り続け、
竹片に小刀で文字を刻んでいる。

上下左右に決まった向きはなく、
左利きは左右反転した文字を書く

上下左右の向きもなく、
左利きの鏡文字もOKとは。

本を上下左右4人ではさんで、
四人同時に読めるということだろうか?

そういえば、
フィリピンについては、
こんなエピソードも添えてある。

 マゼランは
1521年にフィリピンに上陸し
まもなく殺されるが、
彼に随行した宣教師はフィリピンでは
各島それぞれに文字があると
驚きを持って書き記している


その後のスペイン支配下で
このことは全く忘れ去られたが、
19世紀に、独特の文字を持つ
山岳少数民族が発見された。

その文字がなんと
マゼラン一行が記録した文字と似ているという。

私は、古代文字を
守り続ける人たちに会いたくなった。

しかし、
フィリピン平地人からは
尻尾があると信じられているくらい、
隔絶された山岳民であった。

 

(2-3) シャン文字

Syan

ミャンマー東部のシャン族の文字。
仏教説話の一部。
この資料、ご覧の通りとにかく筆跡が美しい。

 

インド方面に目を移してみよう。
まずは公用語のこの文字から。

(2-4) デーヴァナーガリー文字

Deva

「都会の文字」を意味するナーガリーに
デーヴァ(神)を冠して呼ばれるようになり、
サンスクリット語の写本に用いられて
広域に伝播した。

現在、インド連邦の公用語は
デーヴァナーガリー文字で表記された
ヒンディー語
と定められている。

デーヴァ・ナーガリー文字と読むと読みやすい。

ヒンディー語だけでなく、
ネパール語もこの文字を使っている。

 

(2-5) グルムキー文字

Gurumuki

16世紀、インド北西部の
パンジャーブ地方にシク教が興り、
第2代グル・アンガドは、
初代グル・ナーナクの教えを正確に
民に伝えるためにグルムキー文字を創製した


グルムキーは
「グル(最高指導者)の口」の意である。

それまでこの地方のパンジャーブ語を
表記していたランダー文字は

「書いた人以外には絶対読めないのが唯一の欠点」

といわれた不完全な文字
で、
グル・アンガドはランダー文字や
デーヴァナーガリー文字を改変して
文字を作ったとされる。

前身のランダー文字とはどんな文字だったのだろう。
「書いた人以外には絶対読めない」って
そもそも文字と言えるのだろうか?

「唯一の欠点」という表現が笑える。

 

(2-6) オリヤ文字

Oriya

インド東部のオリッサ州で話される
オリヤ語を表すオリヤ文字は、
北方系のデーヴァナーガリー文字と
同系列に属する。

しかしその形状は中西さんが

「坊主頭が並んだようで一度見たら忘れられない」
 
と言う通り、上部がすべて丸く、
文字に水平の直線は一つも現れない。

「坊主頭が並んだよう」の表現はぴったりだ。

そしてその理由として、
この地域が熱帯雨林地帯でヤシが多く、
貝葉(ヤシの葉)に鉄筆で刻み、
墨を入れて文字を記したため、
横線を引くと葉が裂けたのであろう、
と推測している。

前回のビルマ文字同様、
葉に書くことが、文字の形に影響しているようだ。

 

世界の文字の話、もう少し続けたい。

 

 

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コメント

面白い文字シリーズを続けていただき有難うございます。
また、前回の記事に書かせて頂いた拙いコメントにも暖かいお言葉をいただき有難うございます。
そして今回がタイ文字ということで、また楽しく読ませていただきました。
このタイ文字、私も少し勉強しましたが、本当に難解で、まるで暗号解読のようで、諦めてしまいました。
この中に出てくる、無発音文字の代表的な例が、タイの有名なシンハービール(singha beer) で、このsinghaはサンスクリット由来の獅子の意味ですが、このhaは無発音でタイ人は発音しません。ちなみにタイ人はこのビールをビア・シンと呼びますので、タイでこのビールを注文する際には、シンハービールではなくビア・シンと呼べば、店員の態度が少しだけ良くなることがあります。
インドは本当に言語・文字の宝庫ですね。インドには15の公用言語を、この記事で紹介されていた3つの文字を含む10の文字を使って表わしており、それがインドの紙幣に全て書かれています。
私は、訪れた国の小額紙幣を記念に持ち帰るようにしているのですが、インドの紙幣の裏(?)にはきちんと15の言葉が書かれていました。ちなみに他の国の紙幣を見て見ると、南北アメリカ大陸、ヨーロッパ大陸、アフリカ大陸の国のほとんどはアルファベットのみが記載されていて(ギリシャの旧紙幣はギリシャ文字が)、北アフリカから中東にかけてはアラビア語が使われています(イランはアラビア語に似たペルシャ文字でした)。
アジアは、本当にバラエティに富んでいて、タイ、ラオス、カンボジア、ミャンマーは母国語が使われ、ベトナム、インドネシア、フィリピンは基本的にはアルファベットが記載されています。マレーシア、モルディブ、ブルネイはイスラム国なので、アルファベットとアラビア文字の併記、スリランカはタミール語とシンハリ語が併記されています。少し面白いのが、シンガポールで、ここの紙幣には、国名として英語に加え、中国語、マレー語(アルファベットですが)、タミル語が書かれています。
この博覧会では中西さんが日刊新聞で調べられた大変貴重なデータが使われているようですが、それを元にこうして各国の紙幣を見てみるのも手軽で面白いなあと再発見できました。
ちなみに、中国の紙幣には勿論漢字が使われていますが、日本の紙幣も外国人が見れば、中国語と考えるんでしょうね。

Khaawさん、
興味深いコメントをありがとうございました。

>訪れた国の小額紙幣を記念に持ち帰るようにしている
なるほど。そんな見方ができるのですね。
紙幣を見ても、文字については
あまり意識したことがありませんでした。
これからは、思わずコレクションしてしまいそうです。
特にアルファベット以外の時は。

それにしてもインドの紙幣すごいですね。
10の文字で、15の言葉って。
それだけを手に入れるためにインドに行きたいくらいです。


タイ料理は大好きなので、ときどき食べに行くのですが、
いつもいつも「シンハービール」と注文しており、
疑ったこともありませんでした。

ほんとうにタイに行った暁には、
忘れずに「ビア・シン!」で注文してみたいと思います。

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