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2016年8月 7日 (日)

音だけを示す字がないと

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音だけを示す字がないと

- 漢語における外来語 -

 

講談社のPR誌「本」の連載をまとめた
高島俊男さんの
「漢字と日本語」 (講談社現代新書)

を読んでいたら、外来語について
ちょっと興味深い話があったので、
今日はその部分を紹介したい。

(以下、水色部は本からの引用)

 

【一語、一音節、一文字】

漢字は漢語(チャイニーズ)を表わす文字である。
漢語は一語が一音節、漢字はそれを一字で表わす。
つまりどの字も一語であって、
固有の意味を持っている


それを自由に組合わせて無数の表現が可能である。

まずは漢語のもっとも大きな特質を。
一語、一音節、一文字、
どの字にも意味がある、がポイント。

 

【音だけを示す字がない】

 しかしそれだけに、
他語の表記にはヨワい
俄然不器用になる。

それは、
字が一つ一つみな漢語の意味を持っていて、
単に音を示す字がないからである。

他語は、字が意味を持つという特性を捨て、
音だけの字として用い、取り入れるほかない。

日本語のひらがなやカタカナのように
音だけを示す文字がないため、
外からやってきた言葉に対して、
「音だけを写す」ことができないわけだ。

 

【字が意味を捨てた例:駱駝】

 たとえば駱駝。ラクダである。
音ラクタ(推定中古音。以下同じ)。

駱の字は昔からあって意味があったようだが、
ラクダが中国に伝えられてからは
「駱駝」二字ひとかたまりで
ラクダ専用になった


各一字が固有の意味を持たない。
二字で一語、ラクダである。
他の語のラクの音、タの音の表記に
使い回されることもない。
非能率な字である。

他にも、

 蟷螂 カマキリ 音タンラン
 蜻蛉 トンボ  音センテン
 蟋蟀 コオロギ 音シッシッ
 蜘蛛 クモ   音チチュ

などが「二字で一語をなす」、
一字では独立して意味も持ち得ない例として
紹介されている。

それにしても「その語専用の字」
他に使えない字、というのは
あまりにも効率が悪い。

こういうのと、漢語固有の小動物名、
蚊、蛇、蝉などとは明らかに語形が異る。

(中略)

これらの字はすべて形声字である。
二部分より成り、
一部分が意味領域を示す(馬、虫、草など)。
一部分が昔(多分原語音に近い音)を示す。

外来語が来るたびに、専用の文字を
作り続けるわけにもいかないだろう。

逆に、
英語のように「音の写し」しかできないと、
sushi(寿司) も judo(柔道) も
teriyaki(照り焼き) も miso(味噌) も
音のまま取ってくるしかないわけで、
実際、いまではそのままの発音が
英語としても十分通用する。

そもそも、
外来語を取り入れるのに、
「音の写し」以外に
どんな方法があるだろうか。

「pen」を「ペン」と表記することだけが、
他語を自分の言語に
取り入れる方法だろうか。

「どの字も一語であって、
 固有の意味を持っている。
 音だけを表す文字がない」
そんな漢語に外来語を取り入れる方法。

 

この話、もう少し続けたい。

 

 

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