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2016年4月 3日 (日)

サンゴが木のような形に成長するわけ

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サンゴが木のような形に成長するわけ

- 動物なのに植物のように -

 

前回、北海道新幹線開通の
ニュースを聞いて思い出した
36年前の青函トンネルの新聞記事の話
急に割り込ませてしまったが、
今日は、話が途中になってしまっていた
サンゴの話に戻りたい。

ちょっと間が空いてしまったので、
再開する前に、これまでの話を
簡単に復習しておこう。

ある海域に多くの魚が生息しているとき、
それは
「豊富な餌が、そこにある」
ということを意味している


自然界に餌がある、ということは
植物がある、ということと同義だ。

肉食、草食に関わらず、
食物連鎖のピラミッドを考えればわかる通り、
すべての餌は最終的には植物にたどり着くからだ。

ところが、魚が豊富なサンゴ礁には、
藻も、植物プランクトンも、
つまり「植物」が見あたらない。

植物プランクトンが
水中を浮遊していないからこそ、
水の透明度が高い、とも言えるわけで。

ではなぜ、
透明度が高いきれいな海のサンゴ礁に、
多くの魚が生息できるのか?


それは、サンゴの体内に
植物プランクトンの一種、
褐虫藻(かっちゅうそう)が共生しているから、
(前回)までの話。

引続き、

本川 達雄 著
「生物学的文明論」新潮新書

を読んでいきたい。
(以下水色部、本から引用)

 

サンゴと褐虫藻(かっちゅうそう)の共生。
前回は
サンゴ側のメリットをピックアップしたので、
今日は、
褐虫藻側のメリットを取り上げてみたい。

 

【メリット1:堅牢な石の家】

・・・
安全な家に棲まわせてもらえることです。

褐虫藻は、(中略)
ふらふら泳ぎ漂(ただよ)っていれば、
動物プランクトンに食べられる危険があります。

 サンゴは硬い石のコップをつくって、
その中に棲んでいます。

石の家は安全。

褐虫藻もその中に棲まわせてもらっていますから、
やはり安全です。

最初に浮かぶのはやっぱりコレ。
まずは物理的に守ってくれている。

 

【メリット2:刺胞(しほう)による保護】

 この家は硬いだけじゃなく、
さらに安全のための装備が備わっています。

サンゴはイソギンチャクやクラゲの仲間、
つまり刺胞(しほう)動物の仲間です。

この仲間はみな刺胞をもっています。
クラゲに刺されますよね。
この刺すのが刺胞です。

刺胞は100分の1ミリほどのごく小さいカプセルで、
この中から毒針が飛び出していって刺さり、
そうして、
動物プランクトンを捕まえて食べます。

 サンゴの家は石造りの上に、
刺胞という飛び道具まで備わっているのですから、
ものすごく堅固な要塞です。

「100分の1ミリのカプセルからの毒針」とは、
なんと小さな飛び道具だろう。

 

【メリット3:光合成をしやすい形に】

 サンゴは、より日当りの良い方向へと、
マンションを建て増ししながら成長します。
そうすると、褐虫藻の光合成量が増えるからです。

 サンゴの群体の形には、
木の枝の形や葉っぱの形をしたものが多い
のですが、
葉っぱのような平たい形は、
表面積が広く、たくさんの日光を集めやすい形です。

木の枝の形は、丈が高くなり、
海底に固着している面積あたりにすると、
より多くの日光を集められる形です。

サンゴは動物ですから、
木や草の形をとる必然性はない
のですが、
褐虫藻にたくさん日光が当たるように配慮して、
木や草のような形になっているのです。

動物であるサンゴが
植物のような形に成長していく
のには、
こういう背景があったのだ。

 

【メリット4:紫外線を吸収】

 熱帯のギラギラした太陽は、
藻類にとって両刃の剣です。

光合成に十分な光を与えてくれますが、
有害な紫外線も強い

赤道上空では紫外線を吸収するオゾンの層が薄いし、
海水の層も紫外線をあまり吸収してくれません。

 生物にとって、紫外線は有害です。
殺菌灯に紫外線ランプが使われているのはこのためです。
植物の場合、強い紫外線が当たると葉緑体が破壊され、
光合成できなくなってしまいます。

 サンゴは紫外線を吸収する
フィルター物質(マイコスポリン様アミノ酸)
をもっています。

これを褐虫藻の上に置いてやる。
すると紫外線がカットされた後の光が
褐虫藻に当たる
ので安全です。

サングラスまでかけてあげているような
手厚い保護。

 

【メリット5:強い可視光の調節】

・・・サンゴによっては、
紫外線のみならず強い可視光をもカットする
物質をもつものがいます。

この物質は蛍光タンパク質で、
褐虫藻より上側に存在していて、
光を反射したり、
光をより波長の長い安全なものに
変換したりすることによって、
下の褐虫藻を守ります

同じ蛍光タンパク質を、
違った形で使うサンゴもいる。


【メリット6:弱い可視光の調節】

 サンゴが見られるのは水深の浅い場所です。
太陽光は水中を進んで行くうちに、
どんどん吸収されて弱まります。

水深100メートル以深ではサンゴはみられません。
光が弱すぎて褐虫藻が光合成できないからです。

 浅いところのサンゴでは、
蛍光タンパク質は褐虫藻より上側にあるのですが、
より深いところのサンゴでは逆で、
蛍光タンパク質が褐虫藻の下に位置しており、
いったん褐虫藻を照らして
通り抜けてきた光を反射して
下から再度褐虫藻を照らし返します


こうして少ない光を
より有効に使えるようにしているのです。

・・・

 ちなみにこの蛍光タンパク質は、
下村修先生がクラゲで発見された
GFP(この発見でノーベル賞をとられました)
の仲間
です。

強い光を弱め、弱い光を強める、
共に生きているというよりも、
褐虫藻のために生きているのではないか、とさえ
言いたくなるような貢献度。

 

【メリット7:栄養面での恩恵】

 植物は光と水と二酸化炭素があれば、
主食である炭素化合物を
つくりだすことができますから、
食べる心配はほとんどないのですが、
それ以外の栄養素については、
やはり体外から取り入れねばなりません。

人間が植物を栽培する場合には、
肥料として与えてやることになります。

 肥料の三大要素が、
窒素・リン・カリウムです。

ただし海水中にカリウムはたくさん含まれていますから、
褐虫藻にとっては、窒素とリンの二つが問題。

窒素はタンパク質をつくるのに必要ですし、
リンは、遺伝子であるDNAをつくるのに必須
です。

 リンと窒素。サンゴ礁や、
サンゴ礁をとりまいている外洋の海水中には、
これらがあまり含まれていません。
だから藻類や植物プランクトンの生育が悪いのです。

 サンゴは動物プランクトンをつかまえて食べ、
リンや窒素を手に入れます。
食べたら排泄しますが、
排泄物にはリンや窒素が含まれてきます。

その排泄物を
褐虫藻はサンゴの体の中で直接貰い受けます。
直接ですから無駄が出ません。

排泄物からとはいえ、
まさに無駄のないリサイクル。

 

【メリット8:二酸化炭素】

 サンゴが捨てたものを褐虫藻が利用するのは、
リンや窒素だけではありません。

サンゴが呼吸の結果吐き出す二酸化炭素を、
褐虫藻は光合成の原料として利用します

・・・
 ただしこういう言い方をすると、
「どうせ捨てるのだから、
 お使いになるならどうぞ」
というスタンスでサンゴは二酸化炭素を
渡しているように聞こえてしまいますが、
じつはそんなものではないようです。

サンゴは海水中から、
わざわざエネルギーを使って
二酸化炭素を体内に取り込んで、
褐虫藻に渡すこともしています

 

ザックリまとめただけでも、
褐虫藻にとってのサンゴとの共生のメリットは、
上に並べた通り8つもある。

ここまでくると、共生というよりも
「ひとつの生物」と言ってもいいのではないか、
というレベル。

本川さんは、こんな表現を使っていた。

サンゴは、日当り良好、
紫外線カットフィルター付きの
サンルーフのあるマンションに、
褐虫藻をすまわせてやっているのですね。

この良好な共生関係が、
なぜ豊かな生物環境を生むことになるのか、
この話、もう一回だけ続けたい。

 

 

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