NODA・MAP 第20回公演「逆鱗」
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NODA・MAP 第20回公演「逆鱗」
- 作品の予習ってなんだ -
NODA・MAP 第20回公演「逆鱗」
を観てきた。
主演松たか子さんは、
09年の「パイパー」以来7年ぶり。
瑛太さん、井上真央さんは
13年の「MIWA」以来3年ぶり。
そして、そして
04年の「透明人間の蒸気」で
宮沢りえさんとともに
圧倒的な存在感を放っていた阿部サダヲさんが、
12年ぶりにNODA・MAPに帰ってきた。
それに、池田成志さん、
満島真之介さん、銀粉蝶さん、らも加わり、
まさに贅沢なキャスティング。
3年ぶりの新作に
期待が高まらないわけはない。
物語は、
NINGYO役の松たか子さんの
こんな美しいセリフから始まる。
・・・
それがたぶん、あなた方にとって
「泣く」ということだ。
鳥も鳴く。
虫も鳴く。
でも魚は泣けない。
泣くためには空気がいる。
あなたたちが
生きるために空気が必要なように、
泣こうと思った人魚は気がついた。
海面に顔を出して
初めて泣き声を出すことができる。
けれども海の底から、
海の面(おもて)までは、
塩で柱ができるくらい遠かった。
だからやっと海面(うみづら)に出て、
泣き声を出せたその時は、
嬉しさのあまり、
人魚の泣き声は甘く清(さや)かな
歌声に変わった。
・・・
なんで私は歌っていたの?
なんで私は泣こうとしたの?
この最初のモノローグに、
物語のすべてが詰まっている。
主な舞台は、水族館と海底。
人魚ショー実現にむけた
やり取りから始まった話は、
後半、
思いもしなかった方向に展開していく。
とはいえ、前半は例によって
言葉遊びも健在で、
チクリとした皮肉とともに、
笑えるシーンも多い。
はい。
「人魚ショー」でも
「イルカショー」でもない、
それでいて人魚は実在するのか、
その根源を問う
「人魚はいるか?ショー」というのは。
イルカ君:
なんですかそれ。
サキモリ:
だからイルカ君、
いきなりイルカショーをなくすわけじゃない。
むしろ、あれ?
人魚はいるか?ショーって、
人魚はいるの?
それとも本当はイルカショーなの?
どっちなのって、
もやもやっとしているうちに、
人魚ショーに変わっていく。
きわめて日本的でしょう?
で、このあと話は・・・
と書こうとしていたところ、
2016年2月11日
TBS系「NEWS23」で、
作者の野田秀樹さんが
膳場貴子さんのインタビューに応じている、
という情報が入ってきたので
ちょっと見てみた。
ついていたタイトルは
「説明過多」な時代に…
下記HTML5のaudioタグによるMP3 Player
(ブラウザによって表示形式は違うようです)
説明してもらわないとつらい、とか
いうことになってきて、
まぁ、特に今度の芝居なんかも、
わざと内容を伏せていたンですね。
観に来た人が何の話が始まるのか、
全くわからない。
その衝撃って、やっぱりぜんぜん違って。
やはり、作るっていうのは、
それを観た人との
瞬間の出会いのはずなんで。
よく、お客さんの中で、
今回、予習をしないで来てしまいました、
みたいな言葉を言う人がいるのね。
予習ってなんだよ。
作品の予習ってなんだ。
今、これから見せるのに、
とか思うんですよね。
膳場貴子:
あ、でも言っちゃうかもしれない。
野田秀樹:
多いですよね。
膳場貴子:
もう、そういう姿勢に
なっているかもしれないですね。
野田秀樹:
ものを先にガードしておかないと
怖いみたいな。
なるほど。
もともと野田さんは、
ここでも紹介した通り、
「観た時には完璧に理解されず、
『あれはなんだったんだろう』
ということがあっても、
それをため込んで
持っていてくれればいい」
と言っているくらいで、
自分の作品をわかりやすく解説する
なんてことはしないけれど、
今回、
事前情報が少なかったのも、
まさに、意図的だったということか。
というわけで、作者の意図を尊重し、
まだ公演中ということもあり、
これ以上、
物語の内容について書くことは
控えておこうと思う。
興味のある方は、ぜひ劇場で体験下さい。
劇場のみでのトリップ感、お薦めです。
まさに、一席の空きもない、
超満員状態でしたが、
全公演、当日券があるのも
NODA・MAPのありがたいところですので。
最後に、当日券、
または何らかの方法で、
これからチケットを
ゲットしようとしている方に
ひとつだけアドバイスを。
メインキャストだけでなく、
アンサンブルがすばらしいのも
NODA・MAPの魅力のひとつですが、
今回も期待を裏切りません。
ただ、演出の関係もあって、
できるだけセンタ、
つまり正面で観たほうが、
その効果がわかりやすいかも。
舞台から遠くても、
中心に近い方を優先、
をお薦めします。
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