CAUTION(注意しろ!)のスペイン語訳
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CAUTION(注意しろ!)のスペイン語訳
- メキシコとの国境近くで -
今年11月のアメリカ大統領選挙に向けて、
過激な発言を続けている共和党のトランプ氏。
先日も、移民政策を巡り、
「隣国のメキシコからの不法移民を防ぐために
国境に壁を築くべきだ」
などとコメントしてニュースになっていた。
こうした発言に対して、メキシコを訪れた
ローマ法王のフランシスコ法王は、
バチカンに帰る機内で記者団の質問に答え、
「壁を築くことを考え、
橋を架けることを考えない人は、
キリスト教徒ではない」
と述べたという。
(2016年2月19日のNHKニュース)
「メキシコからの不法移民」
という言葉を聞いて、米国駐在時に目にした、
ある標識を思い出した。
米国の地図を見るとわかるが、
北はカナダとの国境から
南はメキシコとの国境まで、
まさに南北を貫いて、
米国の西海岸に沿うように、
「I-5」と呼ばれる
長い長い高速道路が走っている。
I-5の「I」は「interstate」、
州を結んで走る高速道路のことだ。
「5」は、5号線を表す数字。
interstateの数字は
2桁まではPrimaryと呼ばれて一級扱いだが、
数字そのものにも簡単な意味がある。
奇数なら南北、偶数なら東西、
に走っており、5で割り切れると、
合衆国を縦断または横断する。
つまり、I-5と言うだけで、
合衆国を南北に縦断する道路の一本、
ということがわかる。
(ちなみに、東海岸沿いに
南北を縦断しているのはI-95だ)
このI-5を、ロサンゼルスから
メキシコとの国境に位置する都市
サンディエゴに向けて、
つまり南方向に走って行くと、
サンディエゴの手前あたりから、
道路沿いに、
この標識が目につくようになる。
父と母、それに子。
なんという絵だろう。
道路を渡ろうと飛び出してくる
家族がいるかもしれないから
CAUTION(注意しろ!)
という意味だ。
道路と言ったって、
片側だけで4車線から6車線もある高速道路で、
もちろん信号もなく、
時速75マイル(120km/h)程度で
車がひっきりなしに走っている。
しかも、
ある区域は沙漠のような荒野の中だし、
ある区域は中央分離帯にも
柵が設けられたりしている。
いったいこの道を
どうやって、しかも子連れで
渡るというのだろう。
おそらくは、
メキシコから米国への不法入国者たち。
家族で、ということもあるということか。
まさに命がけで入国してくる人達がいる。
標識は、場所によっては、
こうなっているところもあった。
「PROHIBIDO」
メキシコの公用語、スペイン語だろう。
スペイン語を知らなくても、
英語のprohibit(禁止する)が連想されるので、
運転しながらでも、意味はすぐにわかった。
つまり、
高速道路を強引に渡ろうとする家族について、
英語が読める運転中の米国人には
CAUTION(注意しろ!)と呼びかけ、
スペイン語が読めるメキシコ人には、
PROHIBIDO(禁止する)と呼びかけている。
CAUTIONをスペイン語に翻訳しているわけではない。
「禁煙」の下に「No Smoking」
と書いてあるような2言語表記とは
全く違う意味を持つ2言語表記。
2言語表記の裏には、
ときによって、こんな背景もあることを、
教科書からではなく、
実体験として知った瞬間だった。
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