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2015年11月 1日 (日)

「日本数寄」のフィルター

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「日本数寄」のフィルター

- 「かさねの作法」の理解に向けて -

 

雑誌としては半年ほど前の号になってしまうが、
雑誌「pen」の2015年4月15日号 No.380

「世界に誇るべきニッポンの100人」という
特集をしていた。

そこに、

「日本数寄」のフィルターこそが、いま必要だ。
という題で編集工学研究所所長の
松岡正剛さんが文章を寄せていた。
   (以下水色部、そこからの引用)

松岡さんらしいキーワードが詰まった、
示唆に富む内容だったので少し紹介したい。

どのキーワードも
ひと言で説明できるような簡単なものではないが、
忘れたくない言葉が多いので、
自分自身への備忘録代わりに。

【キーワード 「土発的」

 誰もがどこかで「世界に誇りたい日本人」を
待ち望んでいる。それは、そうだろう。

それはよくよくわかるのだが、この気持ちを
誰をも納得させる人選で満足させることは、
いまや相当、難しくなっているとも言わざるをえない。

(中略)

 なぜ、こんなふうになったのか。
世界と日本の関係を
グローバルスタンダードの基準ばかりで見たり、
外からの評判ばかりを
気にしているせいではないかと思う。


ノーベル賞や売上げや金メダリストや
国際コンペの入賞者を自慢するのはかまわない。

しかし、日本人が日本人を誇るにはそれとは別の、
普段からの価値観が
土発(どはつ)的に充実している必要
もある。

土発(どはつ)的とはどういうことだろう?
ここには、こんな説明があった。

土発的アプローチ

  「土発」とは、土着のように
その土地に根を張ることを目的とするのではなく、
いまいる場所を軸足とし母胎としながらも、
ヨコにもソトにも事業を展開し飛躍する
こと。

定住的でありつつ越境的なのである。
いまいる場所は本来、他の土地にはない
固有性または特異性をもっている。

土発的アプローチは、
遠くに憧れる前に、近場を冒険し、
そこにひそむ特異性を
新鮮に発見するところから始まる。

 

【ジャズもビザも土発的】

 日本は日本人が誇る価値観や職人の面目を、
もっともち出していいはずである。
その価値と面目に世界を巻きこんでいい。

仮に無名でもかまわない。
それが世界に知られていない藍染や截金(きりかね)や
尺八でもかまわない。
日本語だけの文楽や落語や演歌歌手でもかまわない。

アメリカのジャズやイタリアのピザや
スコットランドのカーリングは、
土発的なものでありながら、
それでも世界を席巻したのだ。

 

【キーワード 「産土(うぶすな)」

 ところが、日本人はいつしか
ソトヅラを気にするようになった。
私は経済大国を
標榜(ひょうぼう)するようになってから、
特にそうなってしまったと見ている。

これで産土(うぶすな)のカを見失った。

産土とは、生まれた土地の守護神。
Wikipediaには、こんな説明がある。

産土神は、神道において、
その者が生まれた土地の守護神を指す。

その者を生まれる前から
死んだ後まで守護する神とされており、
他所に移住しても
一生を通じ守護してくれると信じられている。

 

「カワイイ」だけではない】

また、何であれ
「カワイイ」としか褒めなくなってから、
こんなふうになってしまったとも見ている。

かつての庶民には
「粋」も「通」も「お侠(きゃん)」も
「いさみ」も「婀娜(あだ)」もあった
のだ。
なんでもがカワイイだけではなかったのだ。

 

では、われわれの自信を取り戻すには、
どうしたらいいのだろうか。

【キーワード カサネ、アワセ、キソイ
       見立て、本歌取り
       もてなし、ふるまい、しつらい

・・・
「日本という方法」を
時代をまたいで徹底的に列挙して、
その中から輝きのあるものや
考え方を見極める作業に
取り組むべきだろう。

そこにはカサネやアワセやキソイの技法、
見立てや本歌取りの方法、
「もてなし」と「ふるまい」と「しつらい」を
合致させてきた秘密がいっぱい待っている


この見方を取り戻すべきだ。

「かさねの作法」については、松岡さん自身が、
ここに詳しく書いている。

 

【クリエイティビティと
 オリジナリティの魔法? 呪縛?】

これらが見えにくくなったのは、
われわれがうっかり
クリエイティビティとオリジナリティの魔法に
かかりすぎたから
だろう。

 しかしグレン・グールドが言ったように、
クリエイティビティとは「熟考された逸脱」にしかなく
ジャン・コクトーが言ったように、
オリジナリティとは業界評価にすぎないことも
少なくなかったのである。

 

【キーワード 「うつし」

 日本にはもともと「うつし」という方法が貫いていた。

これはたんなる模倣なのではない。
それは「写し」でも「映し」でも「移し」でもあって、
一見するとクリエイティビティや
オリジナリティに背いたもののように見えるけれど、
そうなのではない。

伊勢の式年遷宮がそうであるように、
利休茶碗に多くの「うつし」があり、
和菓子や日本料理に多くの「見立て」があるように、
そこには独特の技能や芸能の継承があった
のである。

 

【そして最後のキーワード 「数寄」

 これはまとめれば「数寄」のセンスというものだ。

数奇とは何かを透いて漉いて、鋤いて梳いて、
好きの極みに達していくことをいう。


何を数奇するのかといえば、日本の本来と将来を貫いて
「日本数奇」にする。

いま、われわれが誇りたいのは、
この日本数奇のすぐれ者たちなのである。

日本が世界に誇りたい日本人は、
日本人が互いに誇りうる日本人を選ぶ
「数寄のマルチフィルター」
によってこそ、見えてくる。

    (はま注:数寄と数奇の混在は原文のまま)
     

 

もう一度、書いてしまおう。

土発(どはつ)的、産土(うぶすな)、
カサネ、アワセ、キソイ、
見立て、本歌取り、
もてなし、ふるまい、しつらい、
そして、数寄。

ときどき見直したいキーワードばかりだ。

 

 

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