宇宙を走る ふたつの光
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宇宙を走る ふたつの光
- 過去はこれから -
薄紅葉(うすもみじ)と
シャッフルしてもトランプである
では
俳句と短歌に関するネタで書いた。
短歌続きでもう一首紹介したい。
紹介の前に、唐突だがちょっとだけ宇宙の話を。
太陽系に一番近い恒星は
ケンタウルス座α星で約4.3光年離れている。
その次が
バーナード星で6光年。
6光年ということは、光の速度で進んでも、
バーナード星までは6年かかるという意味だ。
逆にバーナード星から地球を眺めている人は、
今、この瞬間、
地球が6年前に反射した光を見ていることになる。
つまり、超高倍率の望遠鏡で
バーナード星から地球の、
たとえば日本の東北地方を眺めている人は
東日本大震災「発生前」の
東北地方を見ている、ということになる。
震災も津波も、バーナード星の人にとっては
「これから」目撃することになる
まだ起こっていないことなのだ。
もう少し太陽系から離れてみよう。
北斗七星を構成するおおぐま座のデルタ星は、
約80光年離れたところにある。
同じように、そこから地球を、
たとえば日本を眺めている人は、
まだ戦前の日本の姿を目にしている。
もちろん原爆も投下されてはいない。
宇宙の広大さ、
光の到達による時間の不思議さ、
こんな大きなテーマに
残酷な兵器への思いまで込めて、
それをたった31文字で読みきった人がいる。
現代歌人協会賞を受賞した
短歌集『光弾』(雁書館)から。
おそらくは今も宇宙を走りゆく
ふたつの光 水ヲ下サイ
戦後70年談話が発表された今年2015年、
広島と長崎のふたつの原爆の閃光は
ようやく70光年先の星にまで到達した。
デルタ星に届くのは10年後だ。
70光年よりも離れた星の人々は、
「これから」原爆を目撃することになる。
そして、その光は、
その後もさらに宇宙を走り続ける。
ふたつの光 水ヲ下サイ
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