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2015年9月27日 (日)

薄紅葉(うすもみじ)

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薄紅葉(うすもみじ)

- 見えなかったものが見えてくる -

 

先週の大型連休は、浅間山を中心に、
長野県軽井沢、群馬県嬬恋のあたりを
小さくゆっくり回ってきた。

国の地域住民生活等緊急支援交付金で発行された
「群馬プレミアム宿泊券」を利用したので、
宿泊代は半額。

天気にも恵まれ、露天風呂がほんとうに気持ちよかった。

山の気温は、もちろん東京よりかなり低いが、
さすがに紅葉にはまだ早い。

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緑の中をのんびり歩く。

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せせらぎの音がなんともここちよい。

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それでも、ちょっと高いところまで来ると、
葉の色がわずかだが変わり始めている。

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浅間山の美しい稜線を遠くに見ながら、
ふと、「薄紅葉(うすもみじ)
という言葉を思い出していた。

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俳人の黛まどかさんが、
脳科学者の茂木健一郎さんとの対談
の中で
まさにこの言葉を取り上げている。


「あとね、もうひとつ。
 この前その話したかしら?
 『薄紅葉(うすもみじ)』」

茂木
「薄紅葉って何?」


「薄紅葉っていう言葉があるんですよ。

 紅葉の始まり、それこそ
 ややに移ろいかけた、色づき始めた紅葉を
 薄紅葉、薄い、まだ淡い紅葉ですよ。
 って言うンですけど、

 何年か前に
 私、俳句をやらない友人と一緒に
 長野のほうに旅に行って、
 山を前にしてその友人は、

 『あら、まだぜんぜん紅葉してないわね

 って言ったンですよ。
 私は実はその時、ほぼ同時に心の中で

 『あっ、もう薄紅葉が始まっている』

 って思ってたンですね。
 で、その子に、

 『あのね、
  実は俳句には薄紅葉っていう言葉があってね、
  ほらあの辺とかあの辺とか、
  ややに移ろい始めているでしょ、
  ああいうのを薄紅葉って言うのよ』

 っていう話をしたら、
 まぁ、おせっかいなんですけど、

 『あ、ほんとだ』

 で、その次の年からね、
 薄紅葉が見えるようになった

 って言うンですよね。

 言葉を知らないと、

 『まだぜんぜん紅葉してないね』

 なんですけど、
 言葉を知ることで、

 『もう薄紅葉が始まっている』

 それまで見えていなかったものが見えてくる

 っていうその愉しさ、その豊かさ。

 それから、やっぱり、ずーっと日本人が
 ほんとにややに色づき始めた
 もちろん全山真っ紅というのもきれいですよ
 そりゃ文句なく、

 でも、それよりももしかしたら

 むしろ『薄紅葉』とか
 あるいはその『紅葉かつ散る』とか、
 『散り紅葉』とかね、

 照っている紅葉だけじゃなくて、終わりかけ、
 始まりから終わりまで
 全てに名を感じている、っていう
 そこに日本人の美意識があるわけですよ」

茂木
「すばらしい」

 

それはもちろん言葉に限らない。
何かを知れば、
それまで見えなかったものが見えてくる。

学ぶことの愉しさは、
まさにこの点にあると言ってもいい。

 

 

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