2015年夏 志賀高原アルバム
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2015年夏 志賀高原アルバム
- 高山植物と渋温泉の巡浴と -
急に涼しくなってきたので、
一ヶ月前にはあれほど暑かったことがウソのようだが、
8月11日-12日、
酷暑と呼ぶにふさわしい東京の蒸し暑さを逃れて、
長野県志賀高原に夫婦で行ってきた。
大自然の中、カメラ片手に気ままなトレッキングを
楽しむことが主な目的。
冬、つまりスキー場でしか知らなかった志賀高原だが、
行ってみると夏もいい。
涼しくて、人が少なくて(混んでいなくて)、
歩くコースが多彩で、とこちらの希望を満たしている。
高山植物を楽しむには
もうちょっと早い時期の方がいいと思うが、
それでも多くの植物に出逢うことができた。
記録と整理を兼ねてちょっとまとめておきたい。
(スマートフォンからのアクセスを意識して
写真を横に配置するレイアウトは避けることにする。
縦にながーくなってしまいますがご容赦あれ)
スキーゲレンデは夏の間、花畑となっている。
たとえばここ。
うっすら紫色に見えているのはヤナギラン。
近くで見るとこんな花だ。
【ヤナギラン】
下から順に花が開き、
咲いた順に種(たね)になっていく。
となりの斜面を見ると、
高山植物の中をトレッキングしている
我々と同じような二人組が小さく見える。
【シシウド】
この時期の一大勢力。
大きくて目立つため、あちこちで目にする。
【コバギボウシ】
こちらも形や色が認識しやすく、すぐに目につく。
逆に見つけにくいのは、たとえば
【モウセンゴケ】
食虫植物。
葉の粘毛から粘液つまりネバネバの液体を分泌しており、
それで小さな虫を捉える。
紅葉と言っていいのか、
葉が赤くなっているものもあるが、
いずれによせ注意して探さないとみつからない。
モウセンゴケと名前はコケだが、
実際はコケではない。種子植物。
【ミズナラ】
いわゆるドングリのなる木のひとつ。
ドングリは探してみてもさすがにまだ赤ちゃん。
【ミズナラと揺籃(ようらん)】
そのミズナラの葉の一部が丁寧に巻かれている。
葉がくるくると巻かれている部分は、
オトシブミという昆虫の揺籃(ようらん)、
つまり「ゆりかご」だ。
中に卵が産みつけられていて、
孵化すると幼虫は
そのまま揺籃になっている葉を食べて育つ
というエコ設計。
それにしても「オトシブミ」とは
なんと風流な名前だろう。
葉を巻いて作った揺籃が落ちているようすを、
「落とし文」になぞらえるとは。
他にも、虫がよく寄っていたのは
【ノアザミ】
蜂の大好物なのか離れない。
【ノアザミ】は蕾も美しい。
【ハンゴンソウ】にも蜂や蟻がいっぱい。
【ニガイチゴ】
虫や鳥は甘いものからさっさと食べるので、
残ったものは皆「苦い」、とは本当か。
蓮池には、蓮ではなくて...
【ヒツジグサ】がたくさん咲いている。
未(ひつじ)の刻、
つまり午後二時に咲くからヒツジグサ、
と呼ばれるらしいが、実際に咲いている時間は
かなり長い気がする。
湖畔、というか沼の回りには
【クサフジ】という
マメ科の植物をよく見かける。
【ウメバチソウ】
小さくて可愛らしい白い花が印象的だ。
【ウルシ】は皮膚の敏感な人は要注意。
「かぶれる」植物の代表格。実をつけている。
紅葉時はきれいに色づくので、
つい触ってしまい・・・
【トリカブト】
花の形は名前の通り、頭にかぶる鳥兜。
舞楽や神社での民族芸能を思い出す。
日本三大有毒植物のひとつ。猛毒に要注意だ。
【ヨツバヒヨドリ】
葉が4枚
輪生(同じところから輪を描くように広がる)するから
ヨツバというようだが、
実際にはきっちり4枚で揃っているわけではなく、
その枚数にはかなりばらつきがある。
【コウゾリナ】 黄色い花のほう
黄色い花はかわいいが、茎には剛毛が。
髭(ひげ)を剃るという意味で「顔剃菜」から
転訛したという説もある。
声に出して読んでみよう。
「コウゾリナ」と「顔剃菜」
日本語はおもしろい。
【ノリウツギ】
花だけを見るとガクアジサイを思い出す。
【オオバセンキュウ】
小さな花が大きく集まっている。
【きのこ 3種】正式名称不明
きのこの持つ「妖しさ」はどこから来るのだろう。
【ヤマオダマキ】
「オダマキ」には「ヤマ」と「ミヤマ」があるが
こちらは「ヤマ」のほう。
【メマツヨイグサ】
大マツヨイグサに対して花が小さめなので
雌マツヨイグサ。
マツヨイグサは「待宵草」
「夕方に咲いて宵を待つ」とは
これまたなんとも味のある名前だ。
【ホタルブクロ】
子どもがこの花にホタルを入れて遊んだからとか、
提灯に似ていているので「火垂(ほた)る袋」からとか、
名前の由来は諸説あるようだが、
覚えやすい、というのが素人には一番うれしい。
【ネジバナ】
名前の通り捻(ねじ)ったように花が咲く。
【ワラビ】 なぜか、ぽつんと一本。
【キンミズヒキ】も場所によっては群生。
名前は、熨斗(のし)袋の水引から。
水引にしてはちょっと太いけれど、
これを金色の水引に見立てるとは・・・
手前一面の黄色はキンミズヒキ。
美しい景色に思わず立ち止まってしまう。
今回の写真の中ではお気に入りの一枚。
トレッキングコースも人が少なくていい。
斜面を歩くと、かなり大きな木が
揃って大きくカーブしているところがある。
雪の重さのせいだろうか。みごとなカーブ。
写真左手が高くなっている斜面の途中。
一沼のそばを見下ろして。
一沼の静かな景色。
ヒツジグサが湖面に広がる。
ダイヤモンド湿原内も木道があり
歩けるようになっている。
丸池の湖面のアメンボも気持ちよさそうにスイスイ。
もちろん植物だけでなく、昆虫も元気だ。
山の天気は変わりやすいが、
雨のあとに葉や実に残る水滴はほんとうに美しい。
おいしい空気や美しい景色はもちろんだが、
「土の上を歩く」という、ごくごく基本的なことが、
一番強く、自然との一体感を感じさせてくれる気がする。
同時にそれは、
体の芯からリラックスできることでもある。
土と水とに触れるある種の幸福感。
素人トレッキングではあるけれど、山歩きは楽しい。
帰路、渋温泉に寄ってみる。
【渋温泉:横湯川】
目的は、
金具屋の斉月楼(さいげつろう)を見ること。
昭和11年に完成した、木造4階建ての建物。
伽藍、数寄屋、遊郭といった
さまざまな日本建築の要素を取り入れた
非常に独創的な建造物。
【斉月楼】
映画「千と千尋の神隠し」の
湯屋のモデルではと言われている。
の説明書きも出ているが、
モデルの話はほかの建物でも聞いたことがあるので、
まぁ、どちらでもよい。
そういったことと関係なく
木造4階建ての建物自体を楽しめる。
いわゆる日本旅館で、
宿泊客の出入りもけっこうある。
というわけで、斉月楼目当てで寄ったのだが、
行ってみると渋温泉は、
温泉街自体を楽しめる雰囲気のある街だった。
歩いて回れる小さな温泉街に、
外湯(共同浴場)が九湯もある。
宿泊客は、浴衣に番下駄という姿で、
九湯を巡浴。
各湯のスタンプを手拭いに押しながら回る。
【二番湯】笹の湯
九つの湯は、九(苦)労を流し、
厄除け、安産育児、不老長寿のご利益があると
根強い人気があるらしい。
【八番湯】神明滝の湯
【三番湯】綿の湯
九つのスタンプを集めて、
最後にこの上にある高薬師さんで
印受すると満願成就。
ちょうどお盆と重なったため、
家の前で、小さく火を焚いている家が何軒もあった。
聞くと白樺の乾いた皮を燃やしているらしい。
老舗のまんじゅう屋で、
おやきと温泉まんじゅうを買うときに話を聞くと、
このあたりでは、迎え火時、
お墓と家の前で火を焚くらしい。
お盆のころ、
きゅうりとナスで馬と牛を作るのは、
迎え火時には馬、つまり早く来てほしい、
送り火時には牛、つまりゆっくり帰ってほしい、
の気持ちを表現しているのだとか。
旅の最後は善光寺参りへ。
夏の一時的な雨はちっとも気にならない。
【善光寺 本堂】
【善光寺 仲見世通り】
本堂も迫力のある大きな建物だが、
山門も見応えがある。
【善光寺 山門(三門)】
短い旅の絞めとなる
山盛りの蕎麦を食べながら
以前訪問した際、山門近くの蕎麦屋の方が
言っていた言葉を思い出していた。
「善光寺は、
浄土宗と天台宗との関わりが深いけれど、
そもそもは宗派を問わない
誰でもOKの庶民のお寺なンです。
だから、門はあるけれど塀はないでしょ。
どこからでも入れるのが善光寺さんなンです」
何度来ても、
善光寺まわりの空気はどこかやさしい感じがする。
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志賀高原のトレッキング涼しそうで素敵です。
私も志賀高原は、スキーで訪ねたことはありますが、夏は訪ねたことがなくて楽しく写真を見させていただきました。
私の記事にもコメントしていただきましたが、ちょうど私が札幌の北大植物園でトリカブトの写真をとっていたころに、hamaさんも志賀高原でトリカブトをご覧になっていたのですね。
でも、hamaさんのトリカブトのほうが野生味があって味があります。
それに、山歩きのあとはやはり温泉ですね。
投稿: khaaw | 2015年8月31日 (月) 22時51分
khaawさん、
コメントをありがとうございます。
まさに野生のトリカブトでした。
ゆっくりのんびり緑の中を歩いていると、
肺の中の空気がすっかり入れ替わったような感じがして、
まさに身も心も軽くなります。
次は紅葉のころでしょうか。
どこに行こうか考えている時もまた楽しいものです。
投稿: はま | 2015年9月 1日 (火) 23時23分