「ここで働きたいとは思わない」
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「ここで働きたいとは思わない」
- 3日やそこら休める社会に -
先日、欧州、数カ国の人と
日本についていろいろ話をする機会があった。
皆さん、日本のことをベタ褒め。
どこに行っても、清潔だし、安全だし、
電車は正確だし、
商品は多彩で溢れているし、
人はちゃんと列を作って並ぶし、
店員は笑顔で親切だし、
約束は守るし、相手のことを気遣うし。
まぁ、お世辞もあるだろうし、
日本で巡りあった人が、たまたまよかった、
ということもあるとは思うが、
褒められれば悪い気はしない。
ただ、一方で、
皆が口を揃えて言ったのは
「日本はいい国だし、
住んでみたいとも思うけれど、
ここで働きたいとは思わない」
だった。
長時間労働、長時間通勤、満員電車、
残業の多さや休暇の少なさ、
仕事自体のアウトプットよりも、
会社への忠誠心を見せることのほうが、
評価される傾向にある違和感。
体調が悪ければ、
本人のパフォーマンスは落ちるし、
場合によっては近くの人に
感染することもあるのだから、
仕事の成果を中心に考えれば、
どう考えてもちゃんと休んだほうがいいのに、
すぐに休まずに、無理して働くことが
「がんばって働いている」と
思われる価値観の不思議さ。
その場でいちいち確認を求めてきたが、
日本の労働環境・価値観・倫理観の情報は、
興味深い対象として、かなり詳しいことまで
伝わってしまっている。
そりゃ、ぜんぜん違うよ、と
完全否定出来ないところがつらい。
それにしたって、
「ここで働きたいとは思わない」は
あまりにも悲しいじゃないか。
ちょうど、一昨日(7月24日)から苗場スキー場で
2015年のフジロックが始まった。
規模も多彩なアトラクションも
他のフェスとは一線を画す大イベントだが、
このフジロック、以前
「3日間通し券」しか発売せずに
話題になったことがある。
そのことについて、
「フジロックフェスティバル」を
1997年に始めた会社、スマッシュの社長
日高正博さんはこんなコトを言っていた。
2006年7月22日の朝日新聞の記事から紹介したい。
(以下水色部は記事からの引用)
日高さん、
その後は
近くの公園で寝泊まりするホームレス同然の生活だ。
ただ、都会の景気は右肩上がり。
「工員求む」と掲げた働き口には事欠かず、
寮にも入れた。
(中略)
部品工場、氷屋、野菜市場、運転手・・・。
全国を転々とし、21歳までに100近い仕事を経験した。
というすごい経歴の持ち主だ。
日高
ほんとにきつい仕事をさせている。
でもそれを通して、
よそから引き抜かれる人間をつくりたい。
そうすれば会社がつぶれても大丈夫だから。
なんておもしろいことも言っている。
で、3日間通し券について。
日高
日本の夏って高温多湿なのに、
みんな無理やり会社に行き、
まとまった休暇はなかなかとれない。
生意気なようだけれど、
「休みを取りなさいよ」と言いたい。
いまだにロックフェスに行くために
会社を辞めなきゃいけない子がいる。
音楽好きな人たちが、
3日やそこら休める社会にならないと。
生きるために仕事はしないといけないし、
そこにはつらいことばかりではなく、
達成による充実感ももちろんある。
それでも人間は、
仕事をするために生きているわけではない。
「3日やそこら休める社会にならないと」
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