「妙正寺川」歩き (1)
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「妙正寺川」歩き (1)
- 下流端「落合」から歩き始めて -
西武新宿線に「下落合」という駅がある。
住所で言うと東京都新宿区。
「落合」とは、
何かと何かが文字通り落ち合うことを意味している。
それは何か。
「妙正寺川」と「神田川」だ。
この二つの川が落ち合う場所を、
学生時代、友人に誘われて見に行った。
ちょっと見に行ってみようか、という
軽いノリの見学兼散歩。
特別に大掛かりな仕掛けや施設があるわけではないが、
目の前に現われたY字の大きなコンクリートの塊は、
そのまま静かに私の記憶の中に沈んでいった。
あれから約30年。その時の友人から、
「妙正寺川を落合から
水源の妙正寺公園まで歩いてみないか」
との誘いを受けた。
まさに何があるわけでもない。
都心の川を、川に沿って歩くだけ。
こんな企画に、いい歳をしたオッサンが4人集まった。
最初に、過去の合流地点を確認しておこう。
歩いたメンバの家に眠っていた
昭和48(1973)年版の2万5千分の一の地図では、
二本の川が落ち合っているのがよくわかる。
ネットでは、昭和54(1979)年11月に撮影した
この地域の航空写真を見ることもできる。
まさに地図通り落ち合っているだけでなく、
合流地点すぐ下流で
水が少し急な部分を流れ下って
水しぶきをあげて白くなっているのまでわかる。
私が友人と見に行ったのは、まさにこの落合部分だ。
それが今日(2015年6月)時点での
Google Mapで見るとこの通り。
北側(左上)にある水色の帯が「妙正寺川」。
合流している部分はわからない。
航空写真だとこんな感じ。
というわけで、
まずはこのあたりを見てから
川を溯(さかのぼ)ろう、ということになった。
30年前に見た、二つの川が落ち合う現場は、
上に書いた通り、
今は流れが変更されて見ることができない。
「昔はこのあたりが
合流に向かう川だったはずだけれど」
と痕跡を探しながらウロウロ、キョロキョロ。
外から見るとかなり怪しい中年オヤジのグループだ。
元(もと)水路だったと思われる部分は、
過去をすっかり忘れたように、
今は静かな「道路+住宅地」となっていた。
さてさて、いよいよ
妙正寺川をゆっくり上って行くこととしよう。
2015年5月の妙正寺川とその付近の景色。
撮った写真の整理を兼ねて、
その一部を紹介したいと思う。
まずは、妙正寺川の下流端。
もう一度今の地図を見てみよう。
黄色い丸の部分。
行ってみるとこんな風になっている。
ここから先は、もう地上からは追えない。
で、そこから反対側(西側)を向くとこんな感じ。
下落合駅東側の辰巳橋。
神田川高田馬場分水路と合流している。
この方向、つまり、川を溯る方向に
できるだけ川に沿って歩いてゆく。
ここから水源まで約10km。
途中、
「昭和橋記?」までしか読めない
「埋めすぎでしょ」の
こんなものを発見したりしながらブラブラ。
思っていたよりも水もきれいだ。
数々の浄化施策の結果なのだろう。
川に沿って歩けない部分もある。
西武新宿線「中井駅」手前。
川から離れた途端、
川に向かって大きく下ってくる坂道が
目に留まる。
見晴坂(みはらしざか)
名前の書かれた標示柱には、こんな説明が。
特に富士山の雄大な姿は抜群であったという。
また、坂下の水田地帯は古来より
落合蛍の名所として知られた。
坂名はこれらの風景に由来するものであろう」
富士山と蛍か。
今のように建て込んでしまっていると、
想像することすらむつかしいが。
隣は
六天坂(ろくてんざか)
標示柱には
こう呼ばれるようになったという」
今は坂の途中に第六天の祠(ほこら)がある。
住宅地の一角という感じだが、
ちゃんと手入れが行き届いている。
写真左の家の手前角、の部分が祠。
その後再び川に戻り、沿って歩く。
途中、カメラのフィルタで遊んでみたりする。
西武新宿線「中井駅」横の踏切には、こんなものがあった。
「いのちの電話」の番号一覧。
「こころの痛み、話せる電話です」とある。
自殺防止のため?
効果があるのだろうか。
「自殺」と言えば、2015年4月26日の朝日新聞の書評欄に
デイヴィッド・フィンケル 著
『帰還兵はなぜ自殺するのか』亜紀書房
という本が取り上げられていた。
その書評によると、
そのうち50万人はPTSD(心的外傷後ストレス障害)と
TBI(外傷性脳損傷)に悩まされている。
派兵前は善良な市民だったのに
一転して社会生活についていけなくなり、
精神障害、暴力、薬物中毒に陥り、
毎年240人以上が自殺している。
とある。評者は
「今の日本でもっとも読まれるべき書」とまで言っている。
「帰還兵200万人に対して毎年240人が自殺」か。
読んだ瞬間になにかが引っかかった。
ちょっとここ日本に目を向けてみよう。
日本では、
1億2千万人に対して毎年約2万5千人が自殺している。
(平成26年は25年比で1856人も減ったのに、
それでもまだ2万5427人にもなっている)
同じ比率を200万人に当てはめると416人だ。
実にPTSDやTBIで苦しむ帰還兵の約1.7倍。
平和と言われるここ日本で、
精神的に深い傷を負ったであろう帰還兵よりも
もっと多くの人が毎年、自らの命を断っている。
いったいどういうことなのだろう。
「いのちの電話」であれなんであれ、
「もう一度生きていこう」の
きっかけになりますように、と祈らずにはいられない。
川を歩いているのに、
坂や踏切の話が続いてしまった。
しかもまだ中井、つまり出発駅下落合のお隣りの駅。
もう少し早歩きで前に進みたいと思う。
(つづく)
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