Riverdance 20years
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Riverdance 20years
- リバーダンス20周年記念ツアー -
これまで最も多く繰り返し観たビデオは何か?
と聞かれれば、私の場合は迷わずこれだ。
Riverdance -THE SHOW-
(タイトルまたは
ジャケット画像をクリックすると
別タブでAmazon該当ページに)
リバーダンス(Riverdance)という舞台を
収録したもの。
その後、まさに世界中で
成功を収めることになる舞台の、
発祥の地アイルランド、ダブリンでの公演を
収録したもので、今となっては懐かしい
VHSのビデオカセットだ。
まさに擦り切れるほど観た。
唐突に話を始めてしまったが、
リバーダンス(Riverdance)って何?
という方も
たくさんいらっしゃることだろう。
百聞は一見に如かず。
言葉による説明の前に、
まずは、その舞台の一部をご覧下さい。
(上に紹介したビデオの一部が
そのままYouTubeにありました)
いかがでしょうか?
Riverdanceが初めて上演されたのは
1994年4月30日。
それは完成された大きなショウではなく、
ユーロビジョン・ソング・コンテストの
幕間に、
ホスト国であったアイルランドが披露した
たった7分間のパフォーマンスだった。
日本では放送されていない、
このときの映像もありがたいことに
YouTubeで見ることができる。
世の中の人が
初めて目にしたRiverdanceはこれ。
ダンスの主役(プリンシパル)は、
男性 マイケル・フラットレー
(Michael Flatley)
女性 ジーン・バトラー (Jean Butler)
作曲 ビル・ウィーラン (Bill Whelan)
合唱 アヌーナ (Anuna)
驚異的なタップダンスの振付も
プリンシパルのふたりがやっている。
最後の字幕にあるように、
このパフォーマンス、幕間のショウなのに
メインイベントを凌駕してしまったらしい。
そのことは、
興奮している観客や
司会者の様子を見てもよくわかる。
この評判がきっかけとなり、
そのわずか9ヶ月後、
1995年2月9日、Riverdanceは
フルステージのショウとなって
アイルランド・ダブリンのポイント劇場で
幕を開ける。
追加された演目をちょっと覗いてみよう。
一切の音楽なし。
男性だけの力強いタップのみで演じきる
Thunderstorm
フラメンコダンサー
マリア・パヘス (Maria Pages)の
独自世界に引き込まれるFiredance
アクロバティックな部分よりも、
6人のみごとな足の動きの完璧さが、
緊張感の中から
ある種の快感を生むロシアの踊り
The Russian Dervish
ほんとうは全演目を並べたいくらいなのだが、
とにかく、よくぞ短期間に
ここまでハイレベルなものを集めたものだ、
とそのプロデュース力にも驚くばかりだ。
(YouTubeの映像はすべて
最初に紹介したビデオ、
1995年ダブリンでの公演から)
このRiverdance、
フルステージのショウとなってから
今年2015年で20年。
20周年を記念して、7年ぶりに再来日した。
「全世界で1万1000公演達成、
2400万人が堪能!」
20年での1万1000公演達成が
いかにすごいことなのかは、
毎日一公演、一日も休まずにやったとしても
20年で7300公演にしかならないことを
考えるとよくわかる。
英語版のWikipediaを見ると、
Each production company is named
after an Irish river:
Liffey, Lee, Lagan, Avoca, Shannon,
Boyne, Corrib, Foyle, Moy and Bann.
とあり、アイルランドの川にちなんだ
名前のcompanyが実に10も挙がっている。
複数のcompanyが
同時に世界中を回っていたからこそ
実現できる公演数というわけだが、
こんなハイレベルのパフォーマンス集団を
複数組めること自体が驚きだ。
「堪能」した2400万人のうち、
4人は私の家族。
1999年、米国カリフォルニアでの公演を観た。
それからすでに16年。
プリンシパルもソリストも
すっかり変わってしまったが、
あの生の靴音の迫力を再度味わいたくて、
今回の来日公演を、
2015年4月4日、渋谷に観に行った。
すこしだけ感想を添えておきたい。
プリンシパルやソリストは、
私にとってはもちろん初対面で、
最初のうちはどうしても
繰り返し観たビデオのパフォーマンスと
比較してしまうのだが、
新しい主役としての
独自の味が伝わってくるようになると、
まさにその世界に吸い込まれてしまう。
やはり、「舞台は生で観なきゃ」
全メンバのダンスのキレ、
動きのメリハリは、
ほんとうに目を見張るもので
これだけのクオリティを維持しながら
若手を育て続けられる層の厚さを
実感せざるを得ない。
Riverdanceは、
上半身は直立不動、
下半身は驚異的な速さのタップ、
と捉えられがちだ。
事実、
1996年のニューヨークでの公演DVDには、
自由なスタイルで踊る
アメリカの黒人タップダンサーと対決する
コミカルな演目も入っているのだが、
そこでもアイリッシュスタイルの
この「上半身直立不動」が、
ちょっとおちょくられているような
演出になっている。
(笑いを誘うこの演目には今回も拍手喝采)
ところが、
今回舞台を観て特に印象的だったのは、
下半身のタップのすばらしさは
もちろんだが、
上半身の動きの柔らかさ
というか美しさだった。
わずかに腕や肩が動くときの、
流れるような線が
ほんとうに柔らかくて美しい。
上半身と言えば、
クラシックバレエの経験が長い知人に
Riverdanceの映像を観てもらったことがある。
そのときの彼女の感想は、
「普段バレエばかり観ているので、
とても新鮮でした。
タップは完全に素人の私でも、
主役の男性の方のすごさが分かりました!
出てきた時のオーラ、
身体のキレがすばらしいですね。
上半身を
あれだけ固定して踊れるっていうのは、
よっぽど腹筋背筋が
しっかりしてるんだな・・・などと
色々なことを考えながら観ていました」
それこそダンス素人の私は、
タップばかり見ていて
「腹筋背筋が」というのは
思ってもみないことだった。
さすがにタップ・ダンサーの筋肉までは
服を着ているのでよくわからなかったが、
一緒に観ていた妻は、
背中の大きく開いたドレスで踊っていた
フラメンコ・ダンサーの
背中の筋肉に気づいて、ずいぶん驚いていた。
下半身の力強いステップを支えているのは、
しなやかで強い上半身なのかもしれない。
とにかく、どれほどタップや
ステップの技がすごくても、
美しさは、
全身のバランスの中から生まれる、
ということを
改めて強く感じた夜だった。
パフォーマンスそのもの以外で、
16年前と比べて
「ずっとよくなっている」と思ったことは、
タップの靴音を拾うマイクの仕組み。
詳しいことはよくわからないが、
本来の床よりも数センチ高い位置に作られた
ショウ用の床が、
タップの音を響かせるだけでなく、
とにかく音を鮮明に拾う。
舞台中央に床を狙ったマイクがあったが、
それで拾った音だけとは思えないレベル。
まさに
1万1000公演で得たノウハウなのだろう。
というわけで、密かに心配していた
「衣装や演出が
華美になっていたらィヤだな」も
杞憂に終わり、
20周年の記念来日公演は
心から楽しむことができた。
ただ、一点だけ、
どうしても残念な点があったので、
それだけは記録として残しておきたい。
ビル・ウィーラン(Bill Whelan)の音楽は、
まさに名曲揃いで、
踊りと共にこのショウを支えている
大事な大事な要素だ。
だからこそ、ガッツリ生演奏で
聴かせてほしかった。
パーカッション(打楽器)は
たったひとりで
多くの楽器を飛び回る大活躍だったし、
イリアン・パイプス、フィドル、
ソプラノ・サックスも
それぞれに見せ場があって、
演奏もビデオのような
ノリノリ系ではなかったものの、
それぞれのスタイルとして
十分楽しめるものだった。
がしかし、
いくら上手なマルチプレーヤでも、
4人ではあの音楽のすべては支えられない。
一部の楽器の音に
録音を使っていたことはほんとうに残念。
ほかの楽器が生でも、録音に合わせたのでは
ライブのグルーブ感は
生まれようがないのだから。
ライブを大事にしているアイリッシュゆえに
余計にさみしい。
まぁ、それでも最後はかなり興奮して、
スタンディングオベーションをしている
自分があったのだけれど。
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はまさん、こんにちは。
素晴らしい「Riverdance」をご紹介頂きありがとうございました。 見ながら鳥肌が立ってきました。 アイリッシュ音楽の真骨頂である、リズムが素晴らしいです。
アイリッシュ音楽を聴きながら思うのは、人間のリズムです。リズムならアフリカ音楽も凄いのですが、アイリッシュ音楽は人が作る一定のリズム、乱れることがなく繰り返し押し寄せてくる音の重なりだと感じています。
タップを踏む足の動き、全身の躍動感は堪りません。
ご紹介頂きありがとうございました
投稿: omoromachi | 2015年4月12日 (日) 16時13分
omoromachiさん、
コメントをありがとうございます。
Riverdance、楽しんでいただけたようでなによりです。
ダンスからはもちろん目が離せないのですが、
omoromachiさんもおっしゃるように、私も
ビル・ウィーラン(Bill Whelan)の音楽がほんとうに素敵だと思います。
マイケル・フラットレー(Michael Flatley)の華、
ジーン・バトラー(Jean Butler)のある種の気品、
技術(わざ)以外の魅力的な要素がぎっしりつまった
まさに何度観ても新たな発見のある、すばらしい舞台だと思います。
感動はもちろんなのですが、なぜか元気がでるンですよね。
投稿: はま | 2015年4月15日 (水) 21時38分