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2015年4月

2015年4月26日 (日)

フィドラー アイリーン・アイヴァース(Eileen Ivers)

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フィドラー アイリーン・アイヴァース(Eileen Ivers)

- アイルランドの音楽と -

 

Riverdance関連の話、もう一回だけ続けたい。

Riverdanceは、
舞台を構成するどの要素をとっても次元が高く、
それらが同時にひとつの舞台のために集結できたことは、
前回書いた、プロデューサである
モヤ・ドハーティ(Moya Doherty)や
ジョン・マコルガン(John McColgan)
の力による
まさにある種の「奇跡」だと思うのだが、
その骨格となって全体の魅力を支えているものは、
驚異的なタップダンスと
やはりあの音楽だと思う。

作曲はビル・ウィーラン(Bill Whelan)
全曲、名曲揃い。ハズレが一曲もない。

 

変拍子かつ速いパッセージも含む
難しい曲なのに、
最近は中学や高校の吹奏楽部でも
演奏したりするというのだから、
学生バンドのレベルって、
ずいぶん高くなっているンだなぁ、とは
高校、大学と吹奏楽を続けてきた私の
全く私的な感想だが、
それはともかく、何度聴いても
不思議と飽きることがない。

 

アイルランドの音楽と言うと
日本ではおそらくU2エンヤ
知名度の点では高いと思われるが、
リールやジグといった舞踏系の音楽は、
あまり知られていなかったかもしれない。


舞踏系の音楽を圧倒的に広めたのは、
映画「タイタニック」のあの踊りのシーン

形式的で退屈な上流階級のパーティから、
ジャックが
"So, you wanna go to a real party?"
と言って、ローズを三等船室での
「本当のパーティ」に連れ出す。

そのパーティで奏でられる音楽がこれ。
動画なしだが、1:30位からのメロディを聞くと、
あのシーンがそのまま思い出せる人も
多いのではないだろうか。

 

その後、2006年のトリノオリンピック、
フィギュアスケート金メダリストの荒川静香さんが、
エキシビションで
シークレット・ガーデン(Secret Garden)の楽曲を
セルティック・ウーマン(Celtic Woman)がカバーした
「ユー・レイズ・ミー・アップ(You Raise Me Up)」
を使い、イナバウアーという言葉と共に、
Celticという言葉も多くの人の耳に届くことになる。
(なつかしい、と言うか美しいエキシビション、
 下の写真またはここをクリックするとYouTubeに移って再生されます)

Arakawa

 

アイルランド音楽に興味を持ち、
ザ・チーフタンズ(The Chieftains)
ルナサ(Lunasa)
アルタン(Altan)
クラナド(Clannad)
といったバンドを聴き比べるようになると、
ますますその独自の世界から抜けられなくなる。
CDもたくさんあるが私のお気に入りはこれ。

 

さて、話をRiverdanceに戻したい。
前回、 私は、DVDの中では、
ニューヨーク公演版がお薦めだ、と書いた。

女性プリンシパル
ジーン・バトラー(Jean Butler)が好きだから、と。

実はこのニューヨーク公演版、
もうひとつ、他のDVDにはない魅力がある。

フィドル(バイオリン) を
アイリーン・アイヴァース (Eileen Ivers)
がやっているのだ。
青い楽器がトレードマークの彼女。

まさにそのニューヨーク公演版(1996)から、
まずは一曲、Slip Into Springをどうぞ。

 

アイリーン、
もちろん今はRiverdanceを離れてしまっているが、
アイリッシュのフィドラーとして
精力的にライブ活動を続けている。

そんな中、かなり珍しい
貴重なライブ演奏を一つ紹介したい。

フィドラーのアイリーンが
クラシックのヴァイオリニスト
  ナージャ(Nadja Salerno Sonnenberg)、
ジャズのヴァイオリニスト
  レジーナ(Regina Carter)、
の三人で

Chris Brubeckが作曲した
Interplay for Three Violins and Orchestra
を演奏したもの。

聴いていただければわかるが、すごい演奏だ。
テクニック的にもハーモニック的にも難曲なのに、
クラシック、アイリッシュ、ジャズの三者が、
それぞれの持ち味をちゃんと活かしながら、
お互いを尊重し合い、譲り合い、重なり合って、
新しい音楽が生まれている。

三人の真ん中がアイリーン。
ソリスト間での小さな信号のやりとりや
表情が見られるのも動画ならでは。

 

こんなにスリリングで、
こんなにプロフェッショナルな演奏を、
生で聴けた人はほんとうに運がいい。

それにしてもやはりライブの人だ、
アイリーン・アイヴァース (Eileen Ivers)。

今度来日するときには、ぜひライブに足を運びたい、
そう思って楽しみに待っている演奏者のひとりだ。

 

 

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2015年4月19日 (日)

Riverdanceの軌跡

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Riverdanceの軌跡

- Riverdance と Lord of the Dance -

 

「リバーダンス20周年記念ツアー」の舞台
観に行ったことを機に、
手許にある過去の映像を観返している。

ユーロビジョン・ソング・コンテストの幕間の
たった7分間のパフォーマンスから
「全世界で1万1000公演達成」まで来たRiverdance。

最初の構想、ダブリンの初演からロンドンへの進出、
そして記録的な興行成績を上げた
ニューヨーク公演までのいきさつについては、
このDVDに詳しい。
「リバーダンスの軌跡 (Riverdance - a Journey)」

Riverdance_journey

プロデューサーである
モヤ・ドハーティ(Moya Doherty)
ジョン・マコルガン(John McColgan)による
制作裏話、思い出話を中心に、
ドキュメント番組の手法で話は進んでゆくのだが、
貴重な映像が随所に溢れており、
Riverdanceファンには、かなり魅力的な一枚だ。

主役であるマイケル・フラットレー(Michael Flatley)
ジーン・バトラー(Jean Butler)がラフな練習着で
振りをつけている様子をはじめ
各演目の練習風景も短時間ながら観られるし、
主要メンバの舞台を下りたときの素顔もいい。

怪我と戦う痛々しいジーンの足先やら、
床の木の硬さや平滑さに問題があることが
リハーサルで踊ってみて
初めて明らかになるニューヨークでのシーンなど
舞台裏でのヒヤヒヤネタも満載。

それらを次々と的確にさばいていくモヤとジョンは、
仕事人としてもほんとうに魅力的だ。

 

そんな中、一番のヒヤヒヤは、
2度目のロンドン公演の直前になっても、
主役のマイケルと契約更新ができていなかったこと。
長時間の交渉を重ねたが「振付の権利」の件で、
合意に至っていなかったらしい。

双方共、大人のコメントになっていて、
具体的にどんな条件で揉めていたのか
詳細まではわからないが、
公平かつ冷静な視点での編集になっているので
互いの主張の意図するところは十分伝わってくる。

結局、なんと公演2日前に交渉決裂。
主役交代という事態を迎える。

あれだけの踊りの主役を
短期間に代われる人がいること自体驚きだけれど
そのとき選ばれたのがコリン・ダン(Colin Dunne)
9度のアイリッシュ・ダンス世界チャンピオン。
ニューヨーク公演でのDVDで
その踊りをたっぷりと観ることができる。

ジーンもパートナーの突然かつ直前の降板に、
「右腕を失ったよう」とショックを語っている。
一方で、新しいパートナーとなるコリンのことは、
「以前から知っていたし、地上最強のダンサーだ。
 動きにまとまりがある」
とコメントしている。

 

というわけで、映像作品の方も、

Riverdancedublin

 作曲 ビル・ウィーラン (Bill Whelan)
 主役(プリンシパル)
  男性 マイケル・フラットレー (Michael Flatley)
  女性 ジーン・バトラー (Jean Butler)
 フラメンコダンサー マリア・パヘス (Maria Pages)
 合唱 アヌーナ (Anuna)

というポイント劇場、初演最強の組合せは、
男性プリンシパルだけがコリンに代わって、

 作曲 ビル・ウィーラン (Bill Whelan)
 主役(プリンシパル)
  男性 コリン・ダン (Colin Dunne)
  女性 ジーン・バトラー (Jean Butler)
 フラメンコダンサー マリア・パヘス (Maria Pages)
 合唱 アヌーナ (Anuna)

というニューヨーク公演のDVDに引き継がれることになる。

 

単なる技術だけでなく、
マイケルの華、ジーンの気品が感じられる
最初のダブリン公演のVHSビデオカセットは
内容的には一押しなのだが、
残念ながら今では手に入りにくくなっているようだ。
(再生できるデッキそのものも減ってきているだろうし)

舞台を収めたDVDで現在、比較的簡単に手に入るのは、
(1) ニューヨーク -1996-
(2) ジュネーブ -2002-
(3) 北京 -2010-
の三本。

カメラやマイクの進歩もあるのだろう、
映像やタップの音の捉え方等は、
もちろん新しい収録のほうがいい。

ただ、この中で一枚だけ選べと言われたら、
私の好みは、一番古い(1)ニューヨーク公演版だ。

理由はいろいろあるが、正直に言えば、単に
ジーン・バトラー(Jean Butler)が好き、
ということなのだろうと思う。

(2)ジュネーブ公演版のオマケ映像には、
来日時の日本での様子も少し入っている。

 

なお、DVDには他に、これまでの録画映像を、
まさに切り貼りして作った「ベスト版」もあるが、
こちらはどの公演であれ、舞台を一回は通して観た、
という人向け。
いくらベストでもカタログ的寄せ集め映像では、
あの舞台の魅力が半減してしまう。

喧嘩別れしてしまったマイケルのRiverdanceが、
DVDの映像で観られる、という点では貴重だが。

 

なお、上に書いた通り、2度目のロンドン公演直前に
Riverdanceと決別してしまった
初代の主役マイケル・フラットレー(Michael Flatley)は
同じアイリッシュ・ダンスを核に
「Lord of the Dance」という
全く新しい舞台を立ち上げる。

タップ自体も全開で、見所もいくつもあるのだが、
舞台のテーストはRiverdanceとは全く違う。

フィナーレ部分、一部ご覧あれ。

そして、
このハデハデの「Lord of the Dance」は、
ロンドン、ハイドパークでの
「Feet of Flames」の公演に繋がっていく。

それにしたって
ダンサーの数を増やせばいいってものじゃぁない。
マイケルの踊りも
他の人にはないオーラというかカリスマ性も大好きだが、
舞台の方は、少なくとも私の好みとは違う方向に
進んでしまった。

ロンドン、ハイドパークでの「Feet of Flames」
人数だけにご注目あれ。
(下の写真またはここをクリックすると
 YouTubeに移って再生されます)

Feetofflames

 

なお、「Lord of the Dance」「Feet of Flames」は、
DVDでも手に入るが、下記2点は
リージョンコードに注意が必要。

 

以上、どっぷりと
Riverdanceとタップダンスに浸った
週末だった。

 

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2015年4月12日 (日)

Riverdance 20years

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Riverdance 20years

- リバーダンス20周年記念ツアー -

 

これまで最も多く繰り返し観たビデオは何か?
と聞かれれば、私の場合は迷わずこれだ。

Riverdancedublin

 

リバーダンス(Riverdance)という舞台を収録したもの。
その後、まさに世界中で成功を収めることになる舞台の、
発祥の地アイルランド、ダブリンでの公演を収録したもので、
今となっては懐かしいVHSのビデオカセットだ。

まさに擦り切れるほど観た。

 

唐突に話を始めてしまったが、
リバーダンス(Riverdance)って何?
という方もたくさんいらっしゃることだろう。

百聞は一見に如かず。
言葉による説明の前に、
まずは、その舞台の一部をご覧下さい。
(上に紹介したビデオの一部が
 そのままYouTubeにありました)

 

如何でしょうか?

Riverdanceが初めて上演されたのは1994年4月30日。

それは完成された大きなショウではなく、
ユーロビジョン・ソング・コンテストの幕間に、
ホスト国であったアイルランドが披露した
たった7分間のパフォーマンスだった。

日本では放送されていない、このときの映像も
ありがたいことにYouTubeで見ることができる。

世の中の人が初めて目にしたRiverdanceはこれ。

 

ダンスの主役(プリンシパル)は、
男性 マイケル・フラットレー (Michael Flatley)
女性 ジーン・バトラー (Jean Butler)

作曲 ビル・ウィーラン (Bill Whelan)
合唱 アヌーナ (Anuna)

驚異的なタップダンスの振付も
プリンシパルのふたりがやっている。

最後の字幕にあるように、
このパフォーマンス、幕間のショウなのに
メインイベントを凌駕してしまったらしい。
そのことは、
興奮している観客や司会者の様子を見てもよくわかる。

この評判がきっかけとなり、そのわずか9ヶ月後、
1995年2月9日、Riverdanceは
フルステージのショウとなって
アイルランド・ダブリンのポイント劇場で幕を開ける。

追加された演目をちょっと覗いてみよう。

 

一切の音楽なし。
男性だけの力強いタップのみで演じきる
Thunderstorm

 

フラメンコダンサー マリア・パヘス (Maria Pages)の
独自世界に引き込まれるFiredance

 

アクロバティックな部分よりも、
6人のみごとな足の動きの完璧さが、
緊張感の中からある種の快感を生むロシアの踊り
The Russian Dervish

ほんとうは全演目を並べたいくらいなのだが、
とにかく、よくぞ短期間に
ここまでハイレベルなものを集めたものだ、と
そのプロデュース力にも驚くばかりだ。
(YouTubeの映像はすべて最初に紹介したビデオ、
 ダブリンでの公演から)

 

このRiverdance、フルステージのショウとなってから
今年2015年で20年。
20周年を記念して、7年ぶりに再来日した。

Riverdance2015_1s

 

全世界で1万1000公演達成、2400万人が堪能!

20年での1万1000公演達成がいかにすごいことなのかは、
毎日一公演、一日も休まずにやったとしても
20年で7300公演にしかならないことを考えるとよくわかる。

英語版のWikipediaを見ると、
Each production company is named after an Irish river:
Liffey, Lee, Lagan, Avoca, Shannon,
Boyne, Corrib, Foyle, Moy and Bann.
とあり、アイルランドの川にちなんだ名前のcompanyが
実に10も挙がっている。

複数のcompanyが同時に世界中を回っていたからこそ
実現できる公演数というわけだが、
こんなハイレベルのパフォーマンス集団を
複数組めること自体が驚きだ。


「堪能」した2400万人のうち、4人は私の家族。
1999年、米国カリフォルニアでの公演を観た。

それからすでに16年。
プリンシパルもソリストもすっかり変わってしまったが、
あの生の靴音の迫力を再度味わいたくて、
今回の来日公演を、4月4日、渋谷に観に行った。
すこしだけ感想を添えておきたい。

 

プリンシパルやソリストは、
私にとってはもちろん初対面で、
最初のうちはどうしても
繰り返し観たビデオのパフォーマンスと
比較してしまうのだが、
新しい主役としての
独自の味が伝わってくるようになると、
まさにその世界に吸い込まれてしまう。

やはり、「舞台は生で観なきゃ」

全メンバのダンスのキレ、動きのメリハリは、
ほんとうに目を見張るもので
よくぞこれだけのクオリティを維持しながら
若手を育て続けられるものだ、と
層の厚さを実感せざるを得ない。

Riverdanceは、
上半身は直立不動、下半身は驚異的な速さのタップ、
と捉えられがちだ。

事実、1996年のニューヨークでの公演DVDには、
自由なスタイルで踊る
アメリカの黒人タップダンサーと対決する
コミカルな演目も入っているのだが、そこでも
アイリッシュスタイルのこの「上半身直立不動」が、
ちょっとおちょくられているような演出になっている。

(笑いを誘うこの演目には、今回も拍手喝采)

ところが、
今回舞台を観て特に印象的だったのは、
下半身のタップのすばらしさはもちろんだが、
上半身の動きの柔らかさというか美しさだった。

わずかに腕や肩が動くときの、
流れるような線が
ほんとうに柔らかくて美しい。


上半身と言えば、
クラシックバレエの経験が長い知人に
Riverdanceの映像を観てもらったことがある。

そのときの彼女の感想は、
「普段バレエばかり観ているので、とても新鮮でした。
 タップは完全に素人の私でも、
 主役の男性の方のすごさが分かりました!
 出てきた時のオーラ、身体のキレがすばらしいですね。

 上半身をあれだけ固定して踊れるっていうのは、
 よっぽど腹筋背筋がしっかりしてるんだな・・・などと
 色々なことを考えながら観ていました」

それこそダンス素人の私は、タップばかり見ていて
「腹筋背筋が」というのは思ってもみないことだった。

さすがにタップ・ダンサーの筋肉までは
服を着ているのでよくわからなかったが、
一緒に観ていた妻は、
背中の大きく開いたドレスで踊っていた
フラメンコ・ダンサーの背中の筋肉に気づいて、
ずいぶん驚いていた。

下半身の力強いステップを支えているのは、
しなやかで強い上半身なのかもしれない

 

とにかく、
どれほどタップやステップの技がすごくても、
美しさは、
全身のバランスの中から生まれる
、ということを
改めて強く感じた夜だった。

 

パフォーマンスそのもの以外で、
16年前と比べて「ずっとよくなっている」と思ったことは、
タップの靴音を拾うマイクの仕組み。

詳しいことはよくわからないが、
本来の床よりも数センチ高い位置に作られた
ショウ用の床が、タップの音を響かせるだけでなく、
とにかく音を鮮明に拾う。

舞台中央に床を狙ったマイクがあったが、
それで拾った音だけとは思えないレベル。
まさに1万1000公演で得たノウハウなのだろう。

というわけで、密かに心配していた
「衣装や演出が華美になっていたらィヤだな」も
杞憂に終わり、
20周年の記念来日公演は心から楽しむことができた。

 

ただ、一点だけ、どうしても残念な点があったので、
それだけは記録として書いておきたい。

作曲ビル・ウィーラン(Bill Whelan)の音楽は、
まさに名曲揃いで、踊りと共にこのショウを支えている
大事な大事な要素だ。
でも、と言うかだからこそ、
ライブではライブでなければ意味がないと思う。

そう、小編成であっても
必要な楽器とプレーヤはすべて揃えて欲しかった。
パーカッション(打楽器)はたったひとりで
多くの楽器を飛び回る大活躍だったし、
イリアン・パイプス、フィドル、ソプラノ・サックスも
それぞれに見せ場があり、
演奏もビデオのようなノリノリ系ではなかったものの、
それぞれのスタイルとして十分楽しめるものだった。

がしかし、いくら上手なマルチプレーヤでも、
4人ではあの音楽のすべては支えられない。
一部の楽器の音に録音を使っていたことはほんとうに残念。
ほかの楽器が生でも、録音に合わせたのでは
ライブのグルーブ感は生まれようがないのだから。
ライブを大事にしているアイリッシュゆえに
余計にさみしい。

まぁ、それでも最後はかなり興奮して、
スタンディングオベーションをしている
自分があったのだけれど。

 

 

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2015年4月 5日 (日)

スリムな体型は脂肪のおかげ

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スリムな体型は脂肪のおかげ

- 脂肪はワルモノではない -

 

京都大学教授の伏木亨(ふしきとおる)さんが、
「からだで味わう動物と情報を味わう人間」
という題のエッセイの中で
次のような話を紹介していた。
(以下水色部、
 PR誌「学鐙」2002年11月号からの引用)

 

全くカロリーがなくて
しかもおいしい脂肪が作れたら爆発的に売れるに違いない。

と昨今の低カロリー志向から話を始めている。

ところで、
「体にとってカロリーにならない」とは
ミクロに見るとどういうことなのだろう。

 食品中の脂肪は脂肪酸という分子が
三つグリセロール分子に結合したものである。

小腸の中でこの結合が切断されてから体内に吸収される。
結合が切れなければ
吸収されないからカロリーはない、ゼロである。


この夢のような素材は
実は米国の食品会社によって開発されている。
米国の一部の州には、ポテトチップスなどの形で
試験販売されている。
少し前に、これを輸入して食べてみたが、
普通のポテトチップスと変わらない。

脂溶性のビタミンを排泄してしまうことなどが
指摘されているが、味の面ではうまくできている。

 

さて、こういったカロリーにならない油を使って、
動物実験をしてみると...

 これとよく似た原理で試作された
別の脂肪が手に入った。見た目は普通の油である。

熱にも安定で、天ぷらもフライもうまく揚げられる。
実験動物は、この試作品の油を最初喜んで食べた
市販のコーン油と比較しても実験動物の嗜好性には
差が見られないほどよくできている。
しかし、30分を過ぎる頃から事情が変わってきた。

実験動物が次第にこの油を好まなくなったのである
それからは動物はコーン油ばかりに群がって、
試作品の油を選ぶことはなかった。

わずか30分で見破られてしまったのである

実験に関する詳しいことは
この文章からではわからないが、
要は「30分後にはバレちゃった」ということらしい。

なぜバレたのか、
どうして30分後なのか。

 動物実験で30分というのは、
深い意味のある時間である。

油を摂取して30分ほど経つと、脂肪は消化吸収され、
からだの中でエネルギーに変わる。

ここで、
おそらく内臓からネガティブな信号が出たのである。
油としてはおいしいけれど、
エネルギーにならないぞ、という情報が、
一挙に実験動物の嗜好性を失わせたと考えられる。

舌は騙せても、からだには嘘はつけない

この時点ではまだ推測の範囲という感じだが、
おそらくそういうことなのだろう。

 

 動物は本来、脂肪に対して執着する。
モルヒネなどの依存性のあるドラッグと同じメカニズムで
本能の快感を生じ、もっと食べたいという執着を
抱くことが明らかになっている。

おいしさの快感はβエンドルフィン、
もっと食べたいという欲求はドーパミンが
主に関係することも明らかになっている。

 同じ方法で実験すると、
この試作品に動物は執着の行動を示さなかった。
本能はこの油に執着することを許さなかったのである

理由は一つ、
食べてもカロリーがないものは役に立たない、
こんなものに執着すると
カロリーが不足して命が危ない、である。

(中略)

動物にとっては
ノンカロリーなんてとんでもない食品
なのである。

言うまでもなく我々は
カロリーを摂取するために食事をしている
「ノンカロリーなんてとんでもない」が
生物としてのそもそもの自然な反応で、
「爆発的に売れるかも」と思うのは、
全く別な力の作用、というわけだ。

 

そう言えば、脂肪については
柳田理科雄著「空想科学読本5」メディアファクトリー

 

に、こんなユニークな記述もあった。

炭水化物やタンパク質は1gあたり4キロカロリー、
脂肪は9キロカロリーのエネルギーに変わる。
逆に言えば、
同じエネルギーを蓄えるのに、
炭水化物より脂肪のほうが量が少なくて済む


脂肪は、エネルギー貯蔵能力が高いのである。

おかげで人間は、食物が豊富なときに食い溜めし、
食べ物が少ないときの飢餓に耐えてきた。

食べ物が常に豊富な現代の先進諸国では、
美容その他の大敵と言われる脂肪だが、
見当違いも甚だしい

もし炭水化物が脂肪に変わらなかったら、
同じ量を食べても9/4=2.25倍も太るわけである。

つくづくありがたい自然の摂理といわねばならない。

 

今、体重70kg、体脂肪率24%の人がいたとする。
この人の脂肪量は (70x0.24=) 16.8kg

この16.8キロの脂肪と同量のカロリーを
炭水化物で維持しようとすると
 16.8 x 2.25 = 37.8kg
実に38キロ近くの炭水化物が必要になる。

(言うまでもなく、全部を「炭水化物で」は、
 現実的にはありえないので「仮に」の話だ)

その差 (37.8-16.8=) 21kg
つまり、70kgの人は91kgになってしまう。

 

逆に言うと、
91kgの体重になるかもしれない人が、
70kgの体型でいられるのは、
「脂肪」のおかげ


55kg体脂肪率24%の場合で計算しても、
炭水化物体型なら71.5kgになってしまう。

脂肪はワルモノではない。
スリムな体型は脂肪のおかげなのだ。

 

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