パリの空の下
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「パリの空の下」
- 写真を撮る時は気をつけましょう。 -
フランス出張、最終日の自由時間の話の続き。
サヴォア邸で気持ちはかなり満たされたが、
帰りの飛行機までにはまだ時間があったので、
パリに戻ってもう少し観光することにした。
電車に乗ると、偶然にもミニライブに遭遇。
ご夫婦か、アコーディオンとモンキータンバリンのみ。
いやぁ、うれしいなぁ。
真っ昼間、パリに向かう電車の中、
生演奏でシャンソンの名曲「パリの空の下」。
思わずチップを入れて、写真を撮らせてもらった。
後半、技巧的な曲も披露していたが、
やっぱりシャンソンでしょ。
ゆるやかな3拍子、でもワルツのような感じではなく
6/8拍子のような軽やかさが
発音のあとちょっと音が膨らむアコーディオンにぴったりだ。
パリに戻ってから向かったのは、
「蚤の市」クリニャンクール(Clignancourt)。
とにかく広い、と聞いていたので
なにかおもしろいものが見つかるかも、と。
4号線メトロの終点まで行ってあとは歩き。
駅から出るとオシャレとは程遠い、いかにもの雰囲気。
駅のそばは安っぽい衣類の店だらけだ。
もともと安いものを求めに来ているのだから
安い分にはいいが、
ヘンに高級品を気取っているような「安っぽい偽物」は
一番魅力がない。
正真正銘の安物の魅力で勝負しなくっちゃ!?
私自身は、雑貨に掘り出し物がないか、と思っていたのだが、
駅からは延々と魅力的ではない衣類のテントが続く。
そんな中、どう見ても偽物でしょ、という
ヴィトンもどきのバッグを山のように持ったお兄さんが
妙にたくさんウロウロしている。
だれに言われるでもなく、
スリに気をつけよう、という気になり、
バッグを固く身に寄せる。
写真も思わず控えめ。
とはいえ、
あるところで写真を撮った。
すると、
偽物バッグを持ったお兄さんが突然追いかけてきた。
フランス語でまくし立てているので、
何を言っているのかわからないのだが、
調子はかなり強く、妙に怒っている。
無視して歩いていると、もうひとり走って寄ってきた。
「ヤバイ!」
足早に逃げようとするが追いかけてくる。
言っていることはたぶんこうだ。
「今撮った写真に、俺達が写っているだろう。
それは困る。
特に顔が映っていたら俺達にとって都合が悪い。
なんとかしろ」
身振り手振りと語調からすると
そんなことを怒鳴っているように思える。
足早に逃げながら回りの様子を伺った。
これだけ大勢の人が見ているのだから、いきなり
「すべてを奪われる」はないだろう。
でも、写真で怒っているのは明白だ。
もしこれ以上揉めることになったら、
カメラをそのまま手渡してでも、逃げて身を守ろう。
そんなことを考えながらいつのまにか小走りになっていた。
なのにまだ足音が聞こえる。
その直後、追ってきていたひとりが私の上着の一部を掴んだ。
「ダメか」
とにかく身の安全だ。
カメラを諦める覚悟ができた私は、
急に立ち止まって振り返り、
かなり大きな声でひと言
「ノン!」と言った。
するとふたりは驚いたように顔を見合わせ、
なにやら捨て台詞をはくと、
さっきまでの勢いはどこへやら、
とぼとぼと来た方向へ戻っていった。
「ふぅ」
なにが起ったのだかよくわからないが、
実害はなく、とにかくよかった。
緊張したぜ。
おかげでもうそれ以上
蚤の市をうろつく気力はすっかりなくなってしまったので、
さっきのふたりに再び会わないよう、
大きく大きく遠回りをして駅に戻った。
サヴォア邸、クリニャンクールと
郊外を回ってきたがようやく?パリ中心部に。
かつての中央市場の跡「フォーロム・デ・アール」
というかその横(?)へ行ってみることにした。
「フォーロム・デ・アール」は
今はショッピングセンターになっているのだが、
現在、その横に大きな博覧会場が建設中なのだ。
その建築現場が市民に公開されているという。
というわけで、そちらを覗いてみることにした。
建築現場はもちろん塀に囲まれているが、
その塀を乗り越える形で、
建築現場を見る見物台が作られている。
簡単な説明の掲示板もある。
緩やかな曲線を描く巨大な屋根が美しい。
ポンピドー・センターの近く。
円形の商品取引所の横。
コンテナを重ねたような簡易版ながら、
作業員の宿舎? 事務所?も掲示板と同じ配色で統一感あり。
向うに見える大きな教会はサントゥスタッシュ教会。
その後は、家族への土産を探しながら街の中を散策。
よく聞くパリのレンタサイクル。
ここは場所柄か、あまり利用されていないようだ。
パリの証券取引所
街並みはどの通りも実に絵になる。
オペラ座も、いつ見ても迫力がある。
ちょっとだけデパートも覗いてみた。
有名な「ギャラリー・ラファイエット」
クリスマスモードでものすごい人の数。
楽しい時間はあっという間。
蚤の市ではヒヤッとしたが、
「サヴォア邸」と「パリの空の下」を思い出しながら
予定通り夜の便で無事日本に帰ってきた。
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