「山、人を見る」
(全体の目次はこちら)
「山、人を見る」
- 紅葉の山々を楽しみながら -
今年も紅葉の季節を迎え、11月の最初の連休、
紅葉狩りに出かけてきた。
最初の目的地は福島県西白河郡西郷村の雪割渓谷。
阿武隈川にかかる橋、雪割橋(ゆきわりばし)からの眺めは
時期的にちょっと遅かったものの言葉にならない。
遠くに雪割橋を望む全景もいい。
散策すると肺の中の空気が入れ替わるよう。
那須高原の温泉で一泊ゆっくりした帰りには、
栃木県塩原渓谷遊歩道、回顧(みかえり)コースに寄った。
回顧の吊り橋からの景色
日が差すと全山、葉の輝きが変わる。
回顧の滝を遠くに見ながら、
まさにここに書いたバーナーでお湯を沸かして、コーヒーを一杯淹れた。
心地よい風に吹かれながら、
熱々のコーヒーを片手に山々を眺めていると、
仏教学者の古田紹欽(しょうきん)さんが
朝日新聞に寄せていた文章を思い出す。
(以下水色部、1995年1月24日朝日新聞の記事からの引用)
・・・
今、百二十余段の坂道を辿る山の上の一庵に住む。
雑木林に庵は囲まれる。
・・・
山庵の住まいは「日々是好日」とはいかないが、
雑木林を眺めながら、漠然とあれこれと思いを馳せる。
今のこの山庵に住んで三十年近くになる。
ささやかながら庵庭がある。
苗木であった山茶花は今や大きく生長し、
枝々に花いっぱいを咲かす。
そんな環境に住む古田さんが
請われた時に色紙に書く自作の文句がある。
・・・
人の口車に乗り、いい気になって時には書く。
この年になっても人におだてられるとつい乗る。
ただ自分には好んで書く自作の文句がある。
墨で山を一筆がきに描いて「山、人を見る」と賛する。
・・・
山は無言で山を見ているその人を見ている。
「賛する」という動詞がいい。
絵心のない私には、使いたくても使えない
ある種のあこがれの香りがある。
山も、植物も、動物も、見ているその人を見ている。
どんな時も、どこにいても
決してひとりきり、ということはない。
そこでどんな対話が楽しめるかは、まさにその人次第だ。
(全体の目次はこちら)
« 冬眠から覚めた探査機「ロゼッタ」 | トップページ | Rendezvous(ランデブー) »
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 「歓待」と「寛容」(2023.10.22)
- 野川遡行(2) 人工地盤の上の公園(2023.07.02)
- 野川遡行(1) 次大夫堀公園まで(2023.06.25)
- 多摩川 河口部10km散歩(2023.06.11)
- 旧穴守稲荷神社大鳥居(2023.06.04)
「言葉」カテゴリの記事
- 「電車」を伝えるために何を保存する?(2023.12.10)
- 全体をぼんやりと見る(2023.11.26)
- 読書を支える5つの健常性(2023.11.19)
- バコーンってビッグになる(2023.11.12)
- 「歓待」と「寛容」(2023.10.22)
コメント