ノーベル賞とキューティーハニー
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ノーベル賞とキューティーハニー
- 「ハニーフラッシュ!」は化学反応 -
それが目的で選んだわけでもないのに、
この夏に読んだ本の本文に、
偶然続けて「空中窒素固定」の話がでてきた。
なので、今日はその話から始めたい。
「空中窒素固定」ってなんじゃ?
という方もいらっしゃることだろう。
まずはわかりやすい、
甲南大学、田中修先生の
「レンゲの話」を聞いてみよう。
(以下水色部、2013年6月9日放送、
NHKカルチャーラジオ
「植物ってすごい」の講義から)
必ずレンゲがいっぱい生えてました。
このレンゲは、
タンポポとよく並べられて
あがってくるんですが、
タンポポは雑草ですが、
レンゲ草は雑草ではありません。
これは、お百姓さんが
ちゃんと秋の間に種を蒔いて
そして育てられたのです。
なんでかと言うと、
レンゲ草というのは
すごい力を持ってるんです。
そぉーと引き抜いてみると、
いっぱい根のとこに
粒粒(ツブツブ)が付いています。
根に付いてる粒粒なので、
根と粒で根粒といいます。
この根の粒の中に
バクテリアが入っています。
そのバクテリアが
根粒菌と呼ばれるバクテリアなんですが、
これがすごい力を持ってるんです。
いっぱいあります。
植物を栽培するときの三大肥料、
窒素、リン酸、カリウム、
で、窒素肥料が一番大切なんです。
もし、
植物が空気中の窒素を吸収してくれて、
自分の肥料に使ってくれるのなら、
植物って栽培するのが
すごい簡単なんですが、
残念ながら植物は空気中の窒素を
窒素肥料として使うことはできません。
ところが、この根粒菌というは、
空気中の窒素を
窒素肥料に変えるんです。
そしてレンゲ草の根で変えて、
レンゲ草に供給します。
ですからレンゲ草はそれもらって、
窒素十分の体を作ってくるんです。
田植えの前に、
そのまま土の中に鋤き込まれる、
いうことされます。
そしたら持ってた窒素肥料が、
土、水の中に溶け込んで、
土壌が非常に肥沃になる、
いう方法がとられたんです。
だからレンゲ草を田植え前の
田んぼに植えとくっていうのは、
化学肥料を使わずに土を肥やすっていう
すごい方法だったんです。
だから葉っぱと茎が緑のままに、
肥料として土に植え込まれるんで、
緑肥、緑の肥料
緑肥と言われて、レンゲ草は長い間
緑肥の代表的なものだったんです。
ざっくり言って空気は、
その80%が窒素で、20%が酸素だ。
地球温暖化で
話題になることが多い二酸化炭素は
わずか0.03%程度のことでしかない。
窒素と比べれば二千分の一以下だ。
空気の8割を占める窒素。
これだけ大量に空気中に存在し、
かつ、
「遺伝子を構成する元素のひとつ」
ということからもわかるように、
動物にとっても植物にとっても、
なくてはならない
大事な元素のひとつなのに、
なぜか大部分の生物は、
空気中から窒素を直接取れるような
仕組みを持っていない。
なので、たとえば上のレンゲのように、
根粒菌の助けを借りたり、
が非常に重要になってくる。
中屋敷均 (著)
生命のからくり
講談社現代新書
(書名または表紙画像をクリックすると
別タブでAmazon該当ページに。
以下、薄茶部は本からの引用)
にもこんな記述がある。
レンゲ(ゲンゲ)摘みをした。
春になると田んぼが、
淡い赤紫の曼荼羅絨毯のようになり、
その中から白レンゲを探すのが
楽しみだった。
私が子供の頃は
どこにでも咲いていたレンゲだが、
昨今はすっかりその姿を見ることが
少なくなったような気がする。
レンゲが田んぼに咲いていたのは、
農家の戯れではなく、
見る人の目を楽しませるためでもなく、
レンゲの根に「根粒菌」と呼ぼれる
共生細菌が存在し、
その作用で土壌を肥沃にする
効果があるからだ。
植物の三大栄養素である
窒素、リン酸、カリウムのうち、
窒素は大気中の
約80%を占める元素である。
したがって、地球上に比較的多量に
存在しているものの、
残念ながら多くの生物は
大気中の窒素を直接利用できない。
根粒菌は、この大気中の窒素を
アンモニアに変換する
「窒素固定」と呼ばれる化学反応を
行うことができる数少ない
微生物のうちの一つである。
この「直接利用できない」窒素を、
自在にコントロールする手法を
人間は手に入れる。
福岡伸一 (著)
動的平衡2
生命は自由になれるのか
木楽舎
(書名または表紙画像をクリックすると
別タブでAmazon該当ページに。
以下、薄紫部は本からの引用)
にはこんなふうに書いてある。
人間はこのプロセスを入手した。
人工的に空気中の窒素から
アンモニアを合成し、
肥料として使い始めたのである。
化学肥料である。
この方法は
ハーバーボッシュ法というのだが、
20世紀最大の発明の一つとされている。
かくして、微生物のみが可能だった
窒素固定のプロセスは、
現在、人間のコントロール下にある。
アンモニア合成の反応式は、
N2 + 3H2 --> 2NH3
という簡単なものだが、
空気中の窒素を固定するこの方法は
まさに「20世紀最大の発明の一つ」で、
この合成を成功させたハーバーは
1918年ノーベル化学賞を受賞している。
アンモニアの合成は化学肥料を作り出し、
食物の大量生産に貢献することになる。
一方で窒素固定は、
「空気から火薬を作る」
とも言われるように
大量の爆薬の生産にも応用され、
戦争が長引く要因を作ったとも
言われている。
化学肥料にも爆薬にも正負両面あり、
一方向からのみ、
その効力を語ることはできないが、
影響力の大きさを考えると、
「大きな発明」であったことは間違いない。
ところで、ここまでくると
「固定したいのは窒素だけなの?」
の疑問がわく。
「空中窒素固定」の「窒素」を
一般的な「元素」に置き換えて、
「空中元素固定」で検索してみよう。
検索結果を見て、驚いてしまった。
180万件を越える検索結果のトップに
いきなり出てくるのは
なんと「キューティーハニー」なのだ。
おしりの小さな女の子
こっちを向いてよハニー♪
のあのキューティーハニーだ。
「どういうこと?」
wikipediaによると
「空中元素固定装置」を内蔵している
少女の姿をしたアンドロイド
なんだとか。
つまり、男の子たちの目を釘付けにする、
あの、服がすべて裂けて飛び散り
一瞬全裸となる
「ハニーフラッシュ!」の変身シーンは、
単なる公開着替えではなかったのだ。
自分の身の回りにある物質や空気を、
元素レベルにまですべて分解し、
分解された元素を再構成して
新しい衣装や武器を
その場で作り出してしまう、という
高度な化学変化の過程だったのだ。
そこまで意味付けがなされていたなんて。
(まぁ、元素が何かも知らない
小さな子どものころに
見ていたわけだから、
言われてもわかるわけも
ないのだけれど)
レンゲ、根粒菌、アンモニア、
化学肥料、ノーベル賞、
そしてキューティーハニーへと
「窒素」をキーに
話はどんどん繋がっていく。
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