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2014年3月

2014年3月30日 (日)

これからの長い人生において、もし立ち止まる時が来ても、

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これからの長い人生において、もし立ち止まる時が来ても、

- 指揮者・佐渡裕さんの言葉 -

 

オリコン1位の曲について書いている途中だが、
ひとつトピックスを割り込ませたい。

「オリコン1位 251曲目から」の話は次回に。

 

NHKのニュース番組「news Watch9」の大越キャスターが
同い年の指揮者・佐渡裕さんを取材、
その様子が3月24日、番組の一コーナで放送されていた。
全部見ても10分程度。

Sado_2

今(3月30日現在)なら、
番組のホームページで放送されたままの動画を再度観ることができる。

(放送された動画はここ

リンク先の動画は、おそらく近いうちに消えてしまうと思うので、
観られるうちに、と今日はこのインタビューについて書いておきたい。
(大越さんのために演奏された曲目「リバーダンス」についても
 書きたいことがいろいろあるのだが、
 これは今日の本題ではないので、また別な機会に)

 

番組のホームページに

子どもたちに「伝えたいことがある」という佐渡さんですが、
伝えるだけではなく、ご自身が得ることもまた、多いようです。

とあるように、
「鏡のように自分の姿がはっきり映し出される」という佐渡さんの言葉を紹介しながら、
指揮者からオーケストラへの一方的な指導ではない、双方向の関係を意識した編集になっている。

 

ただ、この短いコーナで私の印象に一番強く残ったのは、次の言葉だった。

佐渡さん(言葉のまま)

    僕はまぁ、ずっと
    スーパーキッズというのは、
    優秀な音楽家を育てる団体ではない、
    そんなことは勝手になったらいいことであって。

    そうではなくて、やっぱり
    それぞれの人生の中で、
    すごく、自分はあのころの自分でいつまでもありたいと、
    子どものときに憧れたものを思い出す感覚に

    自分のあの14歳の夏、15歳の夏、
    みんなともう、もうほんとに無我夢中で作った
    音を作ったあの夏を忘れたくない

    そういうものであってほしいというのが、
    僕のスーパーキッズ・オーケストラに対する思いのような気がするンですね。

 

この思いは短いメールとなって、メンバに届けられる。

(ナレーション)
昨日のコンサート、佐渡さんは直前にメンバ全員にメールを送っていました。

「これからの長い人生において、もし立ち止まる時が来ても、

 『全力で音楽に立ち向かった自分がいたなぁ』と思い出してくれたら、

 僕からのプレゼントは、その時本当にみんなに届くのだと思っている

 

いい言葉だ。
もちろんそれは音楽に限らない。

学生時代でも、あるいは社会人になってからでも、
「全力で**に立ち向かった自分がいたなぁ」
と思えるものを持っていると、ほんとうに強くなれる。
目をつぶるといつでも鮮明に思い出せる実体験。

「全力で**に立ち向かった自分がいたなぁ」

数多く、の必要はない。たったひとつでも、
自分自身が「心からそう思える」というものを持っていれば、
それはまさに基盤となって、「もし立ち止まる時が来ても」
それを乗り越えてゆく知恵と勇気を与えてくれる。

「全力で**に立ち向かった自分がいたなぁ」

思い出として懐かしく振り返るためだけのものではない。
これから先も、長く静かに、そしてしなやかに人生を支え続けてくれる
誰にも奪われることのない貴重な財産なのだ。

 

 

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2014年3月22日 (土)

オリコンチャート1位 141曲目から250曲目まで

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オリコンチャート1位 141曲目から250曲目まで

- アイドル・ポップスの時代 -

 

「オリコンチャート1位ヒットソング集500〈上〉1968-1985)」を見ながら、
J-POPと呼ばれる前の、「歌謡曲」が元気だった頃を振り返ってみる第二回目。

 

前回の「1曲目から140曲目まで」に引き続き、今回は上巻最後の250曲目まで。

141曲目に登場するのは、80年代を代表するアイドルのひとり、松田聖子さん。
まずはここから250曲目まで一気に見てしまおう。

一覧表は前回と同じ形式。
Dateは1位登場日付、Weeksは1位滞在週数、万枚は100位以内滞在期間中の売上枚数を示している。

 

オリコンチャート1位 曲一覧 141曲目から250曲目まで

曲名 歌手 Date Weeks 万枚
141 風は秋色/Eighteen 松田聖子 19801013 5 79.6
142 ダンシング・シスター ノーランズ 19801117 2 67.4
143 恋人よ 五輪真弓 19801201 3 96.1
144 スニーカーぶる~す 近藤真彦 19801222 5 104.7
145 恋=Do! 田原俊彦 19810126 2 59.8
146 チェリーブラッサム 松田聖子 19810209 4 67.4
147 街角トワイライト シャネルズ 19810309 3 71.7
148 ルビーの指環 寺尾聡 19810330 10 134.1
149 夏の扉 松田聖子 19810608 2 56.8
150 ブルージーンズメモリ 近藤真彦 19810622 3 59.8
151 長い夜 松山千春 19810713 3 86.6
152 白いパラソル 松田聖子 19810803 3 48.8
153 ハイスクールララバイ イモ欽トリオ 19810824 7 104.3
154 ギンギラギンにさりげなく 近藤真彦 19811012 6 81.6
155 風立ちぬ 松田聖子 19811026 1 51.9
156 悪女 中島みゆき 19811130 3 83.3
157 セーラー服と機関銃 薬師丸ひろ子 19811221 5 86.5
158 情熱☆熱風 せれなーで 近藤真彦 19820125 2 55.6
159 赤いスイートピー 松田聖子 19820208 3 50
160 心の色 中村雅俊 19820301 5 69.7
161 い・け・な・いルージュマジック 忌野清志郎+坂本龍一 19820405 1 41.4
162 ふられてBANZAI 近藤真彦 19820412 4 53
163 渚のバルコニー 松田聖子 19820510 1 51.4
164 原宿キッス 田原俊彦 19820517 3 40.6
165 聖母たちのララバイ 岩崎宏美 19820607 4 80.4
166 $百萬BABY Johnny 19820705 1 33.8
167 ハイティーン・ブギ 近藤真彦 19820712 5 60.7
168 小麦色のマーメイド 松田聖子 19820816 1 46.7
169 暗闇をぶっとばせ 嶋大輔 19820823 1 28
170 待つわ あみん 19820830 6 109
171 ホレたぜ!乾杯 近藤真彦 19821011 2 50.2
172 誘惑スレスレ 田原俊彦 19821025 2 38.3
173 野ばらのエチュード 松田聖子 19821108 3 45
174 セカンド・ラブ 中森明菜 19821129 6 76.6
175 3年目の浮気 ヒロシ&キーボー 19821220 3 73.6
176 ミッドナイト・ステーション 近藤真彦 19830131 2 39.1
177 秘密の花園 松田聖子 19830214 2 39.6
178 ピエロ 田原俊彦 19830228 1 33
179 1/2の神話 中森明菜 19830307 6 57.3
180 矢切の渡し 細川たかし 19830418 3 102.5
181 真夏の一秒 近藤真彦 19830509 1 34.4
182 天国のキッス 松田聖子 19830516 1 47.1
183 め組のひと ラッツ&スター 19830523 1 62.2
184 シャワーな気分 田原俊彦 19830530 1 26.1
185 探偵物語/すこしだけやさしく 薬師丸ひろ子 19830606 7 84.1
186 ためいきロ・カ・ビ・リー 近藤真彦 19830725 3 33
187 ガラスの林檎 松田聖子 19830815 2 85.7
188 さらば・・夏 田原俊彦 19830822 2 31.9
189 フラッシュダンス アイリーン・キャラ 19830905 2 69.7
190 禁区 中森明菜 19830919 1 51.1
191 キャッツ・アイ 杏里 19830926 5 82
192 瞳はダイヤモンド 松田聖子 19831107 2 56.8
193 ロイヤル・ストレート・フラッシュ 近藤真彦 19831114 1 29.5
194 エル・オー・ヴィ・愛・N・G 田原俊彦 19831128 3 30.6
195 ラヴ・イズ・オーヴァー 欧陽菲菲 19831219 2 52.2
196 もしも明日が・・・。 わらべ 19840102 6 97
197 Rock'n Rouge 松田聖子 19840213 4 67.4
198 一番野郎 近藤真彦 19840312 1 29.4
199 ワインレッドの心 安全地帯 19840319 2 71.4
200 渚のはいから人魚 小泉今日子 19840402 1 33.1
201 喝! シブがき隊 19840409 2 25.2
202 サザン・ウインド 中森明菜 19840423 3 54.4
203 哀しくてジェラシー チェッカーズ 19840514 1 66.2
204 時間の国のアリス 松田聖子 19840521 2 47.7
205 騎士道 田原俊彦 19840604 2 25.8
206 ケジメなさい 近藤真彦 19840618 2 32.7
207 迷宮のアンドローラ 小泉今日子 19840702 2 37.7
208 雨音はショパンの調べ 小林麻美 19840716 3 52
209 十戒(1984) 中森明菜 19840806 2 61.1
210 ピンクのモーツァルト 松田聖子 19840813 1 42.2
211 顔に書いた恋愛小説 田原俊彦 19840820 1 25.1
212 星屑のステージ チェッカーズ 19840903 3 60.4
213 永遠に秘密さ 近藤真彦 19840924 1 23.9
214 ヤマトナデシコ七変化 小泉今日子 19841001 3 30.1
215 天国にいちばん近い島 原田知世 19841022 1 27.6
216 恋人達のペイヴメント アルフィー 19841029 1 33.6
217 Woman"Wの悲劇"より 薬師丸ひろ子 19841105 1 37.3
218 ハートのイヤリング 松田聖子 19841112 2 37.6
219 飾りじゃないのよ涙は 中森明菜 19841126 1 62.5
220 ジュリアに傷心 チェッカーズ 19841203 4 70.3
221 スターダスト・メモリー 小泉今日子 19841231 3 37.4
222 ユー・ガッタ・チャンス 吉川晃司 19850121 3 31
223 天使のウインク 松田聖子 19850211 2 41.4
224 ヨイショッ! 近藤真彦 19850225 1 19.1
225 シンデレラは眠れない アルフィー 19850304 1 29.8
226 卒業 菊池桃子 19850311 1 39.4
227 ミ・アモーレ 中森明菜 19850318 2 63.1
228 あの娘とスキャンダル チェッカーズ 19850401 3 51.6
229 常夏娘 小泉今日子 19850422 2 26.7
230 にくまれそうなNEWフェイス 吉川晃司 19850506 1 26
231 赤い鳥逃げた 中森明菜 19850513 1 35.4
232 ボーイの季節 松田聖子 19850520 1 35.6
233 BOYのテーマ 菊池桃子 19850527 2 34.1
234 今だから 松任谷由実・小田和正・財津和夫 19850610 2 36.7
235 デビュー 河合奈保子 19850624 1 16.1
236 SAND BEIGE 中森明菜 19850701 1 46.1
237 ダンシング・シューズ 松田聖子 19850708 1 18.6
238 俺たちのロカビリーナイト チェッカーズ 19850715 3 44.7
239 魔女 小泉今日子 19850805 1 16.7
240 悲しみにさよなら 安全地帯 19850812 4 44.3
241 華麗なる賭け 田原俊彦 19850826 1 12
242 涙の茉莉花LOVE 河合その子 19850916 2 19
243 ハート・オブ・レインボー チェッカーズ 19850930 1 29.5
244 もう逢えないかもしれない 菊池桃子 19851007 2 25.4
245 SOLITUDE 中森明菜 19851021 1 33.6
246 恋に落ちて 小林明子 19851028 7 95.4
247 神様ヘルプ! チェッカーズ 19851111 1 35.2
248 なんてったってアイドル 小泉今日子 19851202 1 28.4
249 仮面舞踏会 少年隊 19851223 1 47.8
250 冬のオペラグラス 新田恵利 19860113 4 32

 

曲が思い出せる方は、それぞれの自分の時代と重なることだろう。
各曲が1位滞在期間中のトピックスの中から、いくつかピックアップしてみたい。

 

「恋人よ」 1980年12月8日 ジョン・レノンが自宅前でファンに撃たれる。
「スニーカーぶる~す」 1981年1月5日 1ドル200円台を割り、198円台になる。
「白いパラソル」 1981年8月22日 台湾で墜落事故。向田邦子さん搭乗。
「セーラー服と機関銃」 1981年12月31日  厚生省発表でガンが初めて死因1位に。
「情熱☆熱風 せれなーで」 1982年1月8日  ホテル・ニュージャパン火災で33人死亡。
「赤いスイートピー」 1982年2月9日 機長の逆噴射操縦で日航機が東京湾に墜落。
「ホレたぜ!乾杯」 1982年10月1日 CDとCDプレーヤが発売。
「セカンド・ラブ」 1982年12月1日 マイケル・ジャクソンが「スリラー」発表。
「1/2の神話」 1983年4月4日 NHK連続TV小説「おしん」スタート。
「矢切の渡し」 1983年4月15日 浦安市にディズニーランド、オープン。
「さらば・・夏」 1983年9月1日 大韓航空機をソ連戦闘機が撃墜。269人死亡。
「一番野郎」 1984年3月11日 宮﨑駿監督の「風の谷のナウシカ」公開。
「ワインレッドの心」 1984年3月18日 グリコの江崎勝久社長が誘拐される。
「哀しくてジェラシー」 1984年5月10日 かい人21面相の脅迫で、グリコが販売を中止。
「スターダスト・メモリー」 1985年1月15日 日本ラグビー選手権で新日鉄釜石が7連勝。
「シンデレラは眠れない」 1985年3月10日 世界最長の青函海底トンネルが21年目に貫通。
「あの娘とスキャンダル」 1985年4月1日 NTTと日本たばこ産業が民営化スタート。
「華麗なる賭け」 1985年8月12日 日航ジャンボ機墜落、死亡520人。
「もう逢えないかもしれない」 1985年10月16日 阪神タイガースが21年ぶりのセ・リーグ優勝。
「仮面舞踏会」 1985年12月24日 国勢調査で日本の人口1億2104万7196人と発表。

 

さて、この一覧表、前回書いた通り、
曲名が青字になっているものは「作詞が阿久悠さんの曲」を示している。
前回の表では、あれだけの大活躍をみせていたのに、この表の中には一曲しかない。

代わって一気に1位を占めるようになったのは紫字の曲。
140曲目までには1曲しか登場していなかったのに、
今回の表110曲の中にはじつに32曲! さて、紫字の共通点は?

 

正解は、「作詞が松本隆さんの曲」だ。

歌手も、松田聖子、近藤真彦、田原俊彦、小泉今日子、薬師丸ひろ子、などなど。
強いわけだ。
作詞家では、ほかにも売野雅勇さんや来生えつこさんらが1位の曲を何曲も送り出している。

で後半、緑字の曲が、ちらほらと登場するようになる。
この緑字の曲の共通点は? 正解は次回の表と一緒に発表したい。そうあの人だ。

 

まさにアイドル全盛の80年代前半、なつかしい(若い!)顔、顔。
      (クリックすると二回りほど大きく表示されます)

Oricon500a_80idol

 

松田聖子さんと中森明菜さんの比較では、こんなページもある。
聖子さんの「1位連続20曲」!が光っている。

Oricon500a_seiko_akina_s

 

ニューミュージックという言葉も広まっていった。

Oricon500a_newmusic

 

「アニソン」、アニメの主題歌もまだこんな感じ。

Oricon500a_anisong

 

最後に春子さん、じゃない、(ドラマ「あまちゃん」を見ていない方、失礼しました)
小泉今日子さん。 当時、独自カラーを打ち出して快進撃。
影の存在だった春子さんとは違い、実際は、まさに「ど真ん中」のアイドルだった。

Oricon500a_kyon2

 

そんな小泉今日子さんや中森明菜さんについては、よく語られるエピソードがある。

小泉さんや中森さんがデビューした1982年は、
同期が「花の82年組」と呼ばれるようになる、まさに新人アイドル豊作の年。
ライバルの多い中、小泉今日子さん、中森明菜さんは共に
日本レコード大賞新人賞の5組の枠に入ることはできなかった。

最優秀新人賞がとれなかった、と言っているのではない。
ふたりとも新人賞にノミネートさえされなかったのだ。
では、いったいノミネートされた5組とは...?

 

1982年 日本レコード大賞 最優秀新人賞ノミネート

(1) 石川秀美 「ゆ・れ・て湘南」
(2) シブがき隊 「100%…SOかもね!」
(3) 早見優 「アンサーソングは哀愁」
(4) 堀ちえみ 「待ちぼうけ」
(5) 松本伊代 「センチメンタル・ジャーニー」

シブがき隊が最優秀新人賞をとっている。

 

シングルのオリコンチャートとは関係ないが、
細川たかし「北酒場」がレコード大賞をとったこの1982年、
日本レコード大賞「ベスト・アルバム賞」は次の3枚が受賞している。

  中島みゆき 「寒水魚」
  サザンオールスターズ 「NUDE MAN」
  松任谷由実 「PEARL PIERCE」

82年、豊作だったのはアイドルだけではない。

 

緑字の曲の共通点は? 
のクイズをだしたままなので、オリコン1位の件、もう少し続けたい。

 

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2014年3月16日 (日)

オリコンチャート1位 1曲目から140曲目まで

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オリコンチャート1位 1曲目から140曲目まで

- 阿久悠の時代から「耳に注射する」音楽の時代に -

 

近所にある「街のレコード屋さん(CDショップというべきか)」の前に「閉店のご案内」が出ていた。

Img_7995s

昭和48年開業というから41年に渡って営業を続けていたことになる。
閉店は寂しいことだが、レコードとCDが一番元気なころを知っている、という意味では、
まだ幸せなお店なのかもしれない。

Img_7998s

 

今日は、「オリコンチャート1位ヒットソング集500〈上〉1968-1985)」を見ながら、
J-POPと呼ばれる前の、「歌謡曲」が元気だった頃をちょっと振り返ってみたい。

 

ORICON No.1 HITS 500 1968-1985〈上〉は、オリコンチャート1位の曲が500曲になったのを機に、
1位獲得曲だけを集めた歌本として1994年に出版されたものだが、
歌詞集としてだけでなく、資料集としても使えるようになっている。

こんなカラーページもある。

Oricon500a_70idol

Oricon500a_candies

Oricon500a_chu3

Oricon500a_pinklady

 

この本から、いつごろどんな曲が一位だったのかを一覧にしてみた。
Dateは1位登場日付、Weeksは1位滞在週数、万枚は100位以内滞在期間中の売上枚数を示している。

 

オリコンチャート1位 曲一覧 1曲目から140曲目まで

曲名 歌手 Date Weeks 万枚
1 ラブユー東京 黒沢明とロス・プリモス 19680104 3 32.7
2 帰って来たヨッパライ ザ・フォーク・クルセダーズ 19680125 5 131.3
3 恋のしずく 伊東ゆかり 19680229 5 77
4 ゆうべの秘密 小川知子 19680325 1 52.9
5 マサチューセッツ ザ・ビー・ジーズ 19680401 1 51.2
6 花の首飾り/銀河のロマンス ザ・タイガース 19680415 7 67.6
7 星影のワルツ 千昌夫 19680603 6 170.8
8 エメラルドの伝説 ザ・テンプターズ 19680708 2 46.2
9 シー・シー・シー ザ・タイガース 19680722 6 50.8
10 サウンド・オブ・サイレンス サイモンとガーファンクル 19680909 2 81
11 恋の季節 ピンキーとキラーズ 19680923 17 207.7
12 今は幸せかい 佐川満男 19681216 1 56.9
13 悲しき天使 メリー・ホプキン 19690127 1 46.7
14 涙の季節 ピンキーとキラーズ 19690203 1 51.5
15 ブルー・ライト・ヨコハマ いしだあゆみ 19690210 9 100.3
16 夜明けのスキャット 由紀さおり 19690414 8 109
17 港町ブルース 森進一 19690609 5 106.8
18 禁じられた恋 森山良子 19690714 8 78.8
19 池袋の夜 青江三奈 19690908 6 104.4
20 人形の家 弘田三枝子 19691020 3 57.1
21 黒ネコのタンゴ 皆川おさむ 19691110 14 223.5
22 逢わずに愛して 内山田洋とクールファイブ 19700216 3 69.9
23 白い蝶のサンバ 森山加代子 19700309 3 47.5
24 女のブルース 藤圭子 19700330 8 74.8
25 圭子の夢は夜ひらく 藤圭子 19700525 10 76.5
26 愛は傷つきやすく ヒデとロザンナ 19700803 5 65.5
27 手紙 由紀さおり 19700907 6 67.6
28 男の世界 ジュリー・ウォレス 19701019 3 73.4
29 京都の恋 渚ゆう子 19701109 8 85.1
30 走れコウタロー ソルティー・シュガー 19710104 1 67.5
31 霧の中の二人 マッシュマッカーン 19710111 2 39.9
32 望郷 森進一 19710125 3 54.5
33 花嫁 はしだのりひことクライマックス 19710215 2 60.5
34 知床旅情 加藤登紀子 19710301 7 105.1
35 ナオミの夢 ヘドバとダビデ 19710419 4 66.6
36 また逢う日まで 尾崎紀世彦 19710517 9 95.6
37 よこはま・たそがれ 五木ひろし 19710719 1 64.2
38 わたしの城下町 小柳ルミ子 19710726 12 134.3
39 雨のバラード 湯原昌幸 19711018 3 61.9
40 雨の御堂筋 欧陽菲菲 19711108 9 79.2
41 悪魔がにくい 平田隆夫とセルスターズ 19720110 5 72.5
42 別れの朝 ペドロ&カプリシャス 19720214 4 55.7
43 ちいさな恋 天地真理 19720313 4 54.7
44 愛するハーモニー ザ・ニュー・シーカーズ 19720410 1 28.12
45 夜明けの停車場 石橋正次 19720417 3 49.4
46 太陽がくれた季節 青い三角定規 19720508 1 50.2
47 瀬戸の花嫁 小柳ルミ子 19720515 4 74.1
48 ひとりじゃないの 天地真理 19720612 6 60.1
49 さよならをするために ビリー・バンバン 19720724 2 69.5
50 旅の宿 よしだたくろう 19720807 5 70
51 京のにわか雨 小柳ルミ子 19720911 5 61.3
52 虹をわたって 天地真理 19721002 2 51.7
53 女のみち 宮史郎とぴんからトリオ 19721030 16 325.6
54 学生街の喫茶店 ガロ 19730219 7 77.2
55 若葉のささやき 天地真理 19730409 5 48.1
56 赤い風船 浅田美代子 19730514 5 48.1
57 危険なふたり 沢田研二 19730618 3 65.1
58 君の誕生日 ガロ 19730625 1 45.2
59 恋する夏の日 天地真理 19730716 6 50.2
60 わたしの彼は左きき 麻丘めぐみ 19730827 2 49.5
61 心の旅 チューリップ 19730910 2 51.4
62 ちぎれた愛 西城秀樹 19730924 4 47.5
63 神田川 南こうせつとかぐや姫 19731022 7 86.5
64 個人授業 フィンガー5 19731203 1 71.5
65 小さな恋の物語 アグネス・チャン 19731217 1 58
66 愛の十字架 西城秀樹 19731224 1 35.2
67 恋のダイヤル6700 フィンガー5 19740107 3 83.7
68 あなた 小坂明子 19740128 7 164.9
69 なみだの操 殿さまキングス 19740318 9 197.3
70 うそ 中条きよし 19740520 8 154.1
71 夫婦鏡 殿さまキングス 19740715 4 83.9
72 追憶 沢田研二 19740812 1 57.9
73 ふれあい 中村雅俊 19740819 10 126.5
74 よろしく哀愁 郷ひろみ 19741028 3 50.6
75 冬の駅 小柳ルミ子 19741118 2 56
76 甘い生活 野口五郎 19741125 2 49.4
77 あなたにあげる 西川峰子 19741216 1 55.6
78 冬の色 山口百恵 19741223 6 52.9
79 はじめての出来事 桜田淳子 19750203 1 52.7
80 私鉄沿線 野口五郎 19750210 3 45.3
81 22才の別れ 19750303 4 70.8
82 我が良き友よ かまやつひろし 19750331 4 70.1
83 昭和枯れすすき さくらと一郎 19750428 3 100.2
84 シクラメンのかほり 布施明 19750519 5 105.2
85 港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ ダウン・タウン・ブギウギ・バンド 19750623 5 78.8
86 心のこり 細川たかし 19750728 4 80.1
87 想い出まくら 小坂恭子 19750825 1 85.3
88 ロマンス 岩崎宏美 19750901 3 88.7
89 時の過ぎゆくままに 沢田研二 19750922 5 91.6
90 「いちご白書」をもう一度 バン・バン 19751027 6 75.1
91 センチメンタル 岩崎宏美 19751208 2 57.3
92 あの日にかえりたい 荒井由実 19751222 2 61.5
93 およげ!たいやきくん 子門真人 19760112 11 453.6
94 ビューティフル・サンデー ダニエル・ブーン 19760322 15 192.4
95 横須賀ストーリー 山口百恵 19760705 7 66.1
96 あなただけを あおい輝彦 19760823 6 79.2
97 パールカラーにゆれて 山口百恵 19761004 5 47
98 落葉が雪に 布施明 19761108 1 40.4
99 あばよ 研ナオコ 19761115 4 64.4
100 北の宿から 都はるみ 19761206 4 143.5
101 青春時代 森田公一とトップギャラン 19770117 4 101.8
102 S・O・S ピンク・レディー 19770214 1 65.4
103 失恋レストラン 清水健太郎 19770221 5 62.8
104 カルメン'77 ピンク・レディー 19770328 5 66.3
105 帰らない 清水健太郎 19770502 2 54.9
106 夢先案内人 山口百恵 19770516 1 46.8
107 雨やどり さだまさし 19770523 4 68.3
108 勝手にしやがれ 沢田研二 19770620 5 89.3
109 渚のシンドバッド ピンク・レディー 19770627 8 100
110 ウォンテッド ピンク・レディー 19770919 12 120.1
111 わかれうた 中島みゆき 19771212 1 76.9
112 UFO ピンク・レディー 19771219 10 155.4
113 カナダからの手紙 平尾昌晃・畑中葉子 19780227 2 70
114 微笑がえし キャンディーズ 19780313 3 82.9
115 サウスポー ピンク・レディー 19780403 9 146
116 ダーリング 沢田研二 19780605 1 44.8
117 時間よ止まれ 矢沢永吉 19780612 3 63.9
118 Mrサマータイム サーカス 19780703 1 65.2
119 モンスター ピンク・レディー 19780710 8 110.2
120 銃爪 世良公則と&ツイスト 19780904 1 54.8
121 君のひとみは10000ボルト 堀内孝雄 19780911 4 96.9
122 透明人間 ピンク・レディー 19781002 4 88.6
123 季節の中で 松山千春 19781106 6 85.1
124 カメレオン・アーミー ピンク・レディー 19781218 6 70.8
125 チャンピオン アリス 19790129 4 78
126 HERO(ヒーローになる時・それは今) 甲斐バンド 19790226 2 63.7
127 YOUNG MAN 西城秀樹 19790312 5 80.8
128 魅せられて ジュディ・オング 19790416 9 123.5
129 きみの朝 岸田智史 19790618 5 59.9
130 おもいで酒 小林幸子 19790723 1 138.3
131 関白宣言 さだまさし 19790730 10 122.7
132 セクシャル・バイオレットNo.1 桑名正博 19791008 3 59.2
133 親父の一番長い日 さだまさし 19791029 6 66.6
134 異邦人 久保田早紀 19791210 7 144.5
135 大都会 クリスタルキング 19800128 6 118.1
136 贈る言葉 海援隊 19800310 6 94.5
137 ランナウェイ シャネルズ 19800421 7 97.5
138 ダンシング・オールナイト もんた&ブラザーズ 19800609 10 161.8
139 順子 長渕剛 19800818 6 94.2
140 ハッとして!Good 田原俊彦 19800929 2 62.2

 

本から一部トピックスを抜いてみよう。

 * 17週も1位に輝いた「恋の季節」
 * 「夜明けのスキャット」がヒットしている頃、東名高速道路全通
 * わずか6歳で歌ったデビュー曲が、200万枚を越える大ヒットとなった「黒ネコのタンゴ」

 * 「わたしの城下町」がヒットしている頃、NHK総合テレビが全時間カラー化
 * 伝説の山口百恵、7枚目にして初の1位を獲得「冬の色」
 * 2作しかない(意外!)ユーミンの初の1位獲得シングル「あの日にかえりたい」

 * 450万枚を越える歴代1位の売上を誇る、初の"初登場1位"曲「およげ!たいやきくん」
 * ここからピンク・レディー驚異の5作連続のミリオンセラーがスタートする「渚のシンドバッド」
 * 解散直前のキャンディーズ、全18枚中唯一の1位曲「微笑がえし」

 

さて、この一覧表、青字になっている曲の共通点がわかるだろうか。

正解は、「作詞が阿久悠さんの曲」

数の多さもさることながら、その多彩さにはほんとうに驚く。

「勝手にしやがれ」から「ウォンテッド」までは、

実に25週連続で1位の曲を阿久さんの曲が占めたことなる。しかもその前後、

「北の宿から」「青春時代」「S・O・S」「カルメン'77」「UFO」「サウスポー」「ダーリング」

とまさに連発だ。

(一曲だけある紫字の説明は次回に)

 

2013年12月22日にNHKで、
「歌謡曲の王様伝説  阿久悠を殺す」という刺激的なタイトルのドラマが放映された。

脚本は一色伸幸さん。

作詞家としてはまさに大活躍の阿久さんだったが、
小説『瀬戸内少年野球団』のほうは直木賞の候補になりながら選に漏れてしまう。
落選が決まった夜、1980年1月17日、阿久さんは一晩行方不明となる。
その一晩の物語。

 

阿久さんを演じたのは吹越満さん。

初めて行く場末の小さなスナックで一夜を明かすことになるのだが、
そのスナックでの客とのやりとりを通して、そのときの阿久さんの心情を描こうという挑戦的な試みが、
ピンク・レディーや岩崎宏美といった関係者へのインタビューも交えながら「ドラマ」として展開される。

圧倒的な実績をもつクリエイターの葛藤や疲労感を、単独のセリフではなく、
やりとりの中から浮かび上がらせようという意欲作だ。

 

その中、こんなセリフがあった。

スナックの客が、サザンオールスターズの『勝手にシンドバッド』をカラオケで歌い出す。
客が阿久悠であることを知った青年が絡んでくる。

 
青年
     『勝手にしやがれ』と『渚のシンドバッド』、阿久悠の代表作だ。
      ふたつまとめて蹴飛ばしてる。
     『勝手にシンドバッド』!

阿久悠
      桑田くんは才人だよ。

先ほど見た通り、108曲目と109曲目には『勝手にしやがれ』と『渚のシンドバッド』が並んでいる。

 

青年は、当時まだ発売されたばかりの、
「歩きながら音楽を聴く」という新しいスタイルを広めることになるウォークマンを
ヘッドホンと共にカウンタに叩きつけて言う。

 
青年
      これからの音楽はスピーカーじゃない。
      自分の耳に注射する。

      聴き方が変われば歌も変わる。
      時代が、阿久悠を殺す。

 

このころから「耳に注射する」音楽が増えていく。
そして、この時期を境に阿久さんの作風も変わっていく。

 

というわけで、今回はこのドラマの舞台となった1980年までのチャートとした。
1位獲得曲、140曲。
1位の曲一覧、もう少し続けたい。

田原俊彦の「ハッとして!Good」に続く141曲目は?
いよいよあの人が登場する。

 

(全体の目次はこちら

 

 

 

 

2014年3月 8日 (土)

したの? されたの?

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したの? されたの?

- 主役は『ワタシ』なんだから -

 

前回、「お茶が入りました」と言う日本語の自動詞的表現について書いたが、

高橋こうじ著「クイズで楽しむ日本語のふしぎ: あなたの日本語力を磨く100問」新水社
を読んでいたら、受動態、能動態について、おもしろい問題が出ていた。
                          (以下水色部、本からの抜粋)

 

本はクイズ形式になっているので、まずは問題から考えてみよう。

問題86 したの? されたの?

 日本語と日本の暮らしにすっかり慣れたドロシーさんとバーバラさんが、
来日当時の誤解や勘違いを笑いながら打ち明けあっている。

 ドロシー 「私は病院の待合室で周囲の人の話を聞くうちに、
       『あら、ここは引退した外科医が患者として集まる病院なんだわ』って
       思ったのです」

 バーバラ 「私は、年末に町内会の人たちと話していて、
       『ここは、慈善募金の活動家が集まっている町なんだ』って思いました」

 二人とも、日本人が「私は……をした」と言うのを聞いて、
「した側の人」だと思ったら、実は「された側の人」だったのだという。

それぞれどんな言葉を聞いたのだろう。

 

解答篇はこうなっている。

ドロシーさんは、
私は(内臓などの)手術をした」という言い方を聞き、
 みんな外科医なのだと思った。

バーバラさんは、
私は募金をした」という言い方を聞き、
 箱を持って街頭に立ち、寄付金を募ったのだと思った。

 

「私は手術をした」の解説は...

 私たちは「手術を受ける」患者の側であっても、
「私は去年、胃の手術をした」などと言います。

おそらく、「自分は手術による治療を選択、決断した」という思いが
この言い方を生み、定着させたのでしょう。

 

病院関連でよく耳にするこの能動態、私も前から気になっていた。

「手術してきた」 「傷口を縫ってきた」 「注射してきた」

どれも「された側」なのに普通はこのように能動態的表現を使う。
なぜなのだろう?

 

この話、ある酒の席でしたら、
「病院関連ばかりでもありませんよ」と反応してきたのは女性陣だった。

「パスポート用の写真、撮ってきた」もそうだし、

「髪切ってきた」もそうですよね、と。

もちろん、自分が撮ったり、切ったりしたわけではない。

 

「どうして能動態的な表現を使うのだろう?」と聞いてみると、
「たぶん」と前置きはあったものの、興味深い回答が返ってきた。

「『写真撮ってきた』『髪切ってきた』ではなくて、
 『写真を撮られた』 『写真を撮ってもらった』、
 『髪を切られた』 『髪を切ってもらった』、
 って言われた時のことを考えてみて下さい。

 反射的に『えっ、誰に?』って聞きたくなりません?

 それって、関心の主役が向うに移っちゃうってことでしょ。
 それがイャなんじゃないかな。
 もちろんそれを意識して言っているわけじゃないけれど。

 写真も髪型も、主役は『ワタシ』なんだから」

 

なぁるほど。主役は『ワタシ』なんだから、か。

 

 

この本、日本語のおもしろいネタ満載だ。

「洗う前」と「洗った後」、正反対と言ってもいい状態のものなのに
同じ「洗濯物」を使ってよく混乱しないな、みたいな楽しいネタから、
現在の心境なのに「困った」「参った」「弱った」などはなぜ過去形で言うのか。
似た動詞なのに「苦しんだ」「悩んだ」とは言わないのに。といった深い話まで、
いろいろな角度からの日本語の問題100問が並んでいる。

日本語好きな方、ぜひ挑戦あれ。

 

(全体の目次はこちら

 

 

 

 

2014年3月 1日 (土)

お茶はひとりでに入らない

(全体の目次はこちら


お茶はひとりでに入らない

- 「これって普通のことじゃないの?」 -

 

中国の伝統演劇「京劇」の専門家である加藤徹さんが書いた
「貝と羊の中国人」(新潮新書)を読んでいたら、日本語の自動詞的表現について
興味深い記述があったので、今日はそれは紹介したい。

                        (以下水色部、本からの引用)

 

恩着せがましい表現を避けて...

 日本人は、恩義の貸借関係に敏感である。

語表現でも「してあげる」「してくれる」「していただく」など、
「恩義の方向性」を示す言いかたが、発達している。

 恩義の貸借関係に敏感な日本人は、心の負担を軽くするため、
ときに変わった言いかたをする。

「お茶が入りました」という日本語も、そうである。

 論理的に考えれば、お茶がひとりでに入るわけはない。
正確には「私は、あなたのために、お茶を入れました」である。
しかし日本人の感受性では、そのような言いかたは恩着せがましく、下品である

それゆえ、相手に心理的な負担をかけまいというやさしい思いやりをこめて、
あえて「お茶が入りました」と、自動詞的な表現を使う。

「お風呂が沸きました」「ご飯ができました」などの日本語も、同様の心理を反映している。

 

このあたり、中国語ではどうなっているのだろう?

 中国語には、このような発想はない。

「お茶が入りました」にあたる中国語は、

「我○倒好茶了(ウオーゲイニーダオハオチヤーラ)」ないし
「我○倒好茶了(ウオーテイニーダオハオチヤーラ)」である。
                          :○はニンベンに尓に似た字

「給」は「あげる」、「替」は「代わりに」の意である。直訳すると

「私はあなたのためにお茶を入れてあげました」
「私はあなたに代わってお茶を入れました」 


となる。

 中国語でも「茶倒好了(チヤーダオハオラ:お茶を入れました)」と言うことはできる。
しかし中国人の感覚では、これはあくまで
「我把茶倒好了(ウオーバーチヤーダオハオラ:私はお茶を入れました)」の
「我把(私は……を)」を省略した形の、他動詞的表現なのだ。

 

直訳ではなく、「何が自然なのか」が重要だ。

 中国人は、

「私は、あなたのために……してあげる」
「あなたは、わたしのために……してくれる」など、

いちいち人間関係の「念押し表現」を好む。
それが、中国語では自然なのだ。


幼いときからそういう言いかたに慣れてきた彼らは、
「してあげる」と言うほうも、言われるほうも、恩着せがましさや屈辱を感じない

 

感受性の違いは、誤解を生むこともあるけれど...

 日本人と中国人の「恩義の貸借関係」に対する感受性の違いは、ときに誤解を生むことがある。

 日本人の挨拶では、数ヶ月ぶりに相手と再会したときも、
「この前は、お茶をおごっていただき、ありがとうございました」などと、
最後に会ったときの恩義の貸借関係を、おさらいするのが普通である。


 いっぽう中国人は、世話になっても、お礼はその場で一度しか言わない。
もし相手から数ヶ月も前のことを感謝されると、

「この人はなぜ、そんな昔のことを蒸し返すのか。
 もう一度、お茶をおごってほしいのか」と勘ぐってしまう。


 中国人も、「大恩」については、これを忘れない。
しかし、お茶をおごってもらうとか、おこづかいをもらった、などの「小恩」については、
その場で一度「謝謝」と言って、おしまいである。

日本人の目に、中国人が傲慢な人種に見えがちな一因は、ここにもある。

 

お礼を言っているのに、

もし相手から数ヶ月も前のことを感謝されると、

「この人はなぜ、そんな昔のことを蒸し返すのか。
 もう一度、お茶をおごってほしいのか」

と思われているとは、普通は夢にも思わない。

「何が普通か」「何が自然か」を簡単に共有することはむつかしいけれど、
「これは相手にとって普通のことではないのかもしれない」
「自然なことではないのかもしれない」と
一呼吸入れて、ちょっと疑ってみるだけで
ダイレクトに「なんだよ」と誤解してしまうことはずいぶん避けられる気がする。

「えっ? これって普通のことじゃないの?」

眼の前に相手がいるなら、ひと言聞いてみればいいだけだ。

感受性の違いは誤解の原因になることも多いけれど、
そこでの小さな質問が、逆に親睦を深めることに繋がっていくこともよくある。

「ガイドブック」には書いていない「普通」が一部でも共有できたときの驚き喜び戸惑いこそが、
異文化交流がもつ大きな楽しみのひとつなのだから。

 

 

(全体の目次はこちら

 

 

 

 

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