オリンピックパンツ!
(全体の目次はこちら)
オリンピックパンツ!
- 「だったら毎日洗濯しなくてもいいンじゃないの」 -
ソチオリンピックが始まった。
参加している「国と地域」を数で見ると、
2012年夏季ロンドンオリンピックへの参加は204、
2014年冬季ソチオリンピックへの参加は、冬季最多ながらも87。
夏季との比で4割強、半分以下だ。
冬季五輪の競技は寒くてかつ場所があればどこでもできる、というわけではない。
競技場にも選手育成にも多額の費用がかかる、と言われるように、
練習環境には気候以外の要因も大きく影響している。
日本から見ていると、競技が違うだけで同じ五輪に見えるけれど、
世界的に見れば、関心のある人は夏季に比べてずいぶん少ないのかもしれない。
いずれにせよ、世界最高レベルのアスリートの競演を次々に見られることは、ほんとうにたのしみだ。
「世界最高レベルの」と書いた直後にこんなネタで申し訳ないが、
「オリンピック」と聞くと、ついこの話を思い出してしまう。
学生時代、サークルの合宿中、
「Tシャツの後ろ前」の話から「下着のパンツの穿(は)き方」の話になった。
通常、男性用のパンツは幾何学的に見ると、ボールに4つの穴が開いているような構造になっている。
4つの穴とは、胴(腰)用、右足用、左足用、そして窓のことだ。
もちろん、実際のパンツでは胴、足、窓の穴の大きさは大きく異なっているが、
今、
「生地が究極の伸縮性を持っていて、
4つの穴が全く等価に開いているパンツが存在する」と考えてみよう。
どの穴も全く同じ。
どこに足を通しても、どこに胴を通してもいい。
このパンツ、穴に差がないので、後ろも前もわからないが、
いくらでも伸縮するため好きな向きに穿くことができる。
話を分かり易くするために、穴には①②③④と番号を付けておこう。
<はき方1>:①に胴、②に右足、③に左足
は、もちろん穿き方のひとつだ。
(そのとき④が窓として機能する位置にあるかどうかは今回は無視することにする)
さて、<はき方1>で穿いたパンツを一旦脱ぎ、こんどは左足を④に通して
<はき方2>:①に胴、②に右足、④に左足
と穿けば、同じパンツながら、パンツの生地と体の接触位置は<はき方1>と同一にはならない。
「だったら毎日洗濯しなくてもいいンじゃないの」と
貧乏理系学生から怖ろしい発言が飛び出して話が一気に進んだ。
ではこのパンツ、
パンツと体の接触位置が同じにならない穿き方は、いったい何通りあるのだろう。
「胴-右足-左足」の順に穴の番号を書くと
<はき方 1>:①-②-③ <はき方13>:③-①-②
<はき方 2>:①-②-④ <はき方14>:③-①-④
<はき方 3>:①-③-② <はき方15>:③-②-①
<はき方 4>:①-③-④ <はき方16>:③-②-④
<はき方 5>:①-④-② <はき方17>:③-④-①
<はき方 6>:①-④-③ <はき方18>:③-④-②
<はき方 7>:②-①-③ <はき方19>:④-①-②
<はき方 8>:②-①-④ <はき方20>:④-①-③
<はき方 9>:②-③-① <はき方21>:④-②-①
<はき方10>:②-③-④ <はき方22>:④-②-③
<はき方11>:②-④-① <はき方23>:④-③-①
<はき方12>:②-④-③ <はき方24>:④-③-②
以上24通り。
数学的に式で解こうとすると、
4つのものから3つを取り出して並べる順列と等価になるので、
4P3 = 4 x 3 x 2 = 24
となる。
つまり、24日間は、接触位置が同一とならない穿き方で過ごすことができるわけだ。
簡単に言うと24通りの穿き方がある。
で、24日間穿いたあと、ひとつの穴を使って生地を裏表に裏返せば
さらに24日間、接触位置を変えて穿き続けることができる。
合計で連続48日だ。
そして、そのときを想像したくはないが、49日目に晴れて洗濯!
「いいじゃないか。同じところがあたらないように
ずらしながら穿き続けたことになるのだから大丈夫だよ」
って、なにが大丈夫なのだ。
さて、ここまでくれば次に考えることは穴の数を増やすことだ。
穴を増やせばさらに細かく位置をずらせるようになる。
今、穴が10個あるパンツを考えてみよう。
表裏を含めて同じように考えると、その穿き方は、
10P3 x 2(表裏) = 10 x 9 x 8 x 2 = 1440
1440通り、つまり1440日間、毎日違う穿き方ができるわけだ。
(丸4年には20日ほど足りないものの)約4年だ。
すごい! 4年間穿き続けられるパンツ。 4年に一度洗濯すればいいパンツ。
名前をつけるとすればこれしかないだろう。
オリンピックパンツ!
オマケ:(というか教えて下さい。)
上の話で無視してしまった「窓」だが、パンツのこの窓、英語ではflyという。
あの「空を飛ぶ」のフライと同じ綴り。
米国で初めて下着を買うとき、袋にあったこのflyの有無の
表示の意味がわからなかった。
どうしてflyと言うのだろう。
語源または飛行との関係をご存知の方がいらっしゃいましたらぜひ教えて下さい。
(全体の目次はこちら)
« バレンタインデーから始まる? | トップページ | 「ぜんぶ雪のせいだ」 »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- この話、この雑誌にぴったり(2024.11.10)
- 新東名高速道路 中津川橋 工事中(2024.10.27)
- 新東名高速道路 河内川橋 工事中(2024.10.20)
- ついにこの日が来たか(2024.07.28)
- 二ヶ領用水(7) 鹿島田で地下に消えるまで(2024.07.14)
「言葉」カテゴリの記事
- 「こんにちは」と声をかけずに相手がわかるか(2024.11.17)
- 紙の本が持つ力(2024.11.03)
- 「宇宙思考」の3ステップ(2024.09.15)
- 漱石の神経衰弱と狂気がもたらしたもの(2024.09.08)
「科学」カテゴリの記事
- 生物を相手にする研究(2024.12.01)
- 「隠れた活動部位」こそ「心の実体」?(2024.11.24)
- 「こんにちは」と声をかけずに相手がわかるか(2024.11.17)
- 新東名高速道路 中津川橋 工事中(2024.10.27)
- 新東名高速道路 河内川橋 工事中(2024.10.20)
「社会」カテゴリの記事
- 接続はそれと直交する方向に切断を生む(2024.08.18)
- ついにこの日が来たか(2024.07.28)
- 「科学的介護」の落とし穴 (3)(2024.03.10)
- 読書を支える5つの健常性(2023.11.19)
- 迷子が知性を駆動する(2023.04.02)
hamaさん こんにちは
オリンピック開幕の時に面白いお話で笑ってしまいました。
小生も遠い昔、貧乏理系学生でしたが、せいぜい表裏と前後で4回まで大丈夫とか、
センタクは、その時点で一番まだキレイなのを「選択」するといった話を酒につまみにしていた程度で、hamaさんのような、順列・組合せのような高度な分析ではなかったですが。
でも、昔を思い出しつつ、hamaさんたちの会話をしている様子も目に浮かぶようで楽しかったです。
投稿: Khaaw | 2014年2月 9日 (日) 11時36分
Khaawさん、コメントをありがとうございます。
学生のころというのは、つまらない話題でもノッてくると妙に盛り上がれるものですよね。
「だったら毎日洗濯しなくてもいいンじゃないの」
のひと言からぐんぐん話が広がっていったあの興奮をなつかしく思い出します。
投稿: はま | 2014年2月 9日 (日) 23時19分