「違う世界の人」のひと言
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「違う世界の人」のひと言
- 大金で買える唯一のもの -
前回に続いてDNAのイントロン(いらない部分)とジャンクの話を、と始めたいところだが、
先日、人気ブログ「Chikirinの日記」を読んでいたらちょっと興味深い「お題」が目に留まった。
「お題」には提出期限があったので、今日はDNAの話を一回休み、そちらに挑戦してみたいと思う。
ちきりんさんのブログ、
「Chikirinの日記」のこのエントリーに提示されていたお題は以下のものだ。
もし自分が、
・いつもは行かない初めてのスーパーに入ったら、
・価格が驚くほど高く、周りの客の服装もいつものスーパーより、かなりハイソな感じだった。そして、
・「オーガニック納豆をください」と店員に話しかける “6歳ぐらいの女の子”を目撃した
としたら、その経験から、ブログの読者にたいして「何を伝えたい」と思うか、ぜひ考えてみてください。
(中略)
みなさんも、ちょっくらやってみてください。
ブログには、自分自身が感じたり、学んだりしたことの中から
「これは」と思ったネタだけを書こうと心がけてきたつもりだったので、
そとから与えられたお題で何かを書いた、ということはない。
でも、こういった実験も、ときには頭の体操としておもしろい気がする。
他の方が同じお題に対して、どんなことを書くのかにも興味があるし。
というわけでお誘いにのって「ちょっくらやって」みることにした。
高級スーパーで「オーガニック納豆をください」と言った“6歳ぐらいの女の子”。
元ブログを書いたJazzy-Tさんは、この少女のひと言に
>この格差たるや・・・
とショックを受けている。
その気持ちは「いつもは行かないスーパーで見た格差」というタイトルにも現れている。
このお店の「オーガニック納豆」がいくらなのかはもちろんわからないが、それでも納豆だ。
非オーガニックの安いものとの差はせいぜい百円玉で何枚か、という程度だろう。
つまり、言うまでもないことだが、金額自体にショックを受けているわけではない。
ショックを受けたのは、
“6歳ぐらいの女の子”が口にした「オーガニック納豆」という単語を通して、
少女の日常(世界)と、自分自身の日常(世界)との差が、
急にリアルに浮かび上がってきたからだろう。
年収何千万円とか、資産何億円とか言われても何も響かないが、
こういった些細なひと言が「違う世界の人」を急にリアルにすることがある。
では、これまでの自分の体験の中で、そう思ったひと言にはどんなものがあっただろう?
「違う世界の人」が急にリアルに迫ってきたひと言を
今回は「金持ち」というテーマに限定して思い出してみたい。
最初に思い浮かんだのは、Jazzy-Tさんの「オーガニック納豆」と似た小さな経験だ。
小学生にグラムという単位を教えることがあった。
説明を聞いたあと、その小学生はこう口にした。
「あぁ、レストランでステーキを頼むときに使うあのグラムのことね」
学生時代の家庭教師先ではこんな経験もあった。
家庭教師をしていた歯科医院の息子が無事、大学二校に合格した。
どちらの学校がいいだろう、と書類をもって相談に来た。
初めて見る私立歯科大の入学書類。
二校の入学時納入金の差は、
当時私が通っていた私大理工学部の学費四年分とほぼ同額だった。
納入金が、ではない。 納入金の差が、だ。
一度で読めないゼロの多い納入金一覧表に戸惑う私の横で、
「問題は国家試験なので、どちらでもいいンですけど」
思わずツッコミたくなるこんな言葉もあった。
テレビの対談番組に品のいい初老の女性が出ていた。
親の代からの資産家らしいが、
関係した事業が大きく失敗したこともあるらしく、
そのころの苦労話をしていた。
彼女曰く
「あのときは、貧しくて貧しくて、ほんとうにつらい時期でした。
あまりにも生活が苦しかったので、別荘をひとつ売りました」
お金関連で一番強いインパクトを残したのは、やはりコレ。
リーマン・ショックの前、日々億単位の金を動かして
大きく成功しているというデイトレーダーがラジオにでていた。
「大金が手に入ったら何しますか?
家を買う? 車を買う? ファーストクラスで世界旅行?
最初は買うものも、やることもいっぱいあるでしょう。
でも、ひと通り手に入れたら、次に何を買います?
家だって何軒もいらないでしょ。
お金ってね、ある一定額以上になると、もうお金しか買えないンですよ」
どれも私にとっては「違う世界の人」の言葉だ。
それにしても一度は言ってみたいものだ。
「お金ってね、ある一定額以上になると、もうお金しか買えないンですよ」
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