「小鳥とコウモリの見分け方」
(全体の目次はこちら)
「小鳥とコウモリの見分け方」
- 影が落ちるのは地面にだけではなく -
2013年9月19日は「中秋の名月」だったが、
今年は雲ひとつなく、ほんとうにきれいな月を眺めることができた。
今年の中秋の名月は満月で、と書くと
「えっ、満月じゃないことがあるの?」
と驚く方もいらっしゃるかもしれないが、
旧暦8月15日の月が「中秋の名月」なので、
正確には満月でないことが多いようだ。
実際、次に中秋の名月が満月と重なるのは8年後、
東京オリンピックの翌年2021年になるらしい。
(もう少し詳しく知りたいという方は、
AstroArtsの「名月は満月とは限らない」を参照下さい)
さて、月を見上げるといつも思い出す詩がある。
若林真理子さんという当時、高校生だった女性の作。
「小鳥とコウモリの見分け方」という詩。
言葉の力にも、朗読の力にも、
そして物理的事実にも、文字通り圧倒された記憶のある
忘れられない詩だ。
小鳥とコウモリの見分け方
若林真理子
小鳥とコウモリの見分け方は
地面に影が落ちるか落ちないかです
小鳥の影は地面に落ちますが
コウモリの影は
薄く羽の後ろに貼り付いていて落ちてこない
わたしの庭には小さなとかげが棲み
空には沢山のコウモリがいる
わたしは一度も動物を飼ったことはありませんが
命の重みを全く知らないとは思いません
落ち込んだ時に見上げた空の色が
風とまじりあってとても綺麗でした
それはまだ人が名前をつけていない美しい色
どこへいっても
わたしの影が後ろにある
かつて空を見上げた時
あの月に落ちている影が
地球の影だと知った時
そこに自分の影もあるのだと思って
影が落ちるのは地面にだけではなく
空の上にも落ちているのだと思った
まさに「やられた」という衝撃。
前半のもつパワーもすごいが、一番驚いたのは最後。
月蝕が地球の影によって起こるのであれば、
自分の影が月に落ちることもある!
なんという視点だろう。
以後、月を見上げるたびに思い出す。
「影が落ちるのは地面にだけではなく、空の上にも落ちている」
(全体の目次はこちら)
« 「なぜ車輪動物がいないのか」 | トップページ | ホテルの条件:高級感や装備では補えないもの »
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 平野啓一郎さんの言葉(2023.02.12)
- 「作らす人」「育てる人」吉田璋也(2023.01.15)
- 「陶器が見たピカソの陶器」(2023.01.08)
- 美しい物はどこから生れるか(2023.01.01)
- 経(たて)糸は理知、緯(よこ)糸は感情(2022.12.11)
「言葉」カテゴリの記事
- AIには「後悔」がない(2023.09.24)
- 苦しめるのは自らを守ろうとするシステム(2023.09.17)
- あそこに戻れば大丈夫(2023.08.27)
- ドラマ「すいか」のセリフから(2023.08.13)
- じぷんの記憶をよく耕すこと(2023.08.06)
「科学」カテゴリの記事
- AIには「後悔」がない(2023.09.24)
- 対照的な2つの免疫作用(2023.09.10)
- 口からではなく皮膚からだった(2023.09.03)
- 研究者から見た「次世代シークエンサ」(2023.04.30)
- ゲノム解析が歴史解釈に与える影響(2023.04.23)
コメント