« 「おーい でてこーい」 | トップページ | 「なぜ車輪動物がいないのか」 »

2013年9月 8日 (日)

「絵とき ゾウの時間とネズミの時間」

(全体の目次はこちら


「絵とき ゾウの時間とネズミの時間」

- 動物は、それぞれの時間の中で生きている。 -

 

今日は子供向けの絵本から。

本川達雄著 「絵とき ゾウの時間とネズミの時間」 福音館書店
(以下水色部とグラフは引用・抜粋、ひらがなは一部漢字に)

この本は、
同じ著者による中公新書のロングセラー「ゾウの時間 ネズミの時間」
を元にしたものだが、今回は「絵とき」の方に内容を絞って紹介したい。

(照らし合わせると両者で一部数字が違っている部分があるが、
 主意に影響はないので、そのまま引用している)

 

さて、始めよう。

背たけが小人の12倍ある大男ガリバーが小人国に流れ着いた。

さて、ガリバーにどの程度の量の食事を用意したらいいだろうか。
小人が食べる量を1としたとき、身長が12倍のガリバーは
どれくらいの量、食べると考えられるだろうか?

 

【身長比説】

身長が12倍なのだから12倍。

 

【体重比説】

体重は体積、つまり長さの比の3乗に比例するから
  (12x12x12)=1728倍
ある。
だから1728倍。

  (絵本では、一辺1のサイコロが、一辺2のサイコロには8個入ることを示し、
   2x2x2=8を説明することで「3乗に比例」を理解させようとしている)

 

【表面積比説】

恒温動物の熱は、体の表面を通して外へ逃げていく。
食物を食べて体の中で燃やして、逃げた分の熱をつくりだねばならぬ。
体の表面積とともに逃げる熱がふえるから、
表面積の広いぶん、たくさん食べなければならない。

表面積は、長さの比の2乗に比例するから
  (12x12)=144倍
ある。
だから144倍。

  (絵本では、一辺1のサイコロの表面積は(1x1x6面=) 6、
   一辺2のサイコロの表面積は(2x2x6面=) 24、で6の4倍であることを示し、
   2x2=4倍を説明することで「2乗に比例」を理解させようとしている)

 

さあ、どれが正解だろうか?

正解は185人分。

表面積比説が一番正解に近い。

 

【体重と食べる量の関係】

体重と食べる量の間には、決まった関係がある。

こんなグラフが載っている。

010s1

理工系の学生にでもならないと書く機会のない
両対数のグラフを小学生向けの絵本にさらりと載せてしまっている。

そう言えば、先日、現役の工学部の学生とグラフについて話す機会があった。

いまやパソコンのアプリの [両対数] のボタンを押すだけで
一発でグラフが書けるようになっているため、
(慣れないと書きにくい)両対数のグラフ用紙に、
ひとつひとつ手でプロットする機会は、
工学部の学生ですらほとんどないようだ。

 

閑話休題。

【ゾウは小食?】

ゾウはネズミより10万倍も重いけれど、食べる量は約3000倍。
ゾウって意外と小食なんだ!

小食だということは、体重1キログラムあたり、どれだけ食べるかを見るとはっきりする。
大きい動物ほど、体重のわりには食べない。

011s1

これを見ると、大きい動物ほど体重のわりには食べないことがよくわかる。

小さいものほどせかせかしている。
しょっちゅうエサを食べている。
ネズミはたった4日で自分の体重と同じ重さのエサを食べてしまうが、
ウシは自分と同じ重さのエサを食べるには、なんと1か月以上もかかる。

小さいものは、せかせか生き短い一生を終え、
大きいものは、長い一生をゆったりとおくる、
一見そのように思えるが、そう単純に比較していいのだろうか。

 

ぼくたちの心臓は、一分間に60-70回打つ。一秒にほぼ1回、ドキンと打つ。
ハツカネズミは、一分間に600回近く打つ。
ゾウは一分間に30回。

大きいものほど、ゆっくりと心臓は打っている。

心臓が一回打つ時間と体重の関係と
息を出し入れする時間を、いっしょのグラフに書くとこうなる。

020s1

【ゾウもネズミも一生の間に心臓は15億回】

グラフの傾きが同じ。
つまり、ゆっくりになるなり方が心臓も肺も同じ。

呼吸の間隔の時間を、心臓のドキドキの時間間隔で割ると、答えは4。

体重が増えるにつれて、時間はゆっくり長くなる。
ゆっくりになるなり方は、肺も心臓も同じ。
ほかの時間も、同じようにゆっくり長くなっていく。

寿命も同じ。

ネズミでもゾウでも、体重に関係なくどの動物も、
息を一回吸って吐く間に、心臓は4回打つ。

ゾウはネズミより、ずっと長生きだけれど、
一生の間に心臓が打つ回数は、ゾウもネズミも同じなのだ。

心臓が15億回打ったら、みんな死ぬ。

 

ゾウは、体重あたり小食だった。でも、ネズミよりもずっと長く生きる。

【体重あたり、一生の間に食べる総量も同じ】

体重あたりの食べる量は、体重が増えると少なくなっていったよね。
この少なくなり方が、時間のゆっくりになるなり方と、なんと同じなのだ。

だから、ネズミもゾウも、
1キログラムの体重にあたりにして比べれば、一生に食べる量は同じ。

一生の間に、活動する量(使用するエネルギー量)も同じ。

 

動物にとっての時間の基準とはナンなのだろう。

ネズミの一生は数年。
ゾウはその何十倍も長く生きる。

ネズミはすぐに死んでしまって、かわいそう?

われわれの時計を使えばそうかもしれない。

でも、もしそれぞれが動物の心臓が一回打つ時間を基準にすれば、
ゾウもネズミも、まったく同じだけ、生きて死ぬことになる。


短くても長くても、
一生を生き抜いた感想は、案外同じかもしれない。

ネズミにはネズミの時間。ネコにはネコの時間。
イヌにはイヌ時間。ゾウにはゾウの時間。
動物たちには、それぞれにちがった自分の時間がある。

それぞれの動物は、それぞれの時間の中で生きている。

 

 

(全体の目次はこちら

 

 

 

 

« 「おーい でてこーい」 | トップページ | 「なぜ車輪動物がいないのか」 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

科学」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1756499/53189864

この記事へのトラックバック一覧です: 「絵とき ゾウの時間とネズミの時間」:

« 「おーい でてこーい」 | トップページ | 「なぜ車輪動物がいないのか」 »

2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ