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2013年8月18日 (日)

玉はどこに向かって転がるの?

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玉はどこに向かって転がるの?

- 山頂間に雨樋を渡して -

 

今年は世界遺産に登録された影響もあって、
富士山への登山者もずいぶん増えているようだ。

日本で一番高い山は言うまでもなく富士山だが、
2位、3位をご存知だろうか?

子供のころ
「2位の山、知ってる?」
の質問に
「知らねぇ」
と答えると
「よく知ってたね、正解!、2位は白峰(しらね)山でした。」
なんてクイズを出された記憶があるのだが、
白峰三山のひとつ、北岳が標高では2位になる。

(この北岳、再確認しようと調べてみると、2004年に国土地理院が
 最高点の標高を3192mから3193mに改定している。
 山頂の三角点よりも、南の岩盤の方が高いことが確認されたためたらしい。)

3位は奥穂高岳3190m。

順位  山名(山頂名)   標高(m) 
 1   富士山   3,776
 2   北 岳   3,193
 3   奥穂高岳   3,190

さて今日は、2位と3位の山、北岳と奥穂高岳を使ったクイズを出題したい。

(このクイズ、物理学者の都筑卓司さんの著作で読んだ気がしていたので
 手元の本を探したのだが、見つけることができなかった。
 オリジナルの作者をご存知でしたらぜひ教えてください。)

 

【問題】

2位北岳の山頂と3位奥穂高岳の山頂間に、
全くたわまない、つまり完全な直線を維持できる
長い雨樋(あまどい)を渡すことにする。

実際には山頂は87km離れているので、
長さ87kmの長いまっすぐな雨樋、ということになる。

今、標高が3m高い北岳の山頂側に立ち、
雨樋に玉を置き、手を放す。

「雨樋が水平でない限り、玉は必ず低い方に向かって転がる」
を前提としたとき、
このあと玉はどういう動きをするだろうか。

低い方の奥穂高岳山頂まで転がって行くだろうか。

 

Yahoo!の地図を借りて位置を書くと
下記中央の紫の線のようなルートとなる。
右下(S)の位置が北岳山頂、左上(G)の位置が奥穂高岳山頂である。

1_2

さて、北岳山頂に置かれた玉は、ゆるやかな坂を転がり
奥穂高岳山頂に到達するだろうか。

もし、到達しない、ということであれば、玉はどうなってしまうのだろうか。

「どんなに緩やかでも、傾いている以上、
 玉は低い方に転がるンでしょ。
 だったら奥穂高岳山頂に到達するよ」

と思った方。
こんな図をイメージしていないだろうか。

1

ところが、この図では大事なことが忘れられている。
ヒントは、山頂間が87kmも離れていること。

そう、地球は丸いのだ。

つまり、実際にはこんな感じになる。

2

2枚の図の違いがわかるだろうか。

 

もう少し極端に書いてみよう。
そうすると一目瞭然。

3

そう、距離のある山頂間に渡した雨樋は、
中間地点の標高が両端よりも低くなるのだ


今、地球のジオイドが半径6371kmの完全な球と仮定して計算してみると、
今回の問題の雨樋の中央点付近の標高は約3043m。
つまり、両脇の山頂よりも、約150mも低くなる。

(「地球にロープを巻きつけて」は、
 中学一年生でも解けるシンプルな一次方程式を使って計算できたが、
 こちらの計算にはどうしても高校一年生程度の三角関数の知識が必要。

 昔は理工系の学生しか持っていなかった関数電卓も
 今やPCやスマホのアプリとしてだれでも簡単に入手できるので、
 ご興味があれば検算下さい。)

 

よって玉は、3m低い山頂ではなく、
150m低い雨樋のほぼ中央を目指して転がり「落ち」、
最終的にはそこに留まることになる、が正解


中央点付近の一番標高の低い部分から見ると奥穂高岳山頂は、
雨樋を「登って」行かなければならないからだ。

(今回は、地球が丸いために、
 直線の雨樋は場所によって標高が変わり、
 中央点付近は両脇の山頂よりもずっと低くなっている、
 ということが伝えたかった点なので、
 位置エネルギー ⇒ 運動エネルギー ⇒ 位置エネルギーの変換が、
 ロスなく行われるとしていいならば、
 中央点の標高が低かったとしても
 奥穂高岳山頂までボールは登るはず、という
 ロスのないエネルギー変換の話は対象外としています。)

 

同じように考えると、こういう図になる場合もある。

4

具体的な例で言うならば、(現実的ではないけれど)こんな状況。

* 身長170cmの二人(AとB)が、頭に雨樋を乗せて離れていくと、
 わずか10km離れただけで、雨樋の中央は接地してしまう。
 言い換えると、
 10km離れると、「地球に邪魔されて」どんなにいい望遠鏡を使っても
 AからBは見えなくなる。
 (目の位置はもっと低いので、実際にはもっと手前で見えなくなってしまう)

* 富士山(3776m)Fの他に、
 直線距離で約440km離れた岡山あたりに
 もうひとつ同じ高さの山Gがあったとする。
 ふたつの山の間が全部標高0mの平地だったとしても、
 FとGの山頂間に直線の雨樋を渡すことはできない。
 なぜなら雨樋の中央部分が接地してしまうから。

 

地球はずいぶん「丸い」のだ。

 

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