« 「モリー先生との火曜日」 | トップページ | 「おーい でてこーい」 »

2013年8月31日 (土)

「ブルーグラス 箱根フェス2013」

(全体の目次はこちら


「ブルーグラス 箱根フェス2013」

- キャンプ場の夜空の下に -

 

2013年8月24日夜、
Hakone Sunset Creek BLUEGRASS FESTIVAL(箱根フェス)に行って、
ブルーグラスにどっぷりと浸ってきた。

ブルーグラスとは、
アメリカ人ビル・モンローによって確立された
アメリカに入植したスコッチ・アイリッシュの伝承音楽をベースにした
音楽の一スタイルのこと。

ブルーグラスという名は、彼のバンド名に由来している。

がブルーグラスの説明となるが、これだけでは「なんのこっちゃ?」という感じだろう。

ディズニーランドをご存知の方は、
「カントリーベア・シアター」のクマたちが演奏するカントリー調の曲、
というのが一番イメージしやすいかもしれない。

ギター、フラットマンドリン、フィドル(ヴァイオリン)、
バンジョー、ドブロ、ウッドベース
といった小規模な楽器編成にボーカル(歌)が加わって演奏される。
曲はアップテンポの曲が多い。

百聞は一聴(?)にしかず。

今回のフェスで聴いた「BLUEGRASS☆POLICE」というバンドの演奏が
YouTubeにアップされていたので、「こんな感じ」ということで、
3分弱、一例としてご試聴あれ。

「ワンマイク」と呼ばれる一本のマイクを奪い合うように演奏するスタイル。
楽器の音の濃淡を [楽器ごとのマイク+ミキサー] に任せるのではなく、
「動き」で表現しているので見ていて楽しい。

ワンマイクではないが、「Bremen Backpackers」というグループの演奏は、
こんな感じ。

 

箱根フェスは、プロ、アマを問わずブルーグラスバンドが
まさに日本中から集まって、3日間を過ごす年に一度のお祭りだ。

演奏するバンドの数は3日間でなんと180以上!
ステージはひとつしかないので、
すべてのバンドがそこで演奏を披露することになる。

「夕日の滝」という滝のそばのキャンプ場に、
びっしりとテントを張って、
多くの人が「朝から晩まで」、
と言うか「朝から明け方まで」音楽とともに過ごしている。

Img_6054s

ちなみに、上に貼った「BLUEGRASS☆POLICE」の演奏も、
実際に演奏しているのは25日の午前2時過ぎ、真夜中だ。

 

ステージはキャンプ場から少し登った木立の中に作られている。

Img_6060s

回りはゴツゴツした岩が飛び出していたりして、
どこにでも腰をおろせるような広い平らな草原ではないが、
各自キャンプ用のイスを持ち込んだりして、
思い思いの姿勢で楽しんでいる。

Img_6205s

Img_6110s

客席後方の木と木の間にハンモックを貼り、
寝転がって聴いている人もいる。
見ると、ハンモックには、
小さなクーラーボックスまでぶら下がっており、
手を伸ばせば冷えたビールにも寝たまま手が届く。

私が聴いたのは24日午後8時から25日午前3時までの約7時間。
1バンドの持ち時間は10分。
曲はすべてブルーグラス調のものだが、
次々と演奏者が変わるので飽きることはない。

 

「夕日の滝」が近いので、滝の音が常に小さく聞こえている。

Img_6147s

ステージの明るい照明に引き寄せられて、
かなり大きな虫も元気に飛び交っている。
最初のころはアブラゼミが多かったが、
夜が更けるにしたがって虫の種類も変わってきた。

風が吹けば葉擦れの音が、森の会場全体を包みこむ。

時間とともに空気がひんやりしてくると、
聴衆の中に長袖を羽織る人が増えてくる。

 

途中、キャンプ場内をうろつくと、
あちこちから小さな演奏が聞こえてくる。

Img_6134sl

Img_6117s

これから演奏するバンドが
リハーサルを兼ねて練習していたり、
すでに演奏が終わったにもかかわらず、
興奮冷めやらずセッションを続けていたり、
小さなランタンを囲んで、気の向くままに音を合わせていたり、
だれに聞かせるでもなく自分たち自身が楽しんでいる。

Img_6174s

 

一方、近くのテントわきでは、モウモウと煙をたてて、
バーベキューで盛り上がっている。
肉を頬張り、酒を飲んでの歌声なのに、一部きれいにハモっていたりする。

Img_6123s

 

ここでの主役はもちろん音楽だが、
音楽だけが威張ってはいない。

音楽があり、食事があり、酒があり、おしゃべりがあり、
滝の音があり、肉の焼けるにおいがあり、
歌っている人があり、楽器を抱えている人があり、
そして、キャンプ用の狭いベッドで気持ちよさそうに眠っている人がいる。

山の中の小さなキャンプ場の夜空の下に、全部ある。

 

Img_6143s

会場に戻ると、ステージの演奏は続いていた。

Img_6197s

出番を待つウッドベースとドブロが草の上に置かれている。

自然も人間も音楽も、なんの仕切りも区切りもなく、
自由に混ざり合っている感じがなんとも心地よい。

こういう開放感は夏フェスならでは、だ。

 

午前3時、最後のバンドの演奏が終わった。

アナウンスが流れた。

「以上で、本日のプログラムはすべて終了です。
 次のプログラムは朝7時40分から始まります」

ステージ会場から引き上げてきたキャンプ場の一部では、
最後の演奏を引き継ぐように、再び音を出し始めるグループがあった。
黒い山に演奏がこだましている。

 

プログラムが終ったのだから寝る。
皆が寝るのだから音は出さない。
そういう、常識的な縛りが、
このフェスにおいては、いかに小さくてつまらないことか、
そういうことが、全員で気持ちよく共有できている空間に流れる音楽は、
深夜であっても、じつに軽やかで生き生きとしている。

 

(全体の目次はこちら

 

 

 

 

« 「モリー先生との火曜日」 | トップページ | 「おーい でてこーい」 »

文化・芸術」カテゴリの記事

音楽」カテゴリの記事

舞台・ライブ」カテゴリの記事

コメント

hama-1987さん こんにちは
Bluegrass 30年以上前に北海道で少しだけやっていました。そのころから箱根フェスにも、いつか行きたいと思っていましたが、ついに行けないまま、今や、バンジョーもケースの中に眠ったままです。
今も札幌のフェスも健在なようで、こちらは、今年39年目だったようですが、箱根は50年近いのかなあ
Khaawでした

Khaawさん、
コメントをありがとうございます。
最初に出演してから20年以上にもなるような話をしていたバンドもあったので、
ずいぶん古くからやっているンだなぁ、と思って聞いていましたが、
50年近くにもなるンですか。
長い歴史があるンですね。全然知りませんでした。

キャンプ場内に溢れている、好きな音楽を心ゆくまで楽しもうという
自由な空気がほんとうに素敵で、すっかりリフレッシュできました。

耳だけではない、五感で感じるリセット感は、
鬱積していたものを洗い流してくれるようで、
まさに身も心も軽くなったような気分です。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「ブルーグラス 箱根フェス2013」:

« 「モリー先生との火曜日」 | トップページ | 「おーい でてこーい」 »

最近のトラックバック

2023年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
無料ブログはココログ