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2013年7月 7日 (日)

「ひとこと多い」新明解国語辞典

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「ひとこと多い」新明解国語辞典

- 実はカッコウ? -

 

今日は敬体でいきます。

2013年7月1日の朝日新聞天声人語に

確かに新明解国語辞典のような
「ひとこと多い」個性派を読み出すと
やめられなくなる。

とありました。

三省堂の新明解国語辞典は、

新解さんの謎

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をはじめ、複数の本が「新解さん」と呼んで
「ひとこと多い」部分を紹介している
まさに味のある国語辞典です。

今、私の手元にあるのは第5版なのですが、
そこからいくつか
「ひとこと多い」部分を見てみましょう。

以下、水色部は、
新明解国語辞典 第5版からの抜粋です。

天声人語でもチラッと触れられた、
この辞書の代表的な(?)解釈、
[恋愛]も旧版から
一部変わってしまったものの、
他の辞書の追随を許していません。

恋愛
  特定の異性に特別の感情をいだき、
  高揚した気分で、
  二人だけで一緒にいたい、
  精神的な一体感を分かち合いたい、
  出来るなら肉体的な一体感も
  得たいと願いながら、
  常にはかなえられないで、
  やるせない思いに駆られたり、
  まれにかなえられて
  歓喜したりする状態に
  身を置くこと。

「肉体的な一体感を得たい」とは
ずいぶん直接的な表現ですが、
「常にはかなえられないで」とか
「まれにかなえられて」とか
たった一文の中でダイナミックな世界が
展開されています。

[悪妻]については
ここでも引用しましたが、
「核心の一言」を
誤解や反論を恐れずに
思い切って使ってしまっていることが
この辞書の
魅力のひとつなのかもしれません。

のろける
  妻(夫・愛人)との間にあった
  (つまらない)事を
  他人にうれしそうに話す。

他人にとっては、つまらなくていいンです。
のろけ話は。


悪妻
  第三者から
  「わるいつま」と目される女性。
  [当の夫は
   案外気にしないことが多い]

午前様
  御前様のもじり。宴会などで、
  真夜中になってから帰宅する人。
  [仕事で遅くなった人は指さない]

どら猫
  [飼い主がなかったりなどして]
  人の家の台所などをねらい、
  盗み食いをするずうずうしい猫。


号泣
  (ふだんは泣かない大の男が)
  天にも届けとばかりに
  悲しみ泣くこと。

「天にも届け」って。

「かぞえ方」が妙に丁寧なのも目を引きます。
はい、では問題です。
次のものはどう数えるでしょう。
簡単なところから「食パン」は?

食パン
  - かぞえ方:一斤。
  スライスしたものは一枚。
  三斤一続きのものは一本。

言われれば簡単だけれど、
「食パン」一語で3つとも
答えられましたか?

次は難問です。「もやし」のかぞえ方は?

もやし
  - かぞえ方:小売の単位は一袋

そりゃないだろう、という条件ではありますが、
現実的には一番よく使う単位かもしれません。

こんな硬いのから、

読書
  [研究調査や
   受験勉強の時などと違って]
  一時(いっとき)現実の世界を離れ、
  精神を未知の世界に遊ばせたり
  人生観を確固不動のもの
  たらしめたりするために、
  (時間の束縛を受けること無く)
  本を読むこと。

  [寝ころがって漫画本を見たり、
   電車の中で週刊誌を
   読んだりすることは、
   勝義の読書には含まれない]

人生経験
  人生の表街道を
  順調に歩んで来た人には
  とうてい分からない、
  実人生での波瀾に富み、
  辛酸をなめ尽くした経験。

  [言外に、
   真贋の見極めのつく確かさとか、
   修羅場をくぐり抜けてきた
   人たちの一大事に対する
   覚悟の不動とかを
   含ませて言うことが多い]

こんな複雑な味のあるものまで

色香
  離れてみた
  女性の顔かたちの美しさと、
  近寄って感じる香料と
  体臭の交じった、
  なんとも言えない魅力。

どこを開けても飽きません。

ギャル
  [流行に敏感で、
   性的にもあけっぴろげな]
  若い女の子[原宿-]

世の中
  同時代に属する社会を、
  複雑な人間模様が
  織り成すものととらえた語。

  愛し合う人と憎みあう人、
  成功者と失意・不遇の人とが
  構造上同居し、
  常に矛盾に満ちながら、
  一方には持ちつ持たれつの
  関係にある世間。


ごろつき
  弱みを持つ人を
  いつもねらいながら、
  ゆすりやたかりを働いたりする
  悪い奴。
  [無職・
   住所不定であることが多い]

悪いヤツ、さらに住所不定無職、
なんて現実味のある説明でしょう。

なぜか食の好みもモロに出ています。
魚貝類がお好みのようです。

ばか貝
  大きさはハマグリくらいの二枚貝。
  波の静かな、晴れた日に、
  貝の口から舌のような
  赤い足を出す。

  むきみを「あおやぎ」と言い、
  貝柱がおいしい。数え方:一枚

「波の静かな、晴れた日に」なんて
ふつうは図鑑にも書いてありません。
「おいしい」なんて書きますかね、辞書に。

他にもちょっと魚貝類を調べてみたら、
ここにも。

あこう鯛
  タイに似た深海魚。
  顔はいかついがうまい。
  [カサゴ科]
  かぞえ方:一尾、一匹、一枚

あわび
  海底の岩にくっついてすむ巻貝。
  貝殻は耳形で、
  二枚貝の片側のように見える。
  美味。


例文との組み合わせも絶妙。傑作はコレ。

おしい
  二.[まだあまり使ってなかったり
  他にもっと使い道があると思うので]
  そのままほうっておくに
  忍びない感じだ。
  「Aには-[=もったいない]
   くらいの細君だ」

Aさんの細君は
[まだあまり使ってなかったり
 他にもっと使い道がある]のでしょうか。


くるう
  働きはするが、
  そのものの正常な機能が失われる。

  「競輪(女)に-
   [=おぼれて、生活のリズムが
    すっかり失われる]」

「くるう」の例文が競輪と女ですから。

飛び出す
  -出てはいけないはずの物が
   そとに出て来る。

  「Yシャツが飛び出している/
   書棚から本が一冊飛び出している/
   ぎっくり腰で軟骨が-」

なにも軟骨を...

焼く
  (灰になるまで)燃やす。
  「ごみを-/死体を-/
   民家二棟を-」

他になにか焼くものはないのでしょうか。

いちどに
  「-ビール一ダースを飲み干した/
   -酔いがさめた」

さすがに一ダースは
ちょっと飲みすぎでしょう。

こんな角度から
細かい指摘をしているものもあります。
あれは実はカッコウ?

鳩時計
  ..[時刻を知らせる時、
  巣から鳩(=実はカッコウ)が
  出てきて鳴く。
  今は電池式がほとんど]

何版であれ、
お手元にあればぜひ覗いてみて下さい。

新明解国語辞典 第八版

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