地球にロープを巻きつけて
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地球にロープを巻きつけて
- 地球の次はバレーボールで -
暑い日が続いているが学生さんは夏休みかな、というわけで(?)、
今日は中学一年生でも簡単に解ける数学の問題をひとつ紹介したい。
数学的にはごくごく簡単な一次方程式で解けてしまうものだが、
最初は式で解こうとせず、まずは直感で考えてみてもらいたい。
【問題】
いま、地球を完全な球とします。
この地球の赤道上にぴったりと巻き付くように
ちょうど一周分ロープを巻き付けます。
ロープはぴったりと巻き付いているので、
本体の球からは1mmも浮き上がってはいません。
巻きつけて一周分のロープの長さが明確になったら、
そのロープを1m(メートル)だけ長くします。
この1m長くなったロープで再度、円を作ると、
地球よりはちょっとだけ大きくなります。
さて、問題。
長くなったロープで円を作り、
もとの地球から均等に浮くようにしたとき、
(両者の中心が同じ位置にあるようにしたとき)
1mだけ長くなったロープによる円は、
地表からどれくらい浮くことになるでしょう。
赤道に巻くというのはこういう感じ。
ピッタリ巻きつけた時を真上から、と言うか北極側から見るとこんな感じ。
赤道一周で約4万km。それを1mだけ伸ばすのだから、
「4000万分の1」だけ長くなったことになる。
このごくわずかに長いロープで再度円を作って、地球に巻きつけた時
ロープはどれだけ浮くことになるか、という問題だ。
たった1m。緩むことは緩むだろうが、「浮く」と言えるほど浮くだろうか。
では、ちゃんと解いてみよう。
ロープを1mだけ伸ばして浮いた図をちょっと大袈裟に書いてみた。
この図のrを求めよ、というわけだ。
地球の半径をRとすると、地球ピッタリ(大円)の円周は、
円周 = 直径x円周率(Π:3.14...) = 2 x R x Π = 2ΠR
面倒なので単位はすべてm(メートル)に揃えて計算するとすると、
1m付け足したロープの長さ = 2ΠR + 1
地球から均等に浮かせた距離をrとすると、
ちょっと大きい新しい円は半径が(R+r)ということになる。
よって、
地表からr(m:メートル)浮き上がった円の円周 = 2Π(R+r)
つまり、半径(R+r)の円の円周が(2ΠR + 1)ということになる。
2Π(R+r)= 2ΠR + 1
これが、解くべき方程式。
中学一年生でも問題なく解けるレベル。
2ΠR + 2Πr = 2ΠR + 1
2Πr = 1
r = 1/ 2Π = 1/(2x3.14) = 0.159 (m) (*1)
じぇじぇじぇ!(失礼しました。「あまちゃん」を見ていない人には意味不明ですね)
なんと 0.159(m) = 15.9(cm) 15cm以上も浮くのだ!
約4万kmもある赤道に巻いたロープをたった1m伸ばしただけで、
4000万分の1だけ伸ばしただけで、地表から16cm近くも浮くなんて。
しかも、解がいい。 もう一度(*1)を見てみよう。
r = 1/ 2Π
この式にRは含まれていない。
つまり、rは、もとの半径Rにまったく依存しない。
言い換えれば、地球に巻こうが、パレーボールに巻こうが、ピンポン球に巻こうが、
一度巻いたあと、そのロープに1mだけ継ぎ足して再度均等に浮かせるように巻くと、
どの場合でも同じだけ、つまり15.9cm浮く、というわけだ。
直感とのギャップ、最初に巻いたものの半径に依存しないという式。
最初に巻きつけたものがバレーボールだったら、
解答を見てもそれほど驚かなかった気がする。
「最初に巻いたものの半径に依存しない」ということが、
地球を持ち出すことで最も効果的に使われている。
じつによくできている問題だと思う。
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