便は便りで、かつ・・・
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便は便りで、かつ・・・
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青木皐『人体常在菌のはなし -美人は菌でつくられる-』(集英社新書)
を読んでいたら、興味深い記述があった。(以下水色部、引用・要約)
腸内常在菌と皮膚常在菌に関して印象に残った2つのトピックスを紹介したい。
まずは腸内常在菌から。
健康な人の腸内には400種を越える、
総数で約100兆個もの腸内細菌がバランスよく住みついています。
とのこと。
その腸内常在菌がバランスよく育っているのかどうかは、
ウンチを見ればわかるのだが、そのウンチ、
主成分は「食べ物を消化したカス」だと思っていないだろうか。
ウンチというものは、
* 食べ物が分解された残りのカスと
* 腸内常在菌やその菌の死骸などと
* 水分
で構成されている。
では、「食べ物が分解された残りのカス」は
どの程度の比率を占めるのだろうか。
数字を見て目を疑った。
水分以外の固形物のうち、食べ物のカスはほぼ三分の一、残りが菌である。
繊維の多いイモ類、玄米などをたくさん食べている人ならば
食べ物のカスは二分の一から三分の二程度になるかもしれないが、
現代日本の平均的食事からすると、
食ベカスはせいぜい三分の一程度に過ぎないと思われる。
平均的食事をしている人にとって、ウンチの主役は「食べ物のカス」ではないのだ。
「食ベカスはせいぜい三分の一程度に過ぎない」らしい。
その分、ウンチは腸内細菌の様子を伝えるすばらしい健康バロメータとも言える。
では、どんなウンチがいいのか。
詳しい説明は本に任せるが、一言で言えば、「黄色くて軽い」がキーワード。
黒くて硬くてくさいのは×。
まさに内臓からの便り、便とはよく言ったものだ。
もうひとつは、皮膚常在菌の話。
こちらは、皮膚全体で一兆個。
あなたの皮膚がしっとりつやつやしているのならば、
表皮ブドウ球菌という常在菌がとても元気に暮らしている証拠だ。
暮らしというのは、必要なものを取り入れ、不要なものを出すことで、
この場合は、皮脂や汗の成分を取り入れ、酸を出すのである。
腸内常在菌と同様、出したもののことを産生物質とよぶ。
平たくいえば、表皮ブドウ球菌は、皮脂や汗を「エサ」にし、
酸性の「オシッコやウンチ」をして皮膚上で暮らしているということである。
このオシッコやウンチが皮膚上にあり、それが、さらに汗や皮脂と混ざって、
皮膚はしっとりするのだ。
「しっとりつやつやの肌」は、皮膚上にある常在菌のおかげ。
しかも常在菌の「オシッコやウンチ」のおかげ。
あまり聞きたくない説明かもしれないが、
それが事実ということであれば、菌とは仲良くやっていくのが一番だ。
菌だけでも気持ち悪いのに、そのオシッコとウンチなど耐えられないと、
やっきになって身体を洗い、抗菌パウダーか何かをふりかけたとしよう。
あなたの皮膚は、カサカサとなり、かゆみが出たりする。
あるいは、部分的に異常に脂っぼくなってきて、ブツブツができたり、
ジクジクしたりし始める。
その状態は、表皮ブドウ球菌とは違う種類の菌が増殖し始めた証拠である。
先述したように、しっとりつやつや肌に多く棲む
表皮ブドウ球菌の産生物質は弱酸性であり、
皮脂の脂肪酸とともに、皮膚表面を弱酸性に保つ。
病原菌の多くはアルカリ性を好むから、弱酸性に保たれた皮膚に付着しても、
そこで増殖したり皮膚内部に侵入したりはできない。
つまり、皮脂と表皮ブドウ球菌の産生物質は、
皮膚のバリアの役目を果しているのだ。
「菌なんかいやだ!」と無菌をめざして身体中の皮膚を洗いまくったとすると、
表皮ブドウ球菌が少なくなり、皮膚はアルカリ性に傾き、
外からアルカリ性を好む病原菌が付着し、
増殖を始めてトラブルを起こすことになる。
人間と常在菌は共存共栄関係にあるのだ。
清潔志向が行き過ぎてもいいことはなにもない。
「ウンチのうち、食ベカスはせいぜい三分の一程度」
「しっとりつやつやの肌は、皮膚上にある常在菌のオシッコやウンチのおかげ」
菌との共存は、その便との共存でもある。
オマケ:
常在菌とは関係がないが、便に関する小ネタを二つ。
(A1) 以前、あるお医者さんがラジオで言っていた。
「大便は一週間でなくても、命に関わるようなことはゼンゼンないが、
小便は一週間でなければ死んでしまう。
体にとっての重要性という意味では、むしろ小を大と呼んでもらいたいくらいだ」
(A2) オシッコやウンチと聞くと、いつも思うこと。
誰が名付けたかは知らないが、液体と固体を見て、
「小」と「大」で表現しようとした先人のセンスには感服してしまう。
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