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2013年5月 1日 (水)

外国人には効かない薬?

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外国人には効かない薬?

- たったひとつの製品の売上が年間1兆円以上の業界って! -

 

肺がん治療薬「イレッサ」の副作用をめぐる訴訟で、
2013年4月12日、遺族側の全面敗訴が確定した。
国と輸入販売元に賠償責任なし、となったわけだ。

訴訟や医薬品自体については、門外漢ゆえ全くコメントできないが、

「イレッサ」については、
佐藤健太郎さんの著書「医薬品クライシス―78兆円市場の激震」(新潮新書)に、
次のような記述があった。(以下水色部 引用・要約)

日本と外国で大きな薬効の差が見られた例として取り上げられている。

 日本と外国で大きな薬効の差が見られたケースとして、
副作用問題で騒がれた抗ガン剤イレッサのケースがある。

この薬は珍しく世界で最初に日本で承認が下りたが、
重い間質性肺炎という副作用が発生し、
数十件の死亡例が発生して大問題となった。

しかし多くの国では肺炎の副作用もほとんど見られなかった代わりに薬効の方も弱く、
医薬としての承認が得られていない。

こうした作用の差は何に由来するのか、残念ながら詳細はわかっていない。

「外国で承認されているのに、日本で承認が遅れている」
という薬の話はときどき聞くが、こういう逆の例もあるのだ。
しかも、単に承認手続きの早い遅いの問題ではなく、
「薬効が弱く、医薬として承認されない」国もあるとは。

この本には、この他にも医薬品に関する興味深い話が詰まっている。

 

ちょっと乱暴な要約見出しをつけながら一部その内容を紹介したい。

まず最初に、この本が対象としている「医療用医薬品」について。
「医療用医薬品」とは病院で処方される薬のこと。
この本が「医療用医薬品」だけを対象としているのはその規模が
ドラッグストアで売っている一般薬とはまさにケタ違いだからだ。

 

【医療用医薬品のケタ違いの規模】

 メーカーにとっての両者の差は、医療用医薬品が桁違いの売上をもたらす点だ。
一般薬は年間で10億円も売れればヒット商品と言われるが、
医療用医薬品には数百億円単位の商品がいくらでもある。
...
 
 現在最大の医薬は高脂血症治療薬リピトール(ファイザー)で、
そのピーク時売上は全世界で何と年間1兆6000億円にも達した。

2008年、日本で最も売れた車であるホンダフィットでも、
年間売上はせいぜい2000億円程度に過ぎないことを思えば、
これがいかに恐るべき数字であるかおわかりいただけるだろう。

人類史上最も巨大な付加価値を持つ商品は、このわずか原子76個から成る、
目に見えないほど小さな「物質」なのだ。

 これだけ書くと、なるほど「薬九層倍(くすりくそうばい)」と言われる通り、
医薬品メーカーは安い原価でしこたまポロ儲けをしている
おいしい商売なのだなと思われそうだが、実際はそう甘くはない。

ひとつの製品が、年間1兆円も売れるって、いったいどういう世界なンだ。
とはいえ、薬はとにかく創るのがむつかしいもののようだ。
世界規模で眺めてみても…

 

【創薬はむつかしい】

製薬会社は軒並み総売上の約20%という巨額を新薬開発に投じており、
世界最大手・ファイザーの研究開発費は年間9000億円近くにも上る。

他の多くの製造業の研究費が売上高のせいぜい2~6%前後でしかないことを思えば、
製薬業界の研究開発費がいかに突出して高いかおわかりいただけるだろう。
...
 
 ではこれだけの頭脳と資金を投入している製薬業界は、
どれくらいの新製品を世に送り出しているか-。

驚くなかれ、年間たったの15から20製品に過ぎない
(ここでの製品数とは、新規な構造を持った低分子医薬の点数を指す。
 既存の医薬の適応疾患拡大などは含めない)。
これは一社の製品数ではなく、全世界数百社の製品を合わせた数字だ。

世界中の巨大メーカーがよってたかって資本を投下し、
分子生物学・有機合成化学など各ジャンルの最先端の知識を結集して、
わずか15種類程度なのだ。

世界中の巨大メーカーがよってたかって資本を投下し、
分子生物学・有機合成化学など各ジャンルの最先端の知識を結集して、
年間でわずか15種類程度しか作れない。

製薬メーカーの研究者は、入社から数十年間毎日実験を繰り返し、
新薬をひとつも生み出すことなく研究の現場を去る者がほとんどなのだ。

日夜研究に励んでも、ひとつも新薬を作れないまま現場を去る、
それはそれで辛かろう。

この本からの薬の話、もう少し続けたい。

 

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コメント

私のつたないブログにコメントいただきましてありがとうございました。

早速、はまさんのブログを訪問させていただきました。
素晴らしいですね。感服致しました。
もちろんまだすべてを読んだわけではないですが、話題も豊富だし、しっかりとした勉強の下に書かれているのがよく分かります。
今後は、たびたび伺わせていただき、過去の記事なども読ませていただきます。
ありがとうございました。

Ossan-takaさん、

過分なるコメント、ほんとうにありがとうございます。
昨年のトルコ旅行を機にブログを始めた初心者です。

旅行記以降は、メモや付箋を整理する意味も合わせて、
自分自身が「おもしろい」と思ったことをぼちぼちと書き続けています。
そんな中、読んでいただいた方と、一部でも何かを共有できれば、
それ以上の喜びはありません。

今後ともどうぞよろしくお願いします。

Now this is exciting! It’s almost the end of the world and yet its centre!

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