ウソより思い込み
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ウソより思い込み
- バック・トゥ・ザ・フューチャー4? -
今年もいろいろなエイプリルフールネタが公開された。
* お湯をかけて3分でプリンが完成、日清食品の「カップヌードルプリン」
* 「開けたら即!焼きたてピザの味わい、ダイレクトに!」とドミノ・ピザの「ピザ缶」
* 月給120万円でふんどし絞め師後継者を募集した日本ふんどし協会
* 食べるだけで30言語がぺらぺらになるロゼッタストーンの「こんにゃく」
* 指一本で操作可能なカンタン日本語入力、Google日本語入力の「日本語入力パタパタバージョン」
などなど、苦心のあとは感じられるものの、洒落たウソはむつかしいものだ。
* 4月1日発売の美術誌『月刊ギャラリー』に「東京都現代美術館が閉館」の記事
が出て、問合せが相次いだ美術館側が
公式ホームページで「全くの事実無根」とコメントを発表して抗議、
これに対して著者が
「エープリルフールのジョークが分からない方々が美術館や文化行政や報道に携わっていたり」
の文言を含む謝罪コメントを載せたものだから、さらに拗れて...
ということもあったようだが、もちろんこれもニヤッとできるようなウソではない。
そんな中、
* インターネット動画投稿サイト「YouTube」が、動画の受付を終了、
2005年のサイト開設時からの動画を審査し、10年後に最優秀作を発表。
とした「YouTube's ready to select a winner」は
「YouTubeは全部、おもしろ動画を集めるコンテストだったのか」と
一種のブラックジョーク的要素もあってかなり気が利いている。
エイプリルフールネタと言えば、もう5年も前になるけれど
やっぱりBBCのこれ。
個人的にこれを超えるウソネタ作品にはなかなか出会えない。
そう言えば今年のネタの中に、
* ユニバーサル映画公式Facebook 「バック・トゥ・ザ・フューチャー4」の製作を発表
というのがあった。
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」、
特に「1」はエンターテイメント映画として傑作だと思うが、
この映画の題名を聞くと思い出す、忘れられないエピソードがある。
「1」の公開当時私は学生で、新宿の映画館に一人でこの映画を観に行った。
ひとつ席をあけて隣ふたりは、おしゃべりなおばさまふたり。
斜め前には、米国人と思われる若いお兄さんふたり。
米国人ふたりはポップコーンを食べつつ、
なにやら楽しそうに話をしながら、開演を待っていた。
早口の英語は何を言っているのか全くわからなかったが、
ときどきハデに笑うその陽気さは、開演前の静かな映画館では
ちょっと目立っていた。
横では、おばさまふたりのおしゃべりが小声で続いている。
ふと、マシンガンのような英語で会話している若者ふたりを前に、
おばさまのひとりが口にした言葉が耳に入ってきた。
日本語なら小声でもはっきり聞き取れる。
「前のふたり、字幕読めるのかしら」
なんというあたたかい思いやりだろう。
「無理やり作ったウソ」よりも「悪意のない思い込みの間違い」のほうがずっとおもしろい。
映画が始まり、日本人がだれも笑っていないところで笑っていた若者ふたりを見て、
おばさま、「思い込みの間違い」に気がついてくれただろうか。
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