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2013年1月27日 (日)

高崎・長野出張 ウラ報告 

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高崎・長野出張 ウラ報告

国内出張時の仕事以外のウラ報告。

一日目の夕刻に新前橋で仕事、
その夜は高崎に泊まって、二日目の午後は長野で仕事、
の出張だが、本報告ではもちろん仕事の話は一切なし。

新前橋到着から話は始まる。

2010年2月5日(金曜日):[古い話です]

新前橋に4時過ぎに到着。
仕事は5時半からで夜遅くなることがわかっていたので、
ちょっと腹ごしらえしようと思っていた。

ただ、事前にネットで少し調べたものの駅の近くには全くヒットなし。
「現地に行ってから回りを見て考えるか」と狙いは無しで駅に降り立った。
降りてみるとまさに期待通り(?) なにもない。

目的の会社まで「徒歩なら25分程度」と聞いていたので、
歩いているうちになにかあるだろう、と歩き出す。

地元の小さな中華料理店はまだ準備中だし、
「ビーフシチュー、コーヒー」と書かれた店は
メニューにラーメン、うどん、蕎麦もありそうな感じで、
まったく寄る気がしない。

こりゃだめか、と道幅の広い国道17号に出ると、
今度は「これでもか」と
よく見るハンバーガ、牛丼、ドーナツといったファストフード店と
大型電器店の派手な看板ばかり。

ようやく「トライしてみるか」のイタリアンのお店を探し出す。

 

「ボンジョルノ」

入ってお店の人にお薦めを聞くと迷わず
「豚カッチャジョーネはいかがでしょう」
「カッチャジョーネ?」
聞き覚えのない響き。
しかも、パスタと豚肉というのがどうも繋がらない。

「高崎はパスタの消費量全国一位なんですよ」
「えっ、そんな数字があるンですか?!」

どうやって調べたのか知らないが、これまた聞いたことのない順位だ。
ちょっと驚いている私の顔を見て

「いゃ、私もこれまで全く知らなかったンですけど」

と申し訳なさそうにつけたす。

「で、その高崎で去年、パスタ王を決めるイベントがあって、
 そこで優勝したパスタなんです」
「今なら、優勝記念で200円割引で提供させてもらっていますし」
「ハーブを餌に育てた地元群馬の豚を使っているンです」

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さていよいよご対面。

盛り付け時にはうまくパスタと混ざっているのでそんなに目立ってはいないが、
肉の一片を上に広げて写真を撮るとこんな感じ。想像以上の大きさ。

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しかもこの肉、肉だけ味わうと確かにうまい。
ただ、全体としてはトマトベースのソースの味が濃すぎて、
せっかくの肉の味が活きていない感じ。
残念。
いい素材があるンだからもう一押しというか
もう一引き(?)でかなりいいセンにいく気がする。
(200円引きで)税込み725円のパスタにいろいろ言うな、とも思うが

「1800人の投票で選ばれたンです」

と言われるとついつい期待しすぎてしまう。

支払い時、「カッチャジョーネってどういう意味ですか?」と聞くと

「イタリア語で猟師とか獲物とかっていう意味らしいです。
 私もそう教えてもらっただけなので詳しいことはよくわかりませんが」

私が寄ったのは新前橋店だが、高崎に3店舗あるとか。
地元の食材を使ってreasonableな価格帯でいろいろ挑戦してもらいたい、と思わせる
お店の方の雰囲気に満足な一軒目。

 

 

仕事終了後、高崎のビジネスホテルにチェックイン。
「近くにお薦めのお店は?」
とフロントの方に聞くと、すぐ近くの居酒屋とラーメン屋を教えてくれた。
夜も結構遅かったので、「近い」を最優先に薦めてくれたのはまさに親切心と思うが、
どちらの店もホテルへの道すがらちょうど目に入っており、イマイチの印象。
おいしくなさそう、ではなくいわゆるチェーン店系の平凡なにおい。

「多少歩いてもいいので、他には?」
と聞き返すと、なんだか別なことを聞きたがっていると思われた様子。

そんな顔をしていたのだろうか?

フロントの方の話し方が
「は・ん・か・が・い・はですねぇ」
と、より丁寧でちょっとスローな感じに。
「繁華街って言うンだ」と妙なところで感心してしまう。
知りたいのはそういう繁華街じゃぁなくて。

 

結局また、鼻をたよりに歩くことにした。
商店街は広く広がっているものの、飲み食いのエリアがよくわからない。
駅近辺で人の流れを読んで逆流しようとしてみたが、
流れというほどの人の動きがない。
チェーン店系の見覚えのある看板だけがあちこちにあり明るい。

 

 

結局、駅近くの居酒屋「莫莫」に。

聞くと、手羽先と氷見漁港から仕入れている魚がお薦めとか。

ピリ辛の手羽先は仕事のあとのビールによく合う。

そう言えば、米国でビールを飲もうとすると、どこのお店にでも
「バッファローウィング」と呼ばれる手羽先の料理があった。
油で揚げたあとにピリ辛のチリソースを絡めてあるもので、
食べると手がソースでベタベタになるもののビールにはぴったりでおいしかった。

なんでもすぐに世界中から持ってきてしまう日本で、
「バッファローウィング」は食べたことがないなぁ、と思いながら、
「秘伝のスパイス」がまぶしてある手羽先をいただく。

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氷見漁港の魚の説明は、若い兄ちゃん風のお店の方が要領よくしてくれた。
富山県氷見漁港は定置網発祥の地とか。

富山湾が漁場として豊かなのは、「ふけ」と呼ばれる
急斜面でいっきに水深1000m近くまで深くなる海に、
有機物を多く含む立山連峰からの川の水が流れ込み、
プランクトンが繁殖しやすくなっているためらしい。

クロソイとマトウダイをいただく。

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にぎやかで活気のある居酒屋だった。

 

一日目の締めは、「1/26にオープン」というから、
開店してからまだ10日ほどしか経っていないというカジュアルなバー「ESSENCE」

若いマスタ(Aさん)と女性(Bさん)の二人でテキパキと切り盛りしている。
Aさん、シャンパンをグラスで飲めるお店を作りたかったのだとか。
確かにシャンパンは気が抜けるので、
おいしい状態でグラスで提供するのはむつかしそう。

開けたシャンパンを気が抜けないように保持する機械があるらしく
「4万円もするンです」と言っていたが、
業務用なら「も」ってことはないンじゃない、
と何一つ業務用機器の値段を知らないのに思う。

   
「山芋のテリーヌ」という珍しいものがあるというのでオーダー。
うす甘い不思議な味だが、イヤな後味が一切ない。
つまみは近くのレストランのシェフが
いろいろな新しいことに挑戦しながら提供してくれているのだとか。

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「近くのレストランのシェフ」を紹介する口調が、
敬意と深い信頼感を感じさせていい。

 

 

カウンタの席ひとつあけて隣は、紺のスーツを着たやや太めの男性ひとり。
携帯を充電したい、ノートPCを使いたい、と
カウンタ越しに次々とケーブルをわたしている。

彼、Mちゃんというキャバ嬢にかなりの御執心で、
次々とプレゼント攻勢をかけている模様。
先日はカルティエのリングを一緒に買いに行って贈ったのだとか。

そんな自慢話を詳細にカウンタ内のBさんにしているが、
Bさん、明らかに業務的なカラ相槌。それでも彼は全く意に介せず。

「これまでにMちゃんにこれくらいは使っているかな」
と指をV字にしてさし出す。
「へぇ、20万円も」
とBさんがちょっとわざとらしい、驚いたような声を出すと、
「ゃだなぁ。20万で使ったって言える?」

「プレゼントを贈るのってうるさがられるかなぁ」
「でも、記念日とかには、何か贈りたいンだよね」
などと、ひとりでぶつぶつ言いながらパソコンの画面を眺めている。

「ほらほら、この娘(こ)」とお店のページに載っているMちゃんの写真を、
ノートPCの画面をひっくり返してBさんに見せる。
「かわいいでしょ」
と彼のほうから言うからBさん返す言葉もない。

しばらくすると、充電していた携帯が鳴った。
「あっ、Mちゃんだ」
はしゃいだ声の会話の後、
「12時過ぎにも指名が入っちゃってるンだって。
 やっぱり人気あるンだよね。だから今日は来られないみたい。残念」
誰も聞いていないのに、かなり詳しい説明。
ここで待ち合わせをしていたンかいな。
どうぞお幸せに。

 

ドンペリもボトルで3万円代のものから1990年の25万円のボトルまで揃えてあるが、
Aさんは、他のお酒の説明も丁寧なので、いろいろ相談しながら
まさにグラスでシャンパンやスパークリングワインを軽く楽しむにはいい店かも。

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んもBさんも、
「まだまだ勉強中ですが」
と言っていたが、開店まだ10日、
いい店にしていきたいという前向きな意気込みは
話していてもすがすがしく、どう変わっていくかをもう一度確認したくなる一店。

 

 

2010年2月6日(土曜日)

早起きして新幹線で長野に。

途中、雪のため長野から先の電車が運休しているアナウンスが何度も入る。
「なお、代替輸送はしておりません」
長野までは問題なく到着。オリンピックを開催したせいか、駅も広くてきれい。

 

それにしても、雪が激しく降っている。
長野とくれば善光寺。 雪の中、歩いていくことにした。

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歩道は点字ブロック回りに融雪装置が仕掛けてあるのか、そこだけ雪が溶けている。
仲見世のあたりは、各土産店総出で雪かき。

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雪国で育ったわけではないが、この雪かきという行為にはなぜか心惹かれる。
自分の店の前だけではなく、お互いちょっと相手の領域に踏み込んでやらないと
全体としてはきれいに掻けたことにならない、というのがポイントかも。
こういう重なりが、効率という名のもと、いろいろなところから消えていっている。

 

いくつかの門をくぐり、本堂に到着。雪の中の姿もまたいい。
蕎麦屋開店までにちょっと時間があったので、
お参りと内々陣の「お戒壇(かいだん)めぐり」に。

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「お戒壇めぐり」とは、まさになんの光もない真っ暗な回廊を、手探りだけで歩き、
中にある「極楽の錠前」に触れて秘仏のご本尊と結縁するという一種の道場とか。

朝、時間が早かったこともあり、
お戒壇めぐりのために暗い回廊に入っていったのは、まさに私一人。

善光寺ご本尊完全独り占め状態の贅沢。
全く光がないため腰のあたりに手を出して、とにかく右側の壁だけをたよりに歩く。
足元はすり足で探れるが、頭のあたりはなぜか天井が低くなってくるような気がして、
前に進むほど、どんどんかがむような歩き方になってしまう。

不安もあるが、真っ暗で静か、
目を閉じても開けてもなにも変化がない、というのは不思議な感じ。
思わず後ろを振り返るが人の気配はない。

 

途中「これか?!」の錠前、というか取手のような異質なものに触れる。
これで私も極楽浄土へ。

それまで「どこだ?どこだ?」と恐る恐る進んでいたのに、
目的が達せられるとなぜか気が抜けて、
帰りルートはずいぶん歩きやすくなった。

真っ暗だし、先が見えないことは変わらないのに、
ちょっとした気分の変化で行動はずいぶん変わるものだ。

 

ようやく出口の明かりが見えてきて無事終了。

 

 

出てきても、まだ内々陣に入る次の参拝者はなし。

寒そうにしている切符もぎのおばさんに話を聞く。
「多いときは二時間待ち、なんていう大行列のこともあるのに、
 今日は運がいいですね。独り占めできるなんて。

 若い方の中には、お化け屋敷にでも入るように
 キャァキャァ大騒ぎして入る方もいますよ。
 だめだ、と何度も言っているのに、
 携帯を懐中電灯代わりに使って中で照らしてしまったり」

「でも、一方で、出てきて、泣き出しちゃう人もいるンです。
 怖かったではなく、冷厳な空気に圧倒されて。 
 仏様の手が見えた、という人もいますし。

 いずれにせよ、この暗さは、死の疑似体験とか、
 お母さんのおなかに戻る擬似胎内体験とも通じていて、
 そこから出てくることは、まさに「生まれ変わって」に繋がるンです。

 ですから、
 その姿をすぐに確認するためにあそこに大きな鏡が用意してあるンです。
 どうぞ生まれ変わったご自分の姿をご覧下さい」

確かに出た正面に大きな鏡がある。 おそるおそる近づいて自らの姿を映す。
そこには、以前となにも変わっていない自分の姿が。 
良かったのだか、悪かったのだか。

 

 

蕎麦屋

長野で食べた蕎麦は次の三軒。

(a) 「小菅亭」

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一番蕎麦の味がよくわかる、もりを頼んだ。
ふぞろいな細めの麺。何もつけずに数本すすると、蕎麦のいい香り。

 

(b) 「大丸」

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もりを頼んだが、たっぷり海苔がかかってやってきた。
もちろん、蕎麦との組み合わせという点ではおいしいが、
改めて蕎麦の香りだけを楽しもうとすると、
海苔の香りが強くてちょっとじゃまになる。

 

(c) 「高山亭」

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体が冷えていたので「鳥つけ汁そば」を、熱いつゆで。

 

麺の好みで言うと (a) > (b) > (c)

今回、蕎麦そのもの以上に蕎麦湯の味が結構違うことを新発見。

蕎麦湯とつゆとの組合せでは (c) > (a) > (b)

 

蕎麦かうどんかで言うと、完全にうどん派の私であるが、10年ほど前、
「やっぱり男も30を過ぎたら蕎麦屋で呑まなくちゃ」
と、仲間と作家気取りで蕎麦屋で呑んでいたころがある。
杉浦日向子さんの本を参考に。

たしかに「そばがき」などは蕎麦屋ならではであるが、結局長くは続かなかった。

最大の理由は、うまい蕎麦屋は夜が早かったから。
逆に「夜遅くまで呑まないことが粋なんだ」
みたいなことは少なくとも当時は全く考えられなくて。

そう言えば、杉浦日向子さんは
「都市にとって自然とはなにか」(農山漁村文化協会)にこう残している。

「三百年の江戸の太平が
 都市部に暮らす長屋の住人にもたらした新しいライフスタイルは
 『三ない主義』といって、三つがない」 

モノをできるだけ持たない。出世しない。悩まない。 

「この三ないを私たちは全部持とうとしています。

 …いまの産業社会で、飽食の果てに来るものというのは疲弊した肉体と精神で、
 このままただ、なし崩し的に滅びていくよりは、
 新しい貧しさを選択した方が私はよいと考えています」

1998年に出版された本に「新しい貧しさ」の提言。2005年没。享年46。

考えてみると池田晶子さんも46で亡くなっている。 
二人には、まだまだいろいろ語ってほしかった。

 

閑話休題

「小菅亭」の女将さんが話をしてくれた。

「善光寺は、浄土宗と天台宗との関わりが深いけれど、
 そもそもは基本的に宗派を問わない誰でもOKの庶民のお寺なンです。

 だから、仁王門など門はあるけれど、塀はないでしょ。
 どこからでも入れるのが善光寺さんなンです。
 その、庶民の参拝者が安く食べられるように広まったのが蕎麦。
 近くの戸隠でいいそば粉もとれますしね」

以前行った、福井の永平寺の周りにも蕎麦屋が多いが、
あちらは厳しい修行僧のイメージが強い、
というかまさに修行中で、空気が硬い。
一方、善光寺周りは雪が降っていて寒いものの、空気はどこか柔らかい。

 

午後の仕事が終わって駅に向かうタクシーの中、運転手さんが、

「今日は、灯明まつりの初日なんですよ。ご存知ですか。
 一年に一度のこんなチャンスに、
 点灯カウントダウンを見ないなんてあまりにももったいない。

 帰りの電車まで時間があるようなら絶対に見たほうが良いですよ。
 駅から100円バスも出ていますし。

 今日はこんなに雪が降っているからますます幻想的ですよ」

と妙に強く薦める。

ライトアップにあまり興味はなかったので、
もう少し食べ歩くつもりだったのだが、
運転手の熱いおしゃべりに心動かされ、今度は100円バスを使って再度善光寺に。

バンクーバーオリンピックのキャラクタもやって来て一緒にカウントダウン。

「3・2・1・点灯です!」

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「おぉーぉ」集まった人数のわりには歓声が弱い。

 

うーん、食べに行きたいお店と引き換えに貴重な滞在時間を使い、
かつ、雪の中を凍えて待っていたわけだが、悪い予感は的中してしまった。

これってきれいか? これって幻想的か?

照明も、まして色なんてつけないほうが、
はるかにきれいで幻想的だと思うのは歳のせいだろうか?
まぁ、少なくとも私の趣味ではない。

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戻ってきて見た駅前広場の「灯り絵常夜灯」のほうが小さいけれどずっといい。

 

高崎、長野の駆け足出張。
そばの香りと
善光寺ご本尊完全独り占め状態での「お戒壇めぐり」体験を胸に、帰りの新幹線に。

 

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