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2013年1月14日 (月)

自律走行車 誰もが一度は夢に見るのに

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2013 CESの自律走行車のニュースを見て

トヨタやAudiは、
米ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「2013 CES」に
運転手がいなくても走る自律走行車を出展した。

トヨタは2008年に開発を始め、現在は米ミシガン州の公道で試験走行をしているという。
「安全運転技術の研究の一環」とコメントしており、
ダイレクトに実用化を想定しているわけではないようだが、
米グーグルなども自動運転の車を開発しているようなので、
この分野、大きな動きがあるかもしれない。

 

こちらはAudi。
映画やアニメで一度は見たことのある夢の技術が現実になりつつある。

このニュースを聞いて思い出す話がある。

 

米カーネギーメロン大学で「完全無人による自律走行車」の研究をしていた
金出武雄先生の講演。

今回のニュースによるとトヨタが自律走行車の開発を始めたのは今から5年前、
2008年らしいが、私がこの講演を聞いたのは27年も前の話だ。

 

当時、完全無人による自律走行車を研究しているグループは、
世界的に見ても驚くほど少なかった。
カメラとコンピュータを積んだ車が、走るべき道路と障害物を認識しながら、
(公園内だったかの)テストコースを、ようやくゆっくり一回りできるようになった、
というようなレベルだった。

ワゴン車を改造した車内は、写真で見ると
まさにコンピュータ満載という感じだったが、
その後のハードウェアの進歩を考えると
全体の処理能力としては今の個人向けPCにも遠く及ばないレベルだったはずだ。

カメラ画像のリアルタイム処理や
画像認識といった純粋な技術的問題以外にも、
大金を投じた研究車に事故時の保険をかけるためにどうしたか、とか、
時間帯によってできる街路樹のイヤな形の影とどう戦っているか、とか、
実験の苦労話を、笑いを交えながらわかりやすく話していた。

当時私は学生で、大学の研究室では画像認識に関する問題に取り組んでいたため、
特にそのあたりの話を聞きたくて出かけたのだが、
一番印象に残ったのは、そういった特定技術の話ではなく、
次のような言葉だった。

 

「運転手がいないのに、自動的に道路を走って目的地まで連れて行ってくれる車、
 「完全無人による自律走行車」、
 そういう車を、だれもが一度は夢に見たはずだ。
 できたらいい、できたらおもしろい、と。

 だれもが夢に見るのに、世界中でこの問題に取り組んでいる人はほんとに少ない。
 そんなクルマを作るくらいなら、運転手を雇ったほうが安全でしかも安い、と
 冷やかされたりもする。

 だれもが思うのに、どうして取り組む人がいないのか」

 

「それは、
 「何ができるようになれば無人で安全に車を走らせられるのか」が
 よくわからないからだ。

 でも「何ができるようになれば」の部分を考えることこそが
 実は最もむつかしくて、かつおもしろいのだ。

 問いが明確になれば、あとは解くだけなのだから。
 解に気を取られてはいけない。
 難しいのは解くことではなく、問いを立てるほうだ。

 どういう問いを立てたのか、
 どういう問いを解こうとしたのか、を見なければ」

 

一秒間に二億手の先読みをするというコンピュータによるチェスプログラム
「ディープ・ブルー」が1997年、チェスの世界チャンピオンに勝った。
その研究成果は、データ・マイニングや評価関数のロジック検討等に、
大きく貢献した。

しかし、チェスに勝ったからと言って、
世界チャンピオンが試合中、頭の中で何をどう考えているのか、が
なにかわかったわけではない。

 

「どういう問いを立てたのか、
 どういう問いを解こうとしたのか、を見なければ」

 

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